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フィアナ、不敵な笑みを浮かべる
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「それでは、演習スタート!」
マティさんがそう宣言。
保存食と地図を受け取り、私たちは拠点を旅立つのでした。
数時間後。
私とエリンちゃんは、森の中を歩いていました。
受け取った地図には、大雑把な地形しか書き込まれていません。
細かい部分の測量も、今回の演習に含まれているようです。
「どこに向かってるの?」
「えっと、今回は第8チェックポイントから逆順にチェックポイントを回ろうと考えてます」
地図を見ながら、私はエリンちゃんにそう答えました。
第8チェックポイント──それは地図の西側に描かれており、湖の傍にあるやつです。
「チェックポイントって何なんでしょうね?」
「さあ……、マティ先生は見ればわかると言ってましたが──」
チェックポイントが分かるかどうかは、今回の演習の不安要素でした。
私は、改めて渡された地図を注意深く眺めます。
地図は9つのブロックに分けられており、中央を除くすべてのブロックに1つずつチェックポイントが配置されているそうです。
左上から時計回りに、第1~第8のチェックポイントと設定されているようでした。
つまり私たちは、地図で見て左側のチェックポイントからスタートし、反時計回りで左上のチェックポイントを目指すルートを取るということになります。
「フィアナちゃん、なんでそんなに急いでるの?」
「人がいないところにモンスターは集まります。魔石、取り放題です!」
「なるほど!」
ポンと手を打つエリンちゃん。
私は初日に1気に移動し、人が少ないブロックで一夜を明かしたいと考えていました。
3日間で、8つのチェックポイント全てを巡るのは大前提。
セシリアさんとの勝負を考えると、いかに魔石を多く集めるかが大事になりそうだと思ったからです。
人の多い場所は、どうしても魔石の奪い合いになるでしょう。
だからこそ多少のリスクを取ってでも、人の少ない場所まで移動してから、モンスターを狩るのが良いと思ったわけです。
「疲れたら言ってね。休憩も大事だから」
「大丈夫です。冒険者として、山歩きは慣れてますから」
エリンちゃんは、動きづらいローブをまとい巨大な杖を背負っています。
しかし言葉に偽りはなく、随分と旅慣れている様子。
私の方も、ルナミリアで山歩きは散々しており(王都の山は、ルナミリアのそれと比べたら随分と歩きやすいです)こうした場所は得意です。
「あ、あれですかね?」
「かかし……?」
やかわて私たちが見つけたのは、マナが込められたなんともブサイクなカカシでした。
地図をかざすと、地図のチェックポイントに対応する場所が、マナに反応して色合いが変わり……、
(なるほど、こういうことだったんですね!)
例えるならスタンプラリーのようなものでしょうか。
そうして私たちは、無事、最初のチェックポイントにたどり着いた証を手に入れたのでした。
(順調ですね!)
チーム人数の少なさも相まって、あっという間にチェックポイントに辿り着いた私たち。
「エリンちゃん、お昼にしましょう!」
「ハイラ!」
私は、配給された缶詰を開封し……、
「あれぇ?」
中身を見て首を傾げます。
缶詰の中身は、ヘドロでぐちゃぐちゃ。
見るも無惨な姿になっており、到底、食べられるものではありませんでした。
「こ、これはまさか……!」
「エリンちゃん? どうしたの?」
「すみません。カトリーナさんから渡されたものを、そのまま受け取ってしまった私のミスです。まさか、こんな小細工をしてくるなんて――」
エリンちゃんは、悔しそうに歯噛みします。
カトリーナさんというのは、今回、セシリアさんチームに加わった特進クラスの生徒の1人です。
ルール説明中にも突っかかってきた少女であり、
「さすがに考え過ぎじゃないですか?」
「でも配給品が腐ってるなんて、おかしいです。そう考える方が自然です」
エリンちゃんは、そう吐き捨てます。
「どうしましょう? 1度、食料を受け取るために拠点に戻りますか? その……、かなりのタイムロスになってしまいますが」
「いいえ、わざわざ相手の狙い通りに動く必要はありませんね」
私は、にっこりと微笑み、
「ねえ。ジューシーなお肉、食べたくありませんか?」
きょとんとするエリンちゃんに、私はそう微笑みかけるのでした。
マティさんがそう宣言。
保存食と地図を受け取り、私たちは拠点を旅立つのでした。
数時間後。
私とエリンちゃんは、森の中を歩いていました。
受け取った地図には、大雑把な地形しか書き込まれていません。
細かい部分の測量も、今回の演習に含まれているようです。
「どこに向かってるの?」
「えっと、今回は第8チェックポイントから逆順にチェックポイントを回ろうと考えてます」
地図を見ながら、私はエリンちゃんにそう答えました。
第8チェックポイント──それは地図の西側に描かれており、湖の傍にあるやつです。
「チェックポイントって何なんでしょうね?」
「さあ……、マティ先生は見ればわかると言ってましたが──」
チェックポイントが分かるかどうかは、今回の演習の不安要素でした。
私は、改めて渡された地図を注意深く眺めます。
地図は9つのブロックに分けられており、中央を除くすべてのブロックに1つずつチェックポイントが配置されているそうです。
左上から時計回りに、第1~第8のチェックポイントと設定されているようでした。
つまり私たちは、地図で見て左側のチェックポイントからスタートし、反時計回りで左上のチェックポイントを目指すルートを取るということになります。
「フィアナちゃん、なんでそんなに急いでるの?」
「人がいないところにモンスターは集まります。魔石、取り放題です!」
「なるほど!」
ポンと手を打つエリンちゃん。
私は初日に1気に移動し、人が少ないブロックで一夜を明かしたいと考えていました。
3日間で、8つのチェックポイント全てを巡るのは大前提。
セシリアさんとの勝負を考えると、いかに魔石を多く集めるかが大事になりそうだと思ったからです。
人の多い場所は、どうしても魔石の奪い合いになるでしょう。
だからこそ多少のリスクを取ってでも、人の少ない場所まで移動してから、モンスターを狩るのが良いと思ったわけです。
「疲れたら言ってね。休憩も大事だから」
「大丈夫です。冒険者として、山歩きは慣れてますから」
エリンちゃんは、動きづらいローブをまとい巨大な杖を背負っています。
しかし言葉に偽りはなく、随分と旅慣れている様子。
私の方も、ルナミリアで山歩きは散々しており(王都の山は、ルナミリアのそれと比べたら随分と歩きやすいです)こうした場所は得意です。
「あ、あれですかね?」
「かかし……?」
やかわて私たちが見つけたのは、マナが込められたなんともブサイクなカカシでした。
地図をかざすと、地図のチェックポイントに対応する場所が、マナに反応して色合いが変わり……、
(なるほど、こういうことだったんですね!)
例えるならスタンプラリーのようなものでしょうか。
そうして私たちは、無事、最初のチェックポイントにたどり着いた証を手に入れたのでした。
(順調ですね!)
チーム人数の少なさも相まって、あっという間にチェックポイントに辿り着いた私たち。
「エリンちゃん、お昼にしましょう!」
「ハイラ!」
私は、配給された缶詰を開封し……、
「あれぇ?」
中身を見て首を傾げます。
缶詰の中身は、ヘドロでぐちゃぐちゃ。
見るも無惨な姿になっており、到底、食べられるものではありませんでした。
「こ、これはまさか……!」
「エリンちゃん? どうしたの?」
「すみません。カトリーナさんから渡されたものを、そのまま受け取ってしまった私のミスです。まさか、こんな小細工をしてくるなんて――」
エリンちゃんは、悔しそうに歯噛みします。
カトリーナさんというのは、今回、セシリアさんチームに加わった特進クラスの生徒の1人です。
ルール説明中にも突っかかってきた少女であり、
「さすがに考え過ぎじゃないですか?」
「でも配給品が腐ってるなんて、おかしいです。そう考える方が自然です」
エリンちゃんは、そう吐き捨てます。
「どうしましょう? 1度、食料を受け取るために拠点に戻りますか? その……、かなりのタイムロスになってしまいますが」
「いいえ、わざわざ相手の狙い通りに動く必要はありませんね」
私は、にっこりと微笑み、
「ねえ。ジューシーなお肉、食べたくありませんか?」
きょとんとするエリンちゃんに、私はそう微笑みかけるのでした。
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