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1.子爵領編

2.前線の戦準備のススメ 後半

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 俺は、6年前に封印中の魔王に左目を喰われた。魔王を目にしたとき、とにかく恐ろしくて動けなかった。だが、我ながら、大バカだと思うが、封印され、魔素欠乏症で衰弱しているエクスの姿をみて、気の毒になってしまい、自分の左目を差し出した。その時、魔王に左目を喰われ、彼女の魔素は無事回復できたのだが、なぜかそのまま気に入られ居つかれた。
 
 一瞬だったし、右目しか見えてなく、なにより左目のあったあたりに意識がかすむほどの猛烈な痛みがあったので、今でも夢を見ていたのではないかと思ってしまう。

 エクスが俺の左目から魔素を取り出して喰った後、急にエクスの胸のあたりの一部が左目の残骸に向かって動き出し融合した。そして、新しい眼球が形作られ、宙に浮かんでいた。それが今のエクスの分体(目玉の魔王様)の誕生だった。
 
 左目(魔王の分体)が眼窩(俺の頭蓋骨の目のくぼみ)に収まるとき、物理的・魔法的につながり、同時に、エクスと俺の魂が強くつながった、、、、、、、らしい。

 封印中のエクス本体の魔素を維持するために、俺の魂とのリンクが非常に重要な役割を果たしているという説明をエクスから聞いた。魔素の供給源の意味で、エクスは以来、俺のことを「主殿」と呼んでくる。

 『この我がまさか人間から施しを受けるとは実に新鮮だった。これでも主殿に感謝しておるし、主殿とおれば、退屈することはあるまい。』

ということらしい。
 
 結局、膨大な魔素を持つ魔王がどうして、人間の、俺の魔素が必要なのか、封印とはなんなのか、よくわからなかったが、そこまで興味もないし、深く聞かなかった。いずれ詳しく聞くときもあるだろう。

 ちなみに、眼窩に収まった左目は、今も見えている、、、が、右目とまったく異なり、視るというより、色で「感じる」という視覚になった。まぁ、日常生活に不便はないし、相手の魔素、闘気だけでなく、自分に対する悪意を色で感じられるようになったので、むしろ便利になったのから、よしとしている。
 
 エクスとの魂のつながりにより、お互いの魔素が混ざりあい、その結果、魔王の力の一部を俺もつかえるようになった。ただ、あまりに巨大な力なので、周囲にバレると暗殺やら拉致監禁やらされそうなので、本当に信頼できる守役のシンバと育ての親でシンバの姉の乳母のエリカにしかエクスの事は言っていない。
 
 それと、俺の瞳の色は元々黒だったのが、左目だけは、エクスの魔素の影響か、金色に代わってしまった。左右の瞳の色が違うのは不自然極まりないため、家族や周囲に左目の秘密を悟られないように、以来、前髪で左目を隠している。

 


 頭の中で、エクスと今回の作戦を議論する。
 
 俺は子爵家の一員として、神輿に担がれただけで、実質はシンバが指揮官である体をとっている。作戦を実は俺一人で決めていると周りにバレないよう、シンバは人払いをし、俺とエクスの考えがまとまるのを黙って待っている。

 『それで、飛竜の弱点はあるのか? 高音域に対して退避行動をとるという本を読んだことがある気がするのだけど、それは本当なのか?』

 『ある意味真実と言える。飛竜は上位の竜族、特に高位の龍の出す高音域の警戒叫を極端に恐れるからのぅ。動きを鈍らせたり、止めたりすることができる』

 『エクス。警戒叫と似た音を合成する魔法開発を急ぎやってくれ。できれば人間には聞こえないとなおよいのだけど。飛竜騎士に対しては、警戒叫の音で、動きを鈍らせる。その後、周囲にわからないように矢を高速回転させ貫通能力増強させる付与魔法、矢が急所へ当たるよう進行方向を調整する付与魔法、それと、矢じりに影響がでないが、矢の先端に金属を溶かすほどの高温に加熱する付与魔法を弓隊が射った矢にかければなんとか飛竜騎士は対応できる。あ、そうだ。最後に、3つの付与魔法に、魔法を使用した痕跡を隠す、隠匿魔法を重ね掛けしないと。』

 『まったく、魔素の無駄遣いじゃ。なんとも回りくどいことじゃ。そんなやつら、魔素を沸騰させ、すべて蒸発させてしまえば、証拠は残らんぞ。塵一つ、な。』

『そんなに目立つことしたら、俺が魔法を使えるってばれちゃうじゃないか。俺が魔法をつかえることもお前のことも周囲に悟られずに、敵を追い返すことが重要なんだよ』

『人間社会は実に面倒なことじゃ。主殿よ。』

 6年前から、俺は、自分の力というか、エクスのことを徹底的に隠し続けている。独立して、ある程度の身の安全が確保できるまで、隠し続けるつもりでいる。

 そういった人間社会の難しさをエクスにも何度となく言い含めているのだが、この単細胞は、まったく理解していない。エクスの提案に文句をいいつつも、飛竜騎士団、オークを使役した魔法師団対策を、エクスと一緒になんとか作戦を作り上げた。

『単細胞というたの、聞こえておるぞ。主殿よ。我の傷付いた心の謝罪として甘味を2つ要求するぞ。』というエクスの苦情は聞き流した。
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