76 / 115
勇者との出会い
しおりを挟む
俺がイライアの過去の映像を見たのは9年前のことである。
魔王イライアはマジで強くて俺達パーティーは1度だけ負けている。
どうやって彼女を攻略したらいいのか? それを探るためにチェルシーが奪った彼女の記憶をパーティー全員で鑑賞したのだ。
イライアは小国のお姫様だった。
彼女の国は色んな種族が生活する国だった。ホモ・サピエンスもいればエルフもいるし獣人もいるしドワーフもいるしホビットもいる。ダークエルフが支配している国だった。
ダークエルフ達は差別を嫌った。人種によって目の色や肌の色や体格の違いは様々あるけど、それを差別するのではなく、多様性として捉《とら》えて国を発展させていたのだ。これは俺の思想にも似ている。人との違いは差別するものじゃなく多様性。色んな種族がいるから色んな発展が生まれる。もしかしたら、それはイライアの過去の記憶を見て根付いた思想なのかもしれない。
国民達は活気に溢れていた。様々な文化が混合して、新しい文化が生まれていた。
だけど滅んだ。
たった1人の魔王の手によって。
ある日、その国に禍々しいオーラーを放つ魔王がやって来て、大きな魔法を放った。
悲鳴と怒声。
ある者は、禍々しい魔王に立ち向かっていった。
ある者は、ただひたすら逃げた。
ある者は、諦めて殺された。
それは災害だった。
その当時のイライアは15歳にも満たない少女だった。
「こんな物のために国が滅ぶなんて」とイライアの父親が呟いた。
イライアの父親、つまり王様である。
彼が手に持っていたのは、何かの石だった。
イライアの記憶を見た当時は、それが何の石かはわからなかった。
だけど今ならイライアの父が手に持っている物が何なのかわかる。
彼が手に持っているのは星のカケラだった。
イライア自身も、父親が手に持っている物が何なのかはわかっていないみたいである。
ただ、父親が持っている物が不吉なナニカである、という認識はしていた。
「これを魔王に渡そうと思う」
と王様が言った。
「渡したらダメじゃ」と母親が言う。
イライアの喋り方は母親の口調そのままである。
「魔王を送り込んだ国が、どんな国かはわからぬ。わかることはそれを渡したら世界は良くない方向に向かうということじゃ。この国が滅んでも渡してはならぬ」
王妃の判断は、この国が滅んでも魔王に星のカケラを渡さないことだった。
「少しだけでも国民を助けることができるかもしれない」と王様は言った。
「同じじゃ。証拠を隠滅されるために、この国は滅ぼされるのじゃ」
「妾とそれを持って2人で隠れよう」
と王妃は言った。
「世界のために」
その2人の中に自分が入っていないことにイライアは気づいていた。
「イライア」と母親が言った。
「お主は逃げるのじゃ」
母親がイライアに賢者の石を手渡した。それはダークエルフが先祖代々、大切にしているモノだった。
「これを持って逃げるのじゃ」
「お母様は?」
一緒に逃げてくれないの? という続きの言葉を飲み込んだ。
お姫様としての教養が、彼女にわがままを言うことをやめさせた。
王妃は小さく首を横に降る。
もう2度と両親に会えないことをイライアは理解した。
「愛している。妾は世界で一番、イライアのことを愛している」
と母親は言った。
「イライア」と父親が言った。
「私の大切な宝物よ。私はイライアのことが世界で一番大切だ。どんなことがあっても生き延びてくれ」
そしてイライアは家臣に連れられて両親から離れた。
魔王の災害から逃げている最中に家臣も死に、彼女は1人になった。
それでも彼女は生きるために逃げた。
自分は両親の宝物である。それを彼女自身が自分の命を諦めるわけにはいかなった。
故郷が滅ぼされて、帰る場所を失って1人で歩く彼女は、出会った頃のミナミと同じだった。
そしてイライアは勇者と出会うのだ。
魔王イライアはマジで強くて俺達パーティーは1度だけ負けている。
どうやって彼女を攻略したらいいのか? それを探るためにチェルシーが奪った彼女の記憶をパーティー全員で鑑賞したのだ。
イライアは小国のお姫様だった。
彼女の国は色んな種族が生活する国だった。ホモ・サピエンスもいればエルフもいるし獣人もいるしドワーフもいるしホビットもいる。ダークエルフが支配している国だった。
ダークエルフ達は差別を嫌った。人種によって目の色や肌の色や体格の違いは様々あるけど、それを差別するのではなく、多様性として捉《とら》えて国を発展させていたのだ。これは俺の思想にも似ている。人との違いは差別するものじゃなく多様性。色んな種族がいるから色んな発展が生まれる。もしかしたら、それはイライアの過去の記憶を見て根付いた思想なのかもしれない。
国民達は活気に溢れていた。様々な文化が混合して、新しい文化が生まれていた。
だけど滅んだ。
たった1人の魔王の手によって。
ある日、その国に禍々しいオーラーを放つ魔王がやって来て、大きな魔法を放った。
悲鳴と怒声。
ある者は、禍々しい魔王に立ち向かっていった。
ある者は、ただひたすら逃げた。
ある者は、諦めて殺された。
それは災害だった。
その当時のイライアは15歳にも満たない少女だった。
「こんな物のために国が滅ぶなんて」とイライアの父親が呟いた。
イライアの父親、つまり王様である。
彼が手に持っていたのは、何かの石だった。
イライアの記憶を見た当時は、それが何の石かはわからなかった。
だけど今ならイライアの父が手に持っている物が何なのかわかる。
彼が手に持っているのは星のカケラだった。
イライア自身も、父親が手に持っている物が何なのかはわかっていないみたいである。
ただ、父親が持っている物が不吉なナニカである、という認識はしていた。
「これを魔王に渡そうと思う」
と王様が言った。
「渡したらダメじゃ」と母親が言う。
イライアの喋り方は母親の口調そのままである。
「魔王を送り込んだ国が、どんな国かはわからぬ。わかることはそれを渡したら世界は良くない方向に向かうということじゃ。この国が滅んでも渡してはならぬ」
王妃の判断は、この国が滅んでも魔王に星のカケラを渡さないことだった。
「少しだけでも国民を助けることができるかもしれない」と王様は言った。
「同じじゃ。証拠を隠滅されるために、この国は滅ぼされるのじゃ」
「妾とそれを持って2人で隠れよう」
と王妃は言った。
「世界のために」
その2人の中に自分が入っていないことにイライアは気づいていた。
「イライア」と母親が言った。
「お主は逃げるのじゃ」
母親がイライアに賢者の石を手渡した。それはダークエルフが先祖代々、大切にしているモノだった。
「これを持って逃げるのじゃ」
「お母様は?」
一緒に逃げてくれないの? という続きの言葉を飲み込んだ。
お姫様としての教養が、彼女にわがままを言うことをやめさせた。
王妃は小さく首を横に降る。
もう2度と両親に会えないことをイライアは理解した。
「愛している。妾は世界で一番、イライアのことを愛している」
と母親は言った。
「イライア」と父親が言った。
「私の大切な宝物よ。私はイライアのことが世界で一番大切だ。どんなことがあっても生き延びてくれ」
そしてイライアは家臣に連れられて両親から離れた。
魔王の災害から逃げている最中に家臣も死に、彼女は1人になった。
それでも彼女は生きるために逃げた。
自分は両親の宝物である。それを彼女自身が自分の命を諦めるわけにはいかなった。
故郷が滅ぼされて、帰る場所を失って1人で歩く彼女は、出会った頃のミナミと同じだった。
そしてイライアは勇者と出会うのだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,164
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる