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巧幡くんの気持ち

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    あれから私は許婚様に相談をし、お願いしました。
「お願いします、私に協力してくださいませ!」
「き、協力って言ってもだな……」
「駄目、なのですか……?」
「駄目、では……ないが」
「では……!」
「だが……この俺にも話してくれなかったら、どうするんだ?」
「その場合は、私が聞きますわ!」
「何!?」
「私が、グイグイ聞きにいきますわ!」
「はぁ……」
「どうされたのですか?」
「いや……お節介が過ぎるなと思って……」
「あっ、申し訳ございません……」
「いや、怒っているわけではない」
「そう、なのですか?」
「あぁ、決して怒ってなどいない。ただ、すごいなぁと感心しているだけだ」
「そうなのですか?なら良かったですわ!」
一か八か分からないけれど、やれるだけのことはやってみようと思いますの。
少しでも麗華さんの為に、何か分かればと……



 ************



「そういえば、怜は綺羅ちゃんとは相変わらずなの?」
「何だ、急に」
「怜の口から聞きたくてさ。ほら、怜って恋バナも惚気ノロケもしないから、本当に綺羅ちゃんのこと好きなのかな?って、気になって」
「ハッ!もしや、お前……桜のこと……!」
「まさか。お前という許婚が居るのに、そんなことしないよ。後、好きじゃないから安心して」
「何だ、全く!心臓に悪いじゃないかッ!」
「あははは、ごめんごめん!」
そっか~、そんなに怜は綺羅ちゃんのことが好きなんだね~と何でもないように言っていたが、俺は何だか変な感じがした。
普段からそういう恋愛話など、巧幡から聞くことがなかったからだ。
だから俺は、とても驚いていた。
自分から恋愛に関する会話をすることもなかったし、クラスメイトにその類いを聞かれても、当たり障りのない回答をするだけだったから。
「何か……あったのか?」
「うーん……何ってないんだけど、さ……」
「何もないなら、そんなこと言わないだろう?」
「その、さ……好きな人と付き合った時の気持ちって……どんな?」
「どんなって言われてもだな……」
「嬉しい?ドキドキしたり、ワクワクしたり……」
「それは勿論、嬉しいぞ。ドキドキもするが、こう……何というか……心が温かくなるというか……」
「心が、温かく……?」
「あぁ。じんわり、というか……ほわん、というか……そんな感じだ」
「へぇ……そうなんだ」
「どうした、巧幡」
「えっ」
「お前から、そんな話をするなど初めてだからな」
「あぁ……そう、だね」
「何かあったのか?お前はモテるからな」
「いや、そんな……モテないよ?」
「そうか、自覚がなかったのか……それは、すまないな」
「えっ?いや、そんなことはどうでもいいんだよ!」
「そうか。で、一体どうしたんだ」
「その……ずっと誰にも言わずに、自分で抱えてたんだけど。とうとう、抱えきれなくなっちゃってさ……」
「何があったんだ、巧幡」
「うん……俺ね、好きな人が居るんだ」
「えっ……!?」
まさか、自分からそんなことを話してくれるだなんて……桜!俺、やったぞ!!
「驚くよね。俺なんて、恋愛に興味なさそうに見えるし、そう思われてるし……」
「まぁ……正直言うと、俺もそう思っていた」
「だよね」
「しかし、好きな人が居るって……いつからだ?」
「うーん、はっきりとは覚えてないんだけど……多分、中学上がったぐらい、かな……」
「中学か」
「うん。中学ん時は、ずっとバスケやってたんだけどね」
「あぁ、そうだな」
「本当はね、怜に話そうかなって思ってたんだよ。ずっと」
「そう、なのか……!?」
「うん。言いふらしたり、冷やかしたりしないから」
「まぁ、そうだな。そんなくだらんことは、しない主義だからな!」
「でもさ、携帯持ってなかったじゃん?だから、コソコソ相談も出来ないなーって思ったから、やめた」
「それについては、謝罪しよう。本当に申し訳ない」
「あっ、いや。謝って欲しいんじゃなくて……今、ようやくスマホ持ってるからLINEで話しても良かったんだけど、さ」
「?」
「口で喋った方が早いかなーと思って……」
「で、その好きな人っていうのは俺でも知っているヤツなのか?」
「そうだね、すごく知ってる」
「そうなのか……誰だろうな」
「麗華だよ」
「えぇっ!?」
「意外だった?そんな驚かなくても」
巧幡は笑っているが、こちらは笑えない。
何故なら、その片想いしている藤山 麗華も、お前のことか好きだからだ。
ということは……両想いではないか!!!
俺は、内心で開いた口が塞がらなかった。そんな奇跡的なことが起ころうなど……
「まぁ、意外と言えば……意外だな。もっとこう、ほわんとした子がタイプなのかと思っていたからな」
「あぁ……そういう子も可愛いなとは思うよ。でも、麗華は違う。可愛いけどちゃんと自分を持っていて、好き嫌いもはっきりしていて……媚びたりしない。そういう強い子に、気付いたら好きになってた」
「そうか」
「それに、あのツンデレ具合が堪らないんだよ!」
「ツン、デレ……?」
「そうそう!特に、綺羅ちゃんと一緒に居る麗華は、最っ高に可愛いと思う!!」
「そうなのか……?」
俺には分からん。ツンツンしているだけなのではないのか?ツンデレ……ツンツン……ツン、デレ……?
「うん、俺にとってはすごく可愛いんだ」
「ほう……そんなに藤山にゾッコンなのか」
「そうだね」
即答!?それほど藤山のことが好きなんだな。
俺はそれから、巧幡の恋愛相談にのり(全く上手く答えられなかったが)情報収集したので、ホクホクだった。
そして、帰宅してから桜にLINEで報告した。




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