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聖女専用店
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そのお店を見つけたのは偶然だった。
鬱陶しい仮面の男を撒いて街を歩いている最中だった。人通りが多いはずの道なのに、何故かそのお店だけ妙に寂れて見える。
普段なら、決して近づかないような佇まいだった。なのに、その日に限って強烈に、そのお店の中に入りたいという衝動に駆られる。
梨々香は古びた扉に手をかけて、衝動のまま中へと誘われる。
「やあ、待っていたよお嬢さん」
中にいた顔の見えない店主がそう言って、胡散臭げに手招きをしてみせた。
「ここは望む物が手に入る、聖女御用達の店だよ」
さあ、呪いたい相手はいるかな?
店主は梨々香に、そう告げた。
王宮内に魔物が出現したことを梨々香が聞いたのは、それから3日後のことだった。
「え?なんて?」
「ですから、特大のリッチが出たのです。他国からの攻撃かもしれません」
「だから当分の間外出は無しだ。リリカを危険な目にあわせるわけにいかないからな」
「………………」
ヴァリエールとジルベールにそう諭され、梨々香は押し黙る。よくわからないが、リッチというのは魔物の類いなのだろう。というか魔物ってなに?とも思う。
(この世界って、そういうのが存在するわけ?)
聞いてない、と梨々香は思う。というか、魔物が出たのなら退治すればよいだけなのでは?とも思う。
(そう言えば梨々香って、聖女なんだっけ)
だとしたら、梨々香が聖女の力で魔物を倒したりしなければならないのだろうか?
(だったら、ちょっとイヤだなぁ)
面倒臭い、と梨々香は思う。魔物なんてアニメの中でしか見たことがないし、それをどうにかしろと言われても困る。
怖いことも疲れることもしたくない。
それが、梨々香の正直な気持ちだった。
「リリカ!そんな不安そうな顔をしないでくれ!」
「は?」
「心配しなくともリリカの警護は万全だ!聖女を召喚したことはもう周辺国には知れ渡っているからな、大方他国からの嫌がらせだろう」
「嫌がらせ?」
「………聖女様は、特別な方ですから」
どの国も貴女という存在を無視出来ないのですよ、とヴァリエールが説明してくれる。特別、と言われるのは悪くないなと梨々香は思う。ジルベールの発言には幾つかひっかかるところがあるが、まあいいか、という気持ちになる。
(やれと言われたことは最低限やっているもの、それ以上のことを考える必要なんて、ないよね)
それにしても、と梨々香は思う。こんな王様や王子様が住むところにまで魔物が出現するなんて、少し不自然な感じがする。
(嫌がらせ…?そんな低レベルな話なのかな…)
そう言えば、と梨々香は思い出す。数日前に交わした、あの胡散臭い店主との会話を。
鬱陶しい仮面の男を撒いて街を歩いている最中だった。人通りが多いはずの道なのに、何故かそのお店だけ妙に寂れて見える。
普段なら、決して近づかないような佇まいだった。なのに、その日に限って強烈に、そのお店の中に入りたいという衝動に駆られる。
梨々香は古びた扉に手をかけて、衝動のまま中へと誘われる。
「やあ、待っていたよお嬢さん」
中にいた顔の見えない店主がそう言って、胡散臭げに手招きをしてみせた。
「ここは望む物が手に入る、聖女御用達の店だよ」
さあ、呪いたい相手はいるかな?
店主は梨々香に、そう告げた。
王宮内に魔物が出現したことを梨々香が聞いたのは、それから3日後のことだった。
「え?なんて?」
「ですから、特大のリッチが出たのです。他国からの攻撃かもしれません」
「だから当分の間外出は無しだ。リリカを危険な目にあわせるわけにいかないからな」
「………………」
ヴァリエールとジルベールにそう諭され、梨々香は押し黙る。よくわからないが、リッチというのは魔物の類いなのだろう。というか魔物ってなに?とも思う。
(この世界って、そういうのが存在するわけ?)
聞いてない、と梨々香は思う。というか、魔物が出たのなら退治すればよいだけなのでは?とも思う。
(そう言えば梨々香って、聖女なんだっけ)
だとしたら、梨々香が聖女の力で魔物を倒したりしなければならないのだろうか?
(だったら、ちょっとイヤだなぁ)
面倒臭い、と梨々香は思う。魔物なんてアニメの中でしか見たことがないし、それをどうにかしろと言われても困る。
怖いことも疲れることもしたくない。
それが、梨々香の正直な気持ちだった。
「リリカ!そんな不安そうな顔をしないでくれ!」
「は?」
「心配しなくともリリカの警護は万全だ!聖女を召喚したことはもう周辺国には知れ渡っているからな、大方他国からの嫌がらせだろう」
「嫌がらせ?」
「………聖女様は、特別な方ですから」
どの国も貴女という存在を無視出来ないのですよ、とヴァリエールが説明してくれる。特別、と言われるのは悪くないなと梨々香は思う。ジルベールの発言には幾つかひっかかるところがあるが、まあいいか、という気持ちになる。
(やれと言われたことは最低限やっているもの、それ以上のことを考える必要なんて、ないよね)
それにしても、と梨々香は思う。こんな王様や王子様が住むところにまで魔物が出現するなんて、少し不自然な感じがする。
(嫌がらせ…?そんな低レベルな話なのかな…)
そう言えば、と梨々香は思い出す。数日前に交わした、あの胡散臭い店主との会話を。
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