23 / 47
フィアナ、なぜかセシリアに勝負を挑まれる
しおりを挟む
エリンちゃんとパーティーを組んで数日後。
「エリンちゃん。お昼、一緒に行こう!」
「はい!」
私の呼びかけに、天使――ことエリンちゃんが、パタパタ駆け寄ってきました。
(祝! ぼっち脱却!)
これが新たな日常です!
私――フィアナは、歓喜に打ち震えていました。
クラスメイトに声をかけるだけで「ヒィィィィ、魔王!?」と恐れられていた私は、もう居ないのです。
今の私は、エリンちゃんとおかずの交換だって出来ちゃうんです。
これなら、次のお友達ができるのも秒読みと言っても過言では……、
「さすがフィアナちゃん! 凄いです、歩くだけで人がはけていきます!」
「あ~、言わないで!? せっかく考えないようにしてたのに!」
現実は無情。
どうやら冒険者ギルドでやらかしたことまで、学園内で噂が広まっているようでした。
いわく因縁を付けてきた冒険者をボコったとか、初見でイレギュラーモンスターをぶちのめして帰ってきたとか。
(絶対、モヒカンさんたちのせいじゃないですか!)
何を言っても聞く耳を持たず、今日もあることないこと武勇伝を語っている様子。
最近の私は、諦めて放任中です。
それぞれ食事を受け取り、私とエリンちゃんはテーブルに座ります。
「エリンちゃん、最近魔法の調子はどう?」
「はい、バッチリです。よく制御できてるって、マティ先生も褒めてくださいました!」
「それは良かった!」
嬉しそうに口をほころばせるエリンちゃん。
私が、幸せな気持ちでパクパク料理を口に運んでいると、
「フィアナちゃん、お肉ばっかり食べたら駄目です。ちゃんと野菜も食べないと!」
「う……、それは明日から――駄目?」
「駄目です。昨日もそう言ってましたよね」
エリンちゃんが、じとーっとこちらを見てきました。
そのまま山盛りのサラダを、私のテーブルに運んでくると、
「魔力の才は、健康な身体に宿る。です!」
「ぶ~、野菜なんか食べなくても十分に健康ですもん、私」
「駄目です。こんなに綺麗な肌なのに、そんなことしてたら、すぐ荒れちゃいますよ?」
そんなやり取りは、なぜかルナミリアのエルシャお母さんを彷彿とさせ……、
(エリンちゃん、最近よく笑うようになりましたね)
(良いことです!)
自信を取り戻して明るくなったエリンちゃん。
そんな彼女には、ちょっぴりお節介な1面もあるようです。
私はパクリとサラダを口に運び……、
「あれ? 美味しい!」
「えへへ、奇跡。込めましたから」
「奇跡の無駄遣いすぎる!?」
私の言葉に、エリンちゃんぺろりと舌を出すのでした。
そんな2人を、遠目で観察している少女が数人。
「ぐむむむむむ~。ワタクシの誘いは、全部断った癖に~!」
悔しそうに歯切りをする美しい金色の少女――セシリア。
ここ数日、フィアナを派閥に引き入れようと画策し、見事に断られているのでした。
「セシリア様、まだ続けるんですか?」
「セシリア様。周りの、周りの視線が、視線が痛いです――」
「諦めてはいけませんわ! なにせフィアナさんは、我がセシリア派が飛躍するのに欠かせない人材ですもの!」
自信満々にそう宣言するセシリア。
「……ですが、このままだと埒が明かないのも事実ですわね」
セシリアは、そう小声で呟き、
「そうですわ!」
ピコーンと跳ねるアホ毛がひとつ。
セシリアは、いいことを思いついたといった様子で、つかつかとフィアナたちが座るテーブルに歩き出すのでした。
***
私とエリンちゃんは、のんびり雑談に話を咲かせていました。
もっぱら話題は、授業や冒険者活動のことでしたが……、
(今こそ、次の段階に進むとき)
(放課後の街に、遊びに行っちゃいます!)
友だちができたらやりたいことリスト――密かに胸に仕舞われていたものです。
こうしてお昼を一緒に食べて、次にやりたいことは「友達と放課後の街に行って食べ歩き」という最高のプチ贅沢なのです。
「エリンちゃん、今日の放課後は街に遊びに行かない?」
「はい、是非とも是非とも喜んで!」
食い気味に返してくるエリンちゃん。
「ちょっと待った、ですわ~!」
そこに聞き慣れた声が割り込んできました。
「あ、セシリアさん! 派閥には入りませんよ、何の用ですか?」
「あなた、だんだんワタクシの扱いがおざなりになってきていませんこと?」
むむぅと頬を膨らませるセシリアさん。
クラスメイトの半数は、未だに私を遠巻きに見ているのが実情です。
そんな中、セシリアさんのように、毎日のように声をかけてくれる存在は貴重なのです。
(あとセシリアさん、不思議と貴族特有の話しづらさがないんだよね)
中には私たちが平民というだけで、露骨に見下した態度を取ってくる人も大勢います。
特にエリンちゃんに対しては、その傾向は顕著で――、
「ならエリンさん!」
「私も派閥とか、フィアナちゃんと一緒にいる時間が減りそうなのはちょっと――」
「あなたはそういう人でしたわね」
ニコニコ笑いながら、バッサリと切るエリンちゃん。
人によっては失礼だと怒る人もいるでしょう。
それでもセシリアさんは特に目くじらを立てることもなく、首を横に振りながら苦笑するのみ。
(変わらないと言えば、エリンちゃんも変わらないなあ――)
クラスでの評価が1番変わったのは、エリンちゃんだったりします。
伝説の聖女が使ったとされる癒やしの魔法に、ブラックドラゴンのブレスすら遮断する支援魔法――その腕は、疑いようがなく。
実技の時間でも、見事な支援魔法の腕前を披露したエリンちゃんに、クラスメイトたちは見事に手のひらを返したわけですが……、
(エリンちゃん、あんまり興味なさそうだったんだよね)
元パーティーからは、戻ってきて欲しいと懇願されていたそうですが、エリンちゃんは見向きもしなかったそうです。
他にも冒険者ギルドでも、パーティー勧誘の誘いはひっきりなし。
その全てをばっさり断り、私とパーティーを組み続けてくれているエリンちゃんなのです。
(エリンちゃん、やっぱり天使!)
そんな2人のやり取りをのんびりと見守っていると、
「フィアナさん、勝負ですわ!」
ピンと指を伸ばして、セシリアさんはそんなことを言ってきました。
「フィアナさん、ワタクシが勝ったら、あなたにはワタクシの派閥に入って頂きますわ!」
「え、普通に嫌ですが……」
「そこは乗ってくださらないと困りますわ!」
「理不尽だ!?」
私は、う~んと首を傾げながら、
「分かりました、1回だけ模擬戦やりましょう!」
セシリアさんの魔法は、クラスメイトの中でも洗練されていました。
(模擬戦の相手として不足なし!)
そう早合点した私に、
「いえ、勝負は模擬戦ではなく――」
「…………へ?」
セシリアさんが切り出したのは、思いもよらない勝負法なのでした。
「エリンちゃん。お昼、一緒に行こう!」
「はい!」
私の呼びかけに、天使――ことエリンちゃんが、パタパタ駆け寄ってきました。
(祝! ぼっち脱却!)
これが新たな日常です!
私――フィアナは、歓喜に打ち震えていました。
クラスメイトに声をかけるだけで「ヒィィィィ、魔王!?」と恐れられていた私は、もう居ないのです。
今の私は、エリンちゃんとおかずの交換だって出来ちゃうんです。
これなら、次のお友達ができるのも秒読みと言っても過言では……、
「さすがフィアナちゃん! 凄いです、歩くだけで人がはけていきます!」
「あ~、言わないで!? せっかく考えないようにしてたのに!」
現実は無情。
どうやら冒険者ギルドでやらかしたことまで、学園内で噂が広まっているようでした。
いわく因縁を付けてきた冒険者をボコったとか、初見でイレギュラーモンスターをぶちのめして帰ってきたとか。
(絶対、モヒカンさんたちのせいじゃないですか!)
何を言っても聞く耳を持たず、今日もあることないこと武勇伝を語っている様子。
最近の私は、諦めて放任中です。
それぞれ食事を受け取り、私とエリンちゃんはテーブルに座ります。
「エリンちゃん、最近魔法の調子はどう?」
「はい、バッチリです。よく制御できてるって、マティ先生も褒めてくださいました!」
「それは良かった!」
嬉しそうに口をほころばせるエリンちゃん。
私が、幸せな気持ちでパクパク料理を口に運んでいると、
「フィアナちゃん、お肉ばっかり食べたら駄目です。ちゃんと野菜も食べないと!」
「う……、それは明日から――駄目?」
「駄目です。昨日もそう言ってましたよね」
エリンちゃんが、じとーっとこちらを見てきました。
そのまま山盛りのサラダを、私のテーブルに運んでくると、
「魔力の才は、健康な身体に宿る。です!」
「ぶ~、野菜なんか食べなくても十分に健康ですもん、私」
「駄目です。こんなに綺麗な肌なのに、そんなことしてたら、すぐ荒れちゃいますよ?」
そんなやり取りは、なぜかルナミリアのエルシャお母さんを彷彿とさせ……、
(エリンちゃん、最近よく笑うようになりましたね)
(良いことです!)
自信を取り戻して明るくなったエリンちゃん。
そんな彼女には、ちょっぴりお節介な1面もあるようです。
私はパクリとサラダを口に運び……、
「あれ? 美味しい!」
「えへへ、奇跡。込めましたから」
「奇跡の無駄遣いすぎる!?」
私の言葉に、エリンちゃんぺろりと舌を出すのでした。
そんな2人を、遠目で観察している少女が数人。
「ぐむむむむむ~。ワタクシの誘いは、全部断った癖に~!」
悔しそうに歯切りをする美しい金色の少女――セシリア。
ここ数日、フィアナを派閥に引き入れようと画策し、見事に断られているのでした。
「セシリア様、まだ続けるんですか?」
「セシリア様。周りの、周りの視線が、視線が痛いです――」
「諦めてはいけませんわ! なにせフィアナさんは、我がセシリア派が飛躍するのに欠かせない人材ですもの!」
自信満々にそう宣言するセシリア。
「……ですが、このままだと埒が明かないのも事実ですわね」
セシリアは、そう小声で呟き、
「そうですわ!」
ピコーンと跳ねるアホ毛がひとつ。
セシリアは、いいことを思いついたといった様子で、つかつかとフィアナたちが座るテーブルに歩き出すのでした。
***
私とエリンちゃんは、のんびり雑談に話を咲かせていました。
もっぱら話題は、授業や冒険者活動のことでしたが……、
(今こそ、次の段階に進むとき)
(放課後の街に、遊びに行っちゃいます!)
友だちができたらやりたいことリスト――密かに胸に仕舞われていたものです。
こうしてお昼を一緒に食べて、次にやりたいことは「友達と放課後の街に行って食べ歩き」という最高のプチ贅沢なのです。
「エリンちゃん、今日の放課後は街に遊びに行かない?」
「はい、是非とも是非とも喜んで!」
食い気味に返してくるエリンちゃん。
「ちょっと待った、ですわ~!」
そこに聞き慣れた声が割り込んできました。
「あ、セシリアさん! 派閥には入りませんよ、何の用ですか?」
「あなた、だんだんワタクシの扱いがおざなりになってきていませんこと?」
むむぅと頬を膨らませるセシリアさん。
クラスメイトの半数は、未だに私を遠巻きに見ているのが実情です。
そんな中、セシリアさんのように、毎日のように声をかけてくれる存在は貴重なのです。
(あとセシリアさん、不思議と貴族特有の話しづらさがないんだよね)
中には私たちが平民というだけで、露骨に見下した態度を取ってくる人も大勢います。
特にエリンちゃんに対しては、その傾向は顕著で――、
「ならエリンさん!」
「私も派閥とか、フィアナちゃんと一緒にいる時間が減りそうなのはちょっと――」
「あなたはそういう人でしたわね」
ニコニコ笑いながら、バッサリと切るエリンちゃん。
人によっては失礼だと怒る人もいるでしょう。
それでもセシリアさんは特に目くじらを立てることもなく、首を横に振りながら苦笑するのみ。
(変わらないと言えば、エリンちゃんも変わらないなあ――)
クラスでの評価が1番変わったのは、エリンちゃんだったりします。
伝説の聖女が使ったとされる癒やしの魔法に、ブラックドラゴンのブレスすら遮断する支援魔法――その腕は、疑いようがなく。
実技の時間でも、見事な支援魔法の腕前を披露したエリンちゃんに、クラスメイトたちは見事に手のひらを返したわけですが……、
(エリンちゃん、あんまり興味なさそうだったんだよね)
元パーティーからは、戻ってきて欲しいと懇願されていたそうですが、エリンちゃんは見向きもしなかったそうです。
他にも冒険者ギルドでも、パーティー勧誘の誘いはひっきりなし。
その全てをばっさり断り、私とパーティーを組み続けてくれているエリンちゃんなのです。
(エリンちゃん、やっぱり天使!)
そんな2人のやり取りをのんびりと見守っていると、
「フィアナさん、勝負ですわ!」
ピンと指を伸ばして、セシリアさんはそんなことを言ってきました。
「フィアナさん、ワタクシが勝ったら、あなたにはワタクシの派閥に入って頂きますわ!」
「え、普通に嫌ですが……」
「そこは乗ってくださらないと困りますわ!」
「理不尽だ!?」
私は、う~んと首を傾げながら、
「分かりました、1回だけ模擬戦やりましょう!」
セシリアさんの魔法は、クラスメイトの中でも洗練されていました。
(模擬戦の相手として不足なし!)
そう早合点した私に、
「いえ、勝負は模擬戦ではなく――」
「…………へ?」
セシリアさんが切り出したのは、思いもよらない勝負法なのでした。
36
お気に入りに追加
1,630
あなたにおすすめの小説

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。

夫婦で異世界に召喚されました。夫とすぐに離婚して、私は人生をやり直します
もぐすけ
ファンタジー
私はサトウエリカ。中学生の息子を持つアラフォーママだ。
子育てがひと段落ついて、結婚生活に嫌気がさしていたところ、夫婦揃って異世界に召喚されてしまった。
私はすぐに夫と離婚し、異世界で第二の人生を楽しむことにした。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

Sランク冒険者の受付嬢
おすし
ファンタジー
王都の中心街にある冒険者ギルド《ラウト・ハーヴ》は、王国最大のギルドで登録冒険者数も依頼数もNo.1と実績のあるギルドだ。
だがそんなギルドには1つの噂があった。それは、『あのギルドにはとてつもなく強い受付嬢』がいる、と。
そんな噂を耳にしてギルドに行けば、受付には1人の綺麗な銀髪をもつ受付嬢がいてー。
「こんにちは、ご用件は何でしょうか?」
その受付嬢は、今日もギルドで静かに仕事をこなしているようです。
これは、最強冒険者でもあるギルドの受付嬢の物語。
※ほのぼので、日常:バトル=2:1くらいにするつもりです。
※前のやつの改訂版です
※一章あたり約10話です。文字数は1話につき1500〜2500くらい。

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。

聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!
ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません?
せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」
不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。
実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。
あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね?
なのに周りの反応は正反対!
なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。
勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる