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7 事務所で
しおりを挟む「本当に申し訳ございません……」
俺は今、事務所でマネージャーと話し合っている。
ここ最近の俺についていつもと違うと察知したマネージャーから、あの配信の後「どうしたんだ?とりあえず事務所に来て話し合おう」と連絡が来たけど、一度は断ってしまった。
体調不良ってことにしたけど、マネージャーに「配信聴いてたけど途中からおかしくなってただろ?」と言われて、誤魔化しきれないと思った俺は渋々、行くことにした。
マネージャーが家まで迎えに来てくれて、事務所に向かっている途中でマネージャーが「本当に体調不良なら一度、病院に行って診てもらった方がいい」と言ったが、本当の体調不良ではないから病院に行ったところで「特に異常もなく、元気ですね」で返されるぞ……
「自分でも(恋というものが)何なのか分からなくて……はは」というと、マネージャーが「働き過ぎたのか!?休みの日は何している!?」とガチで心配された。
************
「改めて、ここ数日どうしたんだ?」
「そ、れは……」
事務所内の防音設備が整っている配信部屋でマネージャーと向かい合って座っているが、どう言えば良いのか分からず俯きながら沈黙を貫いている俺。
まさか、マネージャーに呼び出されるなんて思ってなかった(というよりも【ゆいはな】さんのことで、頭が回らなかった)し、素直に言ってしまえばいいんだろうけど自分が決めたことを翻すわけにはいかない。
それに【ゆいはな】さんへの気持ちは封印するって決めたし、自分の精神が未熟だったってことだから……もっと上手く隠さなければ。
「困ったなぁ。訳を話してくれないと分からないんだけど?」
「……」
また、しばらくの沈黙の後にマネージャーが俺に声を掛けようとした、その時―――
「ヤッホー☆ここに義峰 美人が居るって聞いて来ちゃったわ~!って、お取込み中かしら?」
ティアモルドさんが、ノックして入って来た。
「菜盛、お取込み中だ。悪いけど出てくれるかな」
俺のマネージャーにそう言われても、ティアモルドさんは「お取込み中のところ申し訳ないですけど、もう2時間以上も義峰、沈黙貫いているみたいだし……マネージャーよりもライバー同士の方が、話せることもあると思うんでアタシ、コイツと飯食いに行って来まーーす♪」
さっ、行くわよ。と、俺の腕を掴んでティアモルドさんは事務所から俺を連れ出してくれた。
―――ここは完全個室の居酒屋。
「アンタねぇ~、あの配信はダメよ!バレバレ」
「バレバレって……ティアモルドさん、俺の配信観てたんですか!?」
「当たり前じゃない!あれから、どうなったのかな?と思ってアンタの配信観てたけど……」
【ゆいはな】さん、来てたんでしょ?だってアンタの様子、明らかおかしかったもん」
「配信者としてあるまじき行動をしてしまって……本当に」
「ねぇ、アンタやっぱり【ゆいはな】さんのこと、好きなんじゃないの~?」
「……!」
そんなことないですよって、言わないと。俺は恋愛しないって決めて活動しているのに。
自分で決めたことだから、貫かないと。リスナーやファンを裏切りたくない。
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