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フィアナ、お腹いっぱいになる
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「ここからここまで、お代わりです!」
「まだ食べますの!? な、ならワタクシも――」
運ばれてきた山盛りの唐揚げを見て、私は目を輝かせます。
衣はサクサク、中はジューシー。
食べ応えもバッチリです!
「な、なかなかやりますわね!?」
「はい、とても美味しいですね!」
次々と皿を空にする私を見て、負けじと料理を口に運ぶセシリアさん。
勝負には関係ないエリンちゃんも、「こっちのメニューもオススメです」なんて言いながら、黙々と皿を空にしていき……、
(文句なしの100点です!)
(えっと、次はこの定番定食を制覇して──)
私が、メニューをキラキラした目で見つめていると、
「も、もう食べれませんわ~!?」
セシリアさんが、机に突っ伏してしまいました。
3人分ほどの定食を平らげたあたりで、もう限界――と天を仰いでいました。
「ここからここまで、お代わりです!」
「まだ食べますの!? な、ならワタクシも――」
「あの、セシリアさま。あまりご無理なさらない方が……」
「で、ですが! このチャンスを逃したら、フィアナさんを勧誘するチャンスは――」
コソコソと言い合うセシリア派の少女たち。
私たちの机の上には、大量の皿がうず高く積み上げられていました。
隣に座るエリンちゃんは、今も大盛りの唐揚げ定食をお代わりしており、フードファイターとしての可能性を感じさせてくれました。
なおも黙々と箸を動かす私たち。
微動だにしないセシリアさん。
むむむ、と悔しそうに唸っていましたが、
「ま、参りましたわ……」
やがては白旗。
「その……。ワタクシ、頼みすぎてしまったようで──」
「だから言いましたのに……」
ホカホカた湯気を立てる料理の山を前に、セシリアさんは困ったような顔でそう言います。
セシリア派の少女は、そうため息をつき、
「要らないなら、いただきます!」
私はそちらも、ぺろりと平らげるのでした。
※※※
「ふ~、美味しかったです。満足です!」
メニューを一式を平らげ、私はポンとお腹を叩きます。
「不思議ですわ。その身体のどこに、あれほどの料理が入るのでしょう」
「えっへん! デザートは別腹っていいますしね!」
不思議そうな顔で、私をしげしげと見るセシリアさん。
「本当に、見ていて清々しい食べっぷりでしたわね」
「腹八分目って感じです!」
「大食いで挑んだのが失敗というのが、良く分かりましたわ。エリンさんまで、凄い食べっぷりでしたわね――」
テーブルの上に、山積みにされたお皿たち。
その大多数は、私とエリンちゃんが平らげたものだったりします。
「食べられるときに、たくさん食べる。それが冒険者の仕事ですからね」
「そう、これは冒険者の仕事なんです!」
楽しそうに笑い合う私たち。
「まさか大食いで、セシリアさまを破る者が現れるなんて――」
「さすがは魔王――恐るべし!」
「きっとこの調子で、敵対関係にある人間のこともペロッと平らげてしまうに決まってますわ!(ブルブル)」
「食べませんよ!?」
そしてセシリア派を名乗る少女たちは、私のことを何だと思っているのでしょう。
そうして私たちは、店を出ます。
お会計で、店員さんまでもが「これが、エリシュアンの魔王──恐ろしい食べっぷりだ」なんてしみじみと呟いていて、私は半泣きになりつつ、
「それにしても、美味しいお店でしたわ。エリンさんは、ここに通って長いんですの?」
「そうですね。元々は、行き倒れたときに食べさせてもらったのがきっかけで――」
「「「行き倒れてた!?」」」
ギョッとして聞き返す私たち。
エリンちゃんは、少し恥ずかしそうに、
「上京したてのときに、生活費を杖につぎ込んでしまって。それで冒険者として稼げれば良かったのですが、現実は知っての通りで――一時期は、本当に食費すらなく……」
「もう。そんなに酷い状態なら、ワタクシを頼って下されば良かったのに――」
当たり前のように、そう言うセシリアさん。
「どういう意味ですか?」
「少しぐらいなら援助できるって話ですわ」
「……派閥に入るのを断ったのに?」
「そんなことは関係ありませんわ。ワタクシたち、クラスメイトじゃありませんの」
――困ったときに助け合うのは当然ですわ。
セシリアさんは、何を当たり前のことをとでも言いたげな様子。
「というかエリンちゃんも、セシリアさんの誘いを断ってたんですね?」
「はい。派閥って、なんだか怖いですし――」
「分かります、なんか怖いですよね!」
「何でですの!?」
意気投合する平民2人。
「ワタクシの派閥に入って下さった暁には、ローズウッドの名において皆さまの将来を、必ずや保証いたしますわ!」
「セシリアさま。たぶん、その言い回しが怪しいんじゃないかと――」
「じゃあ、どうしろって言いますの!?」
ギャーギャー言い合うセシリアさん御一行。
その様子を見ているだけで、セシリアさんが慕われているというのが分かり、
(良い人だなあ、セシリアさん)
ニコニコしているエリンちゃんも、セシリアさんには随分と気を許している様子。
セシリアさんとも、お友だちになりたい――素直にそう思います。
とはいえ派閥に入る気のない私では、難しいかもしれませんが……、
「セシリアさん。この後、予定がなければ、私たちと一緒に――」
「こうなったら作戦会議ですわ!」
言いかけた私の言葉は、残念なことにセシリアさんの耳に入ることはなく。
セシリアさんは、ガバッと立ち上がり、
「今日は負けてしまいましたが、ワタクシはまだ諦めませんわ! 必ずやフィアナさんを迎え入れてみせますわ!」
「「待って下さいまし、セシリアさま~!」」
(あ、嵐のような人でした――)
そんな捨て台詞とともに、セシリアさん達はピューッと学園に帰っていくのでした。
「まだ食べますの!? な、ならワタクシも――」
運ばれてきた山盛りの唐揚げを見て、私は目を輝かせます。
衣はサクサク、中はジューシー。
食べ応えもバッチリです!
「な、なかなかやりますわね!?」
「はい、とても美味しいですね!」
次々と皿を空にする私を見て、負けじと料理を口に運ぶセシリアさん。
勝負には関係ないエリンちゃんも、「こっちのメニューもオススメです」なんて言いながら、黙々と皿を空にしていき……、
(文句なしの100点です!)
(えっと、次はこの定番定食を制覇して──)
私が、メニューをキラキラした目で見つめていると、
「も、もう食べれませんわ~!?」
セシリアさんが、机に突っ伏してしまいました。
3人分ほどの定食を平らげたあたりで、もう限界――と天を仰いでいました。
「ここからここまで、お代わりです!」
「まだ食べますの!? な、ならワタクシも――」
「あの、セシリアさま。あまりご無理なさらない方が……」
「で、ですが! このチャンスを逃したら、フィアナさんを勧誘するチャンスは――」
コソコソと言い合うセシリア派の少女たち。
私たちの机の上には、大量の皿がうず高く積み上げられていました。
隣に座るエリンちゃんは、今も大盛りの唐揚げ定食をお代わりしており、フードファイターとしての可能性を感じさせてくれました。
なおも黙々と箸を動かす私たち。
微動だにしないセシリアさん。
むむむ、と悔しそうに唸っていましたが、
「ま、参りましたわ……」
やがては白旗。
「その……。ワタクシ、頼みすぎてしまったようで──」
「だから言いましたのに……」
ホカホカた湯気を立てる料理の山を前に、セシリアさんは困ったような顔でそう言います。
セシリア派の少女は、そうため息をつき、
「要らないなら、いただきます!」
私はそちらも、ぺろりと平らげるのでした。
※※※
「ふ~、美味しかったです。満足です!」
メニューを一式を平らげ、私はポンとお腹を叩きます。
「不思議ですわ。その身体のどこに、あれほどの料理が入るのでしょう」
「えっへん! デザートは別腹っていいますしね!」
不思議そうな顔で、私をしげしげと見るセシリアさん。
「本当に、見ていて清々しい食べっぷりでしたわね」
「腹八分目って感じです!」
「大食いで挑んだのが失敗というのが、良く分かりましたわ。エリンさんまで、凄い食べっぷりでしたわね――」
テーブルの上に、山積みにされたお皿たち。
その大多数は、私とエリンちゃんが平らげたものだったりします。
「食べられるときに、たくさん食べる。それが冒険者の仕事ですからね」
「そう、これは冒険者の仕事なんです!」
楽しそうに笑い合う私たち。
「まさか大食いで、セシリアさまを破る者が現れるなんて――」
「さすがは魔王――恐るべし!」
「きっとこの調子で、敵対関係にある人間のこともペロッと平らげてしまうに決まってますわ!(ブルブル)」
「食べませんよ!?」
そしてセシリア派を名乗る少女たちは、私のことを何だと思っているのでしょう。
そうして私たちは、店を出ます。
お会計で、店員さんまでもが「これが、エリシュアンの魔王──恐ろしい食べっぷりだ」なんてしみじみと呟いていて、私は半泣きになりつつ、
「それにしても、美味しいお店でしたわ。エリンさんは、ここに通って長いんですの?」
「そうですね。元々は、行き倒れたときに食べさせてもらったのがきっかけで――」
「「「行き倒れてた!?」」」
ギョッとして聞き返す私たち。
エリンちゃんは、少し恥ずかしそうに、
「上京したてのときに、生活費を杖につぎ込んでしまって。それで冒険者として稼げれば良かったのですが、現実は知っての通りで――一時期は、本当に食費すらなく……」
「もう。そんなに酷い状態なら、ワタクシを頼って下されば良かったのに――」
当たり前のように、そう言うセシリアさん。
「どういう意味ですか?」
「少しぐらいなら援助できるって話ですわ」
「……派閥に入るのを断ったのに?」
「そんなことは関係ありませんわ。ワタクシたち、クラスメイトじゃありませんの」
――困ったときに助け合うのは当然ですわ。
セシリアさんは、何を当たり前のことをとでも言いたげな様子。
「というかエリンちゃんも、セシリアさんの誘いを断ってたんですね?」
「はい。派閥って、なんだか怖いですし――」
「分かります、なんか怖いですよね!」
「何でですの!?」
意気投合する平民2人。
「ワタクシの派閥に入って下さった暁には、ローズウッドの名において皆さまの将来を、必ずや保証いたしますわ!」
「セシリアさま。たぶん、その言い回しが怪しいんじゃないかと――」
「じゃあ、どうしろって言いますの!?」
ギャーギャー言い合うセシリアさん御一行。
その様子を見ているだけで、セシリアさんが慕われているというのが分かり、
(良い人だなあ、セシリアさん)
ニコニコしているエリンちゃんも、セシリアさんには随分と気を許している様子。
セシリアさんとも、お友だちになりたい――素直にそう思います。
とはいえ派閥に入る気のない私では、難しいかもしれませんが……、
「セシリアさん。この後、予定がなければ、私たちと一緒に――」
「こうなったら作戦会議ですわ!」
言いかけた私の言葉は、残念なことにセシリアさんの耳に入ることはなく。
セシリアさんは、ガバッと立ち上がり、
「今日は負けてしまいましたが、ワタクシはまだ諦めませんわ! 必ずやフィアナさんを迎え入れてみせますわ!」
「「待って下さいまし、セシリアさま~!」」
(あ、嵐のような人でした――)
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