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魔王とベロチュー
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バハムートは息を潜めていた。
前回、ココに来た時よりも俺は何十倍も強くなっている。知能が高い魔物は俺の気配を感じ取って逃げてしまう。
バハムートも俺と会いたくないのだろう。
「ココに座るのじゃ」
と魔王が言った。
ココ、と指定された場所は雑草が生えた地面の上だった。
俺は言われた通りに座った。
幼女姿のイライアが俺の真正面に立った。
「いいか? これからすることは、ただの魔力の供給じゃ」
「わかってる。早くしないと赤ちゃんの命が」
と俺が言った。
「わかっておるわ」
とイライアが言う。
魔王は俺の膝の上に座った。子どもを抱っこするような形である。すぐ近くにイライアの顔があった。
「別にお主のことが好きって訳じゃないからな」
と彼女が言った。
小さな手が俺の後頭部を掴んだ。
そして小さな唇が俺の唇に吸い付いて来た。
もしかしたら魔力供給は口でするんじゃないかな、とは思っていた。だけど幼児に対して俺は萌えない。
だけど唇と唇を重ねてすぐに、彼女の体が大きくなっていく。
やべぇー、もう成人女性に戻っている。
「もういいだろう?」
唇を離して俺が言った。
「まだじゃ。元の姿に戻っただけで、全然、魔力不足じゃ」
と魔王が言った。
成人の姿になった魔王。
抱っこする形で彼女が俺の膝の上に座っていた。逃げられないように俺を捕まえているみたいである。
「舌を出すのじゃ?」
「ちょっと待って。それは……エッチな気持ちになるから無理」
「今は壺から魔力を吸っているようなものじゃ。舌を出してくれたら壺にストローを刺したような状態になるのじゃ」
「でも……」
「子どもが死んでもいいのか?」
と魔王が脅してくる。
申し訳程度に俺は少しだけ舌をベロっと出した。
「もっと出すんじゃ」
とイライアが言った。
イライアが俺の舌を指で摘んだ。
そして引っ張る。
痛い。
「妾の言う通りにするのじゃ」
と魔王が言った。
最大出力まで舌を引っ張られた。
これは魔力供給です。俺がエロい気持ちになっても関係ありません。繰り返します。これは魔力供給です。決して浮気ではございません。これは魔力供給です。そして俺の舌はただのストローです。
彼女はパクッとストローをくわえた。
そして吸ったのだ。
魔力がゴクゴクゴクと吸われているのがわかった。
「プハッ」
とイライアが俺の舌から口を離した。
「美味しいのじゃ」
と彼女は言って、口を腕で拭いた。
魔力に美味しいも不味いもあるのかよ。
さすがにバカみたいに魔力を吸われて、ちょっと貧血だった。
彼女を抱っこしたまま後ろにゴロン、と俺は転がった。
「魔力を吸いすぎたか?」
と魔王が俺の耳元で尋ねた。
「大丈夫」と俺が言う。
「急に魔力が減ったから頭がクラっとしただけ」
「そうか」と魔王が言った。
「お主の魔力は底なしじゃな」
「聞いていいか?」と俺が言う。
「なんじゃ?」
「どうして勇者に襲われたんだ? イライアの結界は条件が揃わないと入れないんじゃないのか? 勇者に条件を揃えられたのか?」
「違うわい」
と魔王が俺のお腹の上で否定した。
「妾の魔力が弱っていたのじゃ」
「どうして?」
と俺は尋ねた。
「母体が死んでから赤子を引き取ったせいで赤子が弱っておるのじゃ。だから妾の魔力を赤子に使って生命を維持しておる。そのせいで結界が弱ってしまったのじゃ。そうじゃないと妾の結界を勇者達には破壊できん」
とイライアが言った。
結界は破壊されたのか。
それに勇者達、と彼女は言った。
パーティーを組んで複数人いたんだろう。
「勇者は女だったか?」
と俺は尋ねた。
「そうじゃ」とイライアは答えた。
勇者として召喚されたカヨの顔が浮かんだ。
「イライア」と俺は言う。
「なんじゃ?」
「生きていてくれて、ありがとう」
と俺は言った。
魔力が枯渇した状態で彼女は逃げ切ったのだ。
「別にお主に礼を言われることはしていない」
と彼女が言った。
そして魔王は俺の胸に顔を押し付けた。
「たまたま生きて逃げることができただけじゃ」
と彼女が言った。
「ワープホールで遠くまで逃げて、そこで妾の魔力が枯渇したから勇者達は追跡できなかったんじゃろう」
俺は彼女の頭を撫でた。
イライアの恐怖が伝わって来た。
お腹の中に子どもがいるのだ。必死になって逃げてくれたんだろう。
「赤ちゃんを守ってくれてありがとう」
と俺が言った。
「お主のためじゃない。赤子のためじゃ」
と魔王が言った。
「勇者に見つかるでな、もう妾は自分の魔力を封印する」
「そうしてくれると有難い」
「これからは魔力の供給を頼んだぞ」
とイライアが言った。
前回、ココに来た時よりも俺は何十倍も強くなっている。知能が高い魔物は俺の気配を感じ取って逃げてしまう。
バハムートも俺と会いたくないのだろう。
「ココに座るのじゃ」
と魔王が言った。
ココ、と指定された場所は雑草が生えた地面の上だった。
俺は言われた通りに座った。
幼女姿のイライアが俺の真正面に立った。
「いいか? これからすることは、ただの魔力の供給じゃ」
「わかってる。早くしないと赤ちゃんの命が」
と俺が言った。
「わかっておるわ」
とイライアが言う。
魔王は俺の膝の上に座った。子どもを抱っこするような形である。すぐ近くにイライアの顔があった。
「別にお主のことが好きって訳じゃないからな」
と彼女が言った。
小さな手が俺の後頭部を掴んだ。
そして小さな唇が俺の唇に吸い付いて来た。
もしかしたら魔力供給は口でするんじゃないかな、とは思っていた。だけど幼児に対して俺は萌えない。
だけど唇と唇を重ねてすぐに、彼女の体が大きくなっていく。
やべぇー、もう成人女性に戻っている。
「もういいだろう?」
唇を離して俺が言った。
「まだじゃ。元の姿に戻っただけで、全然、魔力不足じゃ」
と魔王が言った。
成人の姿になった魔王。
抱っこする形で彼女が俺の膝の上に座っていた。逃げられないように俺を捕まえているみたいである。
「舌を出すのじゃ?」
「ちょっと待って。それは……エッチな気持ちになるから無理」
「今は壺から魔力を吸っているようなものじゃ。舌を出してくれたら壺にストローを刺したような状態になるのじゃ」
「でも……」
「子どもが死んでもいいのか?」
と魔王が脅してくる。
申し訳程度に俺は少しだけ舌をベロっと出した。
「もっと出すんじゃ」
とイライアが言った。
イライアが俺の舌を指で摘んだ。
そして引っ張る。
痛い。
「妾の言う通りにするのじゃ」
と魔王が言った。
最大出力まで舌を引っ張られた。
これは魔力供給です。俺がエロい気持ちになっても関係ありません。繰り返します。これは魔力供給です。決して浮気ではございません。これは魔力供給です。そして俺の舌はただのストローです。
彼女はパクッとストローをくわえた。
そして吸ったのだ。
魔力がゴクゴクゴクと吸われているのがわかった。
「プハッ」
とイライアが俺の舌から口を離した。
「美味しいのじゃ」
と彼女は言って、口を腕で拭いた。
魔力に美味しいも不味いもあるのかよ。
さすがにバカみたいに魔力を吸われて、ちょっと貧血だった。
彼女を抱っこしたまま後ろにゴロン、と俺は転がった。
「魔力を吸いすぎたか?」
と魔王が俺の耳元で尋ねた。
「大丈夫」と俺が言う。
「急に魔力が減ったから頭がクラっとしただけ」
「そうか」と魔王が言った。
「お主の魔力は底なしじゃな」
「聞いていいか?」と俺が言う。
「なんじゃ?」
「どうして勇者に襲われたんだ? イライアの結界は条件が揃わないと入れないんじゃないのか? 勇者に条件を揃えられたのか?」
「違うわい」
と魔王が俺のお腹の上で否定した。
「妾の魔力が弱っていたのじゃ」
「どうして?」
と俺は尋ねた。
「母体が死んでから赤子を引き取ったせいで赤子が弱っておるのじゃ。だから妾の魔力を赤子に使って生命を維持しておる。そのせいで結界が弱ってしまったのじゃ。そうじゃないと妾の結界を勇者達には破壊できん」
とイライアが言った。
結界は破壊されたのか。
それに勇者達、と彼女は言った。
パーティーを組んで複数人いたんだろう。
「勇者は女だったか?」
と俺は尋ねた。
「そうじゃ」とイライアは答えた。
勇者として召喚されたカヨの顔が浮かんだ。
「イライア」と俺は言う。
「なんじゃ?」
「生きていてくれて、ありがとう」
と俺は言った。
魔力が枯渇した状態で彼女は逃げ切ったのだ。
「別にお主に礼を言われることはしていない」
と彼女が言った。
そして魔王は俺の胸に顔を押し付けた。
「たまたま生きて逃げることができただけじゃ」
と彼女が言った。
「ワープホールで遠くまで逃げて、そこで妾の魔力が枯渇したから勇者達は追跡できなかったんじゃろう」
俺は彼女の頭を撫でた。
イライアの恐怖が伝わって来た。
お腹の中に子どもがいるのだ。必死になって逃げてくれたんだろう。
「赤ちゃんを守ってくれてありがとう」
と俺が言った。
「お主のためじゃない。赤子のためじゃ」
と魔王が言った。
「勇者に見つかるでな、もう妾は自分の魔力を封印する」
「そうしてくれると有難い」
「これからは魔力の供給を頼んだぞ」
とイライアが言った。
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