異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万

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2章 赤ちゃんと孤児とオークキング

第33話 支配者

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 地響きが近づいて来ている。
 地面が揺れていた。
 オークが木々から飛び出して来た。
 マミがアイテムボックスから大剣を取り出す。
 そして大剣を振った。
 マミが振った剣はオークを真っ二つにした。
 マミは強い。
 だけど不安は拭えない。
 少し遠くで木々が倒されているような音が聞こえた。

「冒険者のみなさん」と俺は冒険者達に言う。
 意外と人見知りなので、あんまり声を張り上げる事はできなかったけど、近くにいた冒険者ギルドでよく会う顔の筋肉隆々の男がコチラを見た。
「私のスキルは能力を上昇させるスキルです。希望のある方がいましたら能力を上昇さしあげます」俺が言う。
 私と一人称で使うのは大人の使い分けである。

 名前は知らないが筋肉隆々の男がコチラに近づいて来た。
「あんな女の子が一撃でオークを倒したんだ。俺はやってもらう」と男が言う。
 俺は男のパサパサな頭を撫でた。金箔のような光が降り注ぐ。
「おぉ」と男が叫ぶ。
「急に体が軽くなりやがった」
 筋力が上昇したことで、装備品が軽く感じているのだろう。
 俺も、俺も、と冒険者達が集まって来る。
 俺は1人づつに『愛情』のスキルを使った。

 アイリやマミ、それに俺がステータスを上昇させた冒険者達が現れたオークを倒して行く。
 1匹目のオークが現れてから一瞬で人間とオークの大乱闘になってしまった。

 俺がステータスを上昇させた冒険者がオークを倒すたびに、オークから魂のような白い煙が出て、討伐した人間と俺の中に入った。
 白い煙は経験値である。
 スキルでステータスを向上させた事で、俺も共闘したと判定されているらしく、経験値が俺にも入った。
 
 頭の中にレベルが上がった事を告げる声が一瞬で2度も聞こえた。
 30人分の戦闘の経験値が俺にも入るのだ。
 一気にレベルが上がって当然だった。

 冒険者のステータスを全て上昇させて、俺は辺りを見渡す。
 クロスがいなかった。

「クロス」と俺は叫んだ。

「先生」とアイリの叫びが聞こえた。
 アイリの目の前にはオークを食う肉食の植物が召喚されていた。

『中本淳のレベルが上がりました』

「クロスが」とアイリが叫んだ。
「1人で騎士団を追って森の中に入って行った」
 
 体が急激に冷えた。
 クロスが死ぬのを想像した。
 あのバカ、と俺は舌打ちをした。

『中本淳のレベルが上がりました』

 門前はアイリとマミが1番の戦力になっている。彼女達を連れて行くと他の冒険者達だけでは門を守れないだろう。

『中本淳のレベルが上がりました』

「俺はクロスのところに行く。アイリとマミは、ココで冒険者達と戦ってくれ」
 と戦う弟子達に俺が言う。
 大乱闘中なので声は張り上げた。

「先生お願い。あのバカを助けて」とマミが大剣を振り上げながら言った。

『中本淳のレベルが上がりました。【支配者】のスキルが追加されました』

「行って来る」
 と2人の優秀な弟子達に言って、俺は走り始めた。

 走りながらステータス画面を開いた。
 俺のレベルが20になっている。
 そして支配者の詳細を見た。

 支配者……庇護下のスキルを使うことができる。

 サポートスキルではなく、自ら強くなるスキルだった。
 3人のスキルが頭に浮かんだ。

 オークの集団が俺を見つけて飛びかかってきた。

「隠蔽」と俺は言った。
 クロスのスキルを俺は使った。
 支配者で庇護下の持っているスキルを使えるようになったのだ。
 オーク達は俺が見えなくなったらしく、辺りを見渡している。
 俺はクロスを追いかけた。

 さすがにアイツも隠蔽を使っているはずだ。
 あのバカはどこに向かったんだろう?
 騎士団を追いかけて行った、とアイリは言っていた。
 バカクロスはオークキングのところに向かったのだろう。
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