18 / 99
2.王都書生編
8.失禁しようが恰好さえつければ、それなりに見えるということのススメ
しおりを挟む
エクスが魔女っ娘の思考を読み取った内容から推測するに、王都の近郊にあるエクリン家が差配する町パルスキーの治安の悪さと代官の不正を耳にした、第三王女がパルスキーの調査をしていたということだ。
第三王女は、財務閥が担ぐ第一王子の政敵である第二王女の同腹の妹だ。つまり、次期国王争いのライバルである第一王子を支持する財務閥の弱みを握るため、第二王女が第三王女をつかってパルスキーの内偵を命じた。魔女っ娘は、第三王女の指示を受け、悪の権化である御用商人の内偵中に運悪く敵に見つかり、襲われ、傷を負いながらも逃走中だった訳だ。
詰んだなー。ジャームスさん。政争に種にされるなんて運がない。俺は、これ以上は余計な首を突っ込まない方がよいかな。エクリン家がお取りつぶしになったら、ジャームスさんは管理不行き届きで逮捕、下手しなくとも死刑だな。
息子のチャールズさんも連座で死刑か、よくて流刑だ。息子の嫁のエスタさんは離縁の上、実家に戻され、罪人の元妻として肩身に狭い思いをして、そのうち、上級貴族の脂ぎったおっちゃんへ妾に出されて、毎日慰み者にされる。
エクリン家には、3か月の恩があるから、ジュリちゃんだけは、俺が妾に引き取ることにするよ。毎晩かわいがってやるから立派に成長してくれよ、と、ゲスい妄想をしながら、現実逃避を試みる。
『主殿よ。アホなことを考えていないで、この魔女っ娘をどうするか決めるがよい』
王家の後継者争いに巻き込まれてしまい、事の大きさに、改めて心の中でため息をつく。
この魔女っ娘を、おそらく持っているであろう、パルスキーの不正・腐敗の証拠とセットで、今ここで始末してしまえば、すべて闇の中だ。それとも、魔女っ娘と交渉して口止めできるか。
まずは交渉を試して、万が一、失敗したら、その時考えよう。最悪、エクリン家が処断されるもやむを得ない。管理不行き届きは間違いないことだし。また、魔女っ娘も俺が助けなければ、追手に切られていただろうから、仮にここで俺に殺されても致し方ないと思ってくれるだろう。
考えがまとまり、すっきりした気分で、まずは魔女っ娘と交渉を試みることにした。
「私は、パルスキーを差配しているエクリン家の書生をしている者です。師匠のジェームス卿の指示を受けて、あの町の代官、御用商人それと獅子の牙の不正と癒着を調査していました。あなたが襲われているのをみて、とっさに助けに入りました。他意はないです」
口調を丁寧にして、書生らしく話す。
「エクリン家の書生だと?」
「はい。行政大学校の入学試験のため、エクリン家で書生をやっています。荒事も多少の心得もあります。それで、取引しませんか?エクリン家は自分の町の不正と犯罪を一掃しようとしています。第三王女殿下の御威光をお借りしなくとも、自助努力で問題なく解決できます。どうか、今は見逃してもらえないでしょうか。あと1年で町を再建する計画です。代わりに、あなたの傷を治して、無事王都まで送り届けるというのはどうでしょう」
「なぜ私が第三王女殿下とつながりがある者ということになっている?」
「この時期に、財務閥のエクリン家差配の町へ内偵を派遣する人物は限られます。どちらの殿下なのかは迷いましたが、より動きやすい第三王女殿下の名でカマをかけました。名を出したときに、あなたの瞳孔が開きましたので、事実と確信しました。」
「くっ。だが、取引は断る。私に主人の虚偽の報告などするつもりはない。だいたい、エクリン家は内官で、町のごろつきを一掃するのに、王都騎士団の力を借りる以外方法はない。代官所の兵士のみで事を起こせば、仮に兵力で獅子の牙に勝っていても内乱認定される。自力で代官や商人の不正の証拠をつかんだとしても、結局は王都の知るところとなる」
「では、私が不正と犯罪を町から一掃できれば、交渉成立ということでよいですね。私一人で解決させますので、代官所の兵士の力も借りる必要もなければ、王都騎士団の力もお借りしません。ですので、王都が知る術もありません。それにそんなボロボロな状況でどうやってここから逃げるつもりですか」
自信たっぷりに魔女っ娘に言い放す。
「くっ。お前一人でできるはずがない。しかもお前は、まだ子供だろう。」
「あなたは、その子供に命を助けられたのではありませんか。いいでしょう。見せてあげますよ。子供が何をできるのかを。人を殺すのに、刃物はそれほど要りません。必要なのは、策と覚悟です」
人生の師「小役人のススメ」の一説をパクッて、恰好つける。
「そこまで言うのならば、見せてもらおうか。子供の妄想でないといいが、な」
とローブの股間あたりが、失禁して濡れているくせに、魔女っ娘も上半身だけを起こして、恰好つけ返してきた。
「では、契約成立ということでよいですね。私が不正と犯罪を町から一掃できるまでは、私と一緒に行動し、王都にはパルスキーの事は伏せておく。一掃できた際には、不正や癒着の証拠を私に引き渡し、パルスキーの事は口をしない。いいですね。その見返りとして今マジックポーションを進呈します。」
「わ、わかった」
と魔女っ娘が了解の返事をする。
意外に魔女っ娘は素直な性格なようだ。エクリン家の書生とバラしてしまったので、魔法を使えることを悟られる訳にはいかない。エスクの亜空間から取り出してもらったマジックポーションを荷物から取り出すふりをして、魔女っ娘に渡す。
魔女っ娘は、受け取ったマジックポーションの匂いを嗅ぎ、ポーションであることを確かめてから飲み込んだ。傷はふさがったようだったが、体力と魔素が消耗しているようだ。フラフラしながらなんとか立ち上がったが、よろけてしまい、とっさに、倒れないように俺が魔女っ娘の腰に手を回して支えた。と思ったら、俺と魔女っ娘の身長差があるため、支えたのは腰ではなく、太ももの付け根あたりだった。
俺の腕が太ももの付け根にあたり、その時初めて下半身が濡れていることに気が付いたのか、魔女っ娘はビクッとし、その後、真っ赤な顔をして、ふらつきながら俺と距離をとる。そして、急いで、切られてボロボロになっているローブを脱いだ。
ローブを脱いでもその下のズボン、パンツも濡れているだろうに、と思いつつ魔女っ娘の素顔をみると、10代後半か20歳くらいの可愛い系美女だった。年上だから、魔女っ娘改め、魔女姉さんだな。
「わ、わ、わ、私にも立場というものがある。お、女の身で、王女殿下専属の魔法師をやるのには、、、、」
と真っ赤な顔をした涙目の魔女姉さんが、何か言いかけるのを遮り、みなまで言うなとアピールする。
「わかっています。契約は先ほど成立しました。パルスキーの件が解決し、不正や癒着の証拠を私に引き渡してくださった後、パルスキーの事は口をつぐんでくださるのならば、私も今日の事は口をつぐみます」
魔女姉さんは、俺の勝利宣言を聞き、受け入れる以外道はないと思ったのか、ガックリ膝をついて、うな垂れてしまった。
魔女姉さんは第三王女「専属」の魔法師だったんだね。意外に偉い人なのかもしれない。
しばらくして、少し気分が回復したのか、魔女姉さんがうな垂れながら、ぼそっ自己紹介をしてきた。
「シルフェ・アンダーソン」
こちらも名乗った。
「アルフレッド・プライセンです」
証拠として追手に見つからないように、という無理やりの理由をつけて、濡れたローブを魔女姉さんから回収し、エクスの亞空間にしまい込み、後日、またに取り出して魔女姉さんのアンモニアの臭いをクンクンと楽しもうなどと考えていたら、エクスからの無通告電撃魔法攻撃を受けダメージを受けた。エクスが本気でドン引きしていることと、なぜか怒っていることを感じ、魔女姉さんの臭い特典付きローブの回収は、断念せざるを得なかった。
第三王女は、財務閥が担ぐ第一王子の政敵である第二王女の同腹の妹だ。つまり、次期国王争いのライバルである第一王子を支持する財務閥の弱みを握るため、第二王女が第三王女をつかってパルスキーの内偵を命じた。魔女っ娘は、第三王女の指示を受け、悪の権化である御用商人の内偵中に運悪く敵に見つかり、襲われ、傷を負いながらも逃走中だった訳だ。
詰んだなー。ジャームスさん。政争に種にされるなんて運がない。俺は、これ以上は余計な首を突っ込まない方がよいかな。エクリン家がお取りつぶしになったら、ジャームスさんは管理不行き届きで逮捕、下手しなくとも死刑だな。
息子のチャールズさんも連座で死刑か、よくて流刑だ。息子の嫁のエスタさんは離縁の上、実家に戻され、罪人の元妻として肩身に狭い思いをして、そのうち、上級貴族の脂ぎったおっちゃんへ妾に出されて、毎日慰み者にされる。
エクリン家には、3か月の恩があるから、ジュリちゃんだけは、俺が妾に引き取ることにするよ。毎晩かわいがってやるから立派に成長してくれよ、と、ゲスい妄想をしながら、現実逃避を試みる。
『主殿よ。アホなことを考えていないで、この魔女っ娘をどうするか決めるがよい』
王家の後継者争いに巻き込まれてしまい、事の大きさに、改めて心の中でため息をつく。
この魔女っ娘を、おそらく持っているであろう、パルスキーの不正・腐敗の証拠とセットで、今ここで始末してしまえば、すべて闇の中だ。それとも、魔女っ娘と交渉して口止めできるか。
まずは交渉を試して、万が一、失敗したら、その時考えよう。最悪、エクリン家が処断されるもやむを得ない。管理不行き届きは間違いないことだし。また、魔女っ娘も俺が助けなければ、追手に切られていただろうから、仮にここで俺に殺されても致し方ないと思ってくれるだろう。
考えがまとまり、すっきりした気分で、まずは魔女っ娘と交渉を試みることにした。
「私は、パルスキーを差配しているエクリン家の書生をしている者です。師匠のジェームス卿の指示を受けて、あの町の代官、御用商人それと獅子の牙の不正と癒着を調査していました。あなたが襲われているのをみて、とっさに助けに入りました。他意はないです」
口調を丁寧にして、書生らしく話す。
「エクリン家の書生だと?」
「はい。行政大学校の入学試験のため、エクリン家で書生をやっています。荒事も多少の心得もあります。それで、取引しませんか?エクリン家は自分の町の不正と犯罪を一掃しようとしています。第三王女殿下の御威光をお借りしなくとも、自助努力で問題なく解決できます。どうか、今は見逃してもらえないでしょうか。あと1年で町を再建する計画です。代わりに、あなたの傷を治して、無事王都まで送り届けるというのはどうでしょう」
「なぜ私が第三王女殿下とつながりがある者ということになっている?」
「この時期に、財務閥のエクリン家差配の町へ内偵を派遣する人物は限られます。どちらの殿下なのかは迷いましたが、より動きやすい第三王女殿下の名でカマをかけました。名を出したときに、あなたの瞳孔が開きましたので、事実と確信しました。」
「くっ。だが、取引は断る。私に主人の虚偽の報告などするつもりはない。だいたい、エクリン家は内官で、町のごろつきを一掃するのに、王都騎士団の力を借りる以外方法はない。代官所の兵士のみで事を起こせば、仮に兵力で獅子の牙に勝っていても内乱認定される。自力で代官や商人の不正の証拠をつかんだとしても、結局は王都の知るところとなる」
「では、私が不正と犯罪を町から一掃できれば、交渉成立ということでよいですね。私一人で解決させますので、代官所の兵士の力も借りる必要もなければ、王都騎士団の力もお借りしません。ですので、王都が知る術もありません。それにそんなボロボロな状況でどうやってここから逃げるつもりですか」
自信たっぷりに魔女っ娘に言い放す。
「くっ。お前一人でできるはずがない。しかもお前は、まだ子供だろう。」
「あなたは、その子供に命を助けられたのではありませんか。いいでしょう。見せてあげますよ。子供が何をできるのかを。人を殺すのに、刃物はそれほど要りません。必要なのは、策と覚悟です」
人生の師「小役人のススメ」の一説をパクッて、恰好つける。
「そこまで言うのならば、見せてもらおうか。子供の妄想でないといいが、な」
とローブの股間あたりが、失禁して濡れているくせに、魔女っ娘も上半身だけを起こして、恰好つけ返してきた。
「では、契約成立ということでよいですね。私が不正と犯罪を町から一掃できるまでは、私と一緒に行動し、王都にはパルスキーの事は伏せておく。一掃できた際には、不正や癒着の証拠を私に引き渡し、パルスキーの事は口をしない。いいですね。その見返りとして今マジックポーションを進呈します。」
「わ、わかった」
と魔女っ娘が了解の返事をする。
意外に魔女っ娘は素直な性格なようだ。エクリン家の書生とバラしてしまったので、魔法を使えることを悟られる訳にはいかない。エスクの亜空間から取り出してもらったマジックポーションを荷物から取り出すふりをして、魔女っ娘に渡す。
魔女っ娘は、受け取ったマジックポーションの匂いを嗅ぎ、ポーションであることを確かめてから飲み込んだ。傷はふさがったようだったが、体力と魔素が消耗しているようだ。フラフラしながらなんとか立ち上がったが、よろけてしまい、とっさに、倒れないように俺が魔女っ娘の腰に手を回して支えた。と思ったら、俺と魔女っ娘の身長差があるため、支えたのは腰ではなく、太ももの付け根あたりだった。
俺の腕が太ももの付け根にあたり、その時初めて下半身が濡れていることに気が付いたのか、魔女っ娘はビクッとし、その後、真っ赤な顔をして、ふらつきながら俺と距離をとる。そして、急いで、切られてボロボロになっているローブを脱いだ。
ローブを脱いでもその下のズボン、パンツも濡れているだろうに、と思いつつ魔女っ娘の素顔をみると、10代後半か20歳くらいの可愛い系美女だった。年上だから、魔女っ娘改め、魔女姉さんだな。
「わ、わ、わ、私にも立場というものがある。お、女の身で、王女殿下専属の魔法師をやるのには、、、、」
と真っ赤な顔をした涙目の魔女姉さんが、何か言いかけるのを遮り、みなまで言うなとアピールする。
「わかっています。契約は先ほど成立しました。パルスキーの件が解決し、不正や癒着の証拠を私に引き渡してくださった後、パルスキーの事は口をつぐんでくださるのならば、私も今日の事は口をつぐみます」
魔女姉さんは、俺の勝利宣言を聞き、受け入れる以外道はないと思ったのか、ガックリ膝をついて、うな垂れてしまった。
魔女姉さんは第三王女「専属」の魔法師だったんだね。意外に偉い人なのかもしれない。
しばらくして、少し気分が回復したのか、魔女姉さんがうな垂れながら、ぼそっ自己紹介をしてきた。
「シルフェ・アンダーソン」
こちらも名乗った。
「アルフレッド・プライセンです」
証拠として追手に見つからないように、という無理やりの理由をつけて、濡れたローブを魔女姉さんから回収し、エクスの亞空間にしまい込み、後日、またに取り出して魔女姉さんのアンモニアの臭いをクンクンと楽しもうなどと考えていたら、エクスからの無通告電撃魔法攻撃を受けダメージを受けた。エクスが本気でドン引きしていることと、なぜか怒っていることを感じ、魔女姉さんの臭い特典付きローブの回収は、断念せざるを得なかった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
29
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる