病弱少女、転生して健康な肉体(最強)を手に入れる~友達が欲しくて魔境を旅立ちましたが、どうやら私の魔法は少しおかしいようです~

アトハ

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フィアナ、なぜかセシリアに勝負を挑まれる

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 エリンちゃんとパーティーを組んで数日後。


「エリンちゃん。お昼、一緒に行こう!」
「はい!」

 私の呼びかけに、天使――ことエリンちゃんが、パタパタ駆け寄ってきました。

(祝! ぼっち脱却!)

 これが新たな日常です!
 私――フィアナは、歓喜に打ち震えていました。

 クラスメイトに声をかけるだけで「ヒィィィィ、魔王!?」と恐れられていた私は、もう居ないのです。
 今の私は、エリンちゃんとおかずの交換だって出来ちゃうんです。
 これなら、次のお友達ができるのも秒読みと言っても過言では……、


「さすがフィアナちゃん! 凄いです、歩くだけで人がはけていきます!」
「あ~、言わないで!? せっかく考えないようにしてたのに!」

 現実は無情。
 どうやら冒険者ギルドでやらかしたことまで、学園内で噂が広まっているようでした。

 いわく因縁を付けてきた冒険者をボコったとか、初見でイレギュラーモンスターをぶちのめして帰ってきたとか。

(絶対、モヒカンさんたちのせいじゃないですか!)

 何を言っても聞く耳を持たず、今日もあることないこと武勇伝を語っている様子。
 最近の私は、諦めて放任中です。
 それぞれ食事を受け取り、私とエリンちゃんはテーブルに座ります。

「エリンちゃん、最近魔法の調子はどう?」
「はい、バッチリです。よく制御できてるって、マティ先生も褒めてくださいました!」
「それは良かった!」

 嬉しそうに口をほころばせるエリンちゃん。
 私が、幸せな気持ちでパクパク料理を口に運んでいると、

「フィアナちゃん、お肉ばっかり食べたら駄目です。ちゃんと野菜も食べないと!」
「う……、それは明日から――駄目?」
「駄目です。昨日もそう言ってましたよね」

 エリンちゃんが、じとーっとこちらを見てきました。
 そのまま山盛りのサラダを、私のテーブルに運んでくると、

「魔力の才は、健康な身体に宿る。です!」
「ぶ~、野菜なんか食べなくても十分に健康ですもん、私」
「駄目です。こんなに綺麗な肌なのに、そんなことしてたら、すぐ荒れちゃいますよ?」

 そんなやり取りは、なぜかルナミリアのエルシャお母さんを彷彿とさせ……、

(エリンちゃん、最近よく笑うようになりましたね)
(良いことです!)

 自信を取り戻して明るくなったエリンちゃん。
 そんな彼女には、ちょっぴりお節介な1面もあるようです。
 私はパクリとサラダを口に運び……、

「あれ? 美味しい!」
「えへへ、奇跡。込めましたから」
「奇跡の無駄遣いすぎる!?」

 私の言葉に、エリンちゃんぺろりと舌を出すのでした。



 そんな2人を、遠目で観察している少女が数人。
「ぐむむむむむ~。ワタクシの誘いは、全部断った癖に~!」

 悔しそうに歯切りをする美しい金色の少女――セシリア。
 ここ数日、フィアナを派閥に引き入れようと画策し、見事に断られているのでした。

「セシリア様、まだ続けるんですか?」
「セシリア様。周りの、周りの視線が、視線が痛いです――」
「諦めてはいけませんわ! なにせフィアナさんは、我がセシリア派が飛躍するのに欠かせない人材ですもの!」

 自信満々にそう宣言するセシリア。

「……ですが、このままだと埒が明かないのも事実ですわね」

 セシリアは、そう小声で呟き、

「そうですわ!」

 ピコーンと跳ねるアホ毛がひとつ。
 セシリアは、いいことを思いついたといった様子で、つかつかとフィアナたちが座るテーブルに歩き出すのでした。



***

 私とエリンちゃんは、のんびり雑談に話を咲かせていました。
 もっぱら話題は、授業や冒険者活動のことでしたが……、

(今こそ、次の段階に進むとき)
(放課後の街に、遊びに行っちゃいます!)

 友だちができたらやりたいことリスト――密かに胸に仕舞われていたものです。
 こうしてお昼を一緒に食べて、次にやりたいことは「友達と放課後の街に行って食べ歩き」という最高のプチ贅沢なのです。

「エリンちゃん、今日の放課後は街に遊びに行かない?」
「はい、是非とも是非とも喜んで!」

 食い気味に返してくるエリンちゃん。


「ちょっと待った、ですわ~!」

 そこに聞き慣れた声が割り込んできました。

「あ、セシリアさん! 派閥には入りませんよ、何の用ですか?」
「あなた、だんだんワタクシの扱いがおざなりになってきていませんこと?」

 むむぅと頬を膨らませるセシリアさん。
 クラスメイトの半数は、未だに私を遠巻きに見ているのが実情です。
 そんな中、セシリアさんのように、毎日のように声をかけてくれる存在は貴重なのです。

(あとセシリアさん、不思議と貴族特有の話しづらさがないんだよね)

 中には私たちが平民というだけで、露骨に見下した態度を取ってくる人も大勢います。
 特にエリンちゃんに対しては、その傾向は顕著で――、

「ならエリンさん!」
「私も派閥とか、フィアナちゃんと一緒にいる時間が減りそうなのはちょっと――」
「あなたはそういう人でしたわね」

 ニコニコ笑いながら、バッサリと切るエリンちゃん。

 人によっては失礼だと怒る人もいるでしょう。
 それでもセシリアさんは特に目くじらを立てることもなく、首を横に振りながら苦笑するのみ。

(変わらないと言えば、エリンちゃんも変わらないなあ――)

 クラスでの評価が1番変わったのは、エリンちゃんだったりします。

 伝説の聖女が使ったとされる癒やしの魔法に、ブラックドラゴンのブレスすら遮断する支援魔法――その腕は、疑いようがなく。
 実技の時間でも、見事な支援魔法の腕前を披露したエリンちゃんに、クラスメイトたちは見事に手のひらを返したわけですが……、

(エリンちゃん、あんまり興味なさそうだったんだよね)

 元パーティーからは、戻ってきて欲しいと懇願されていたそうですが、エリンちゃんは見向きもしなかったそうです。

 他にも冒険者ギルドでも、パーティー勧誘の誘いはひっきりなし。
 その全てをばっさり断り、私とパーティーを組み続けてくれているエリンちゃんなのです。

(エリンちゃん、やっぱり天使!)

 そんな2人のやり取りをのんびりと見守っていると、


「フィアナさん、勝負ですわ!」

 ピンと指を伸ばして、セシリアさんはそんなことを言ってきました。

「フィアナさん、ワタクシが勝ったら、あなたにはワタクシの派閥に入って頂きますわ!」
「え、普通に嫌ですが……」

「そこは乗ってくださらないと困りますわ!」
「理不尽だ!?」

 私は、う~んと首を傾げながら、

「分かりました、1回だけ模擬戦やりましょう!」

 セシリアさんの魔法は、クラスメイトの中でも洗練されていました。

(模擬戦の相手として不足なし!)

 そう早合点した私に、


「いえ、勝負は模擬戦ではなく――」
「…………へ?」

 セシリアさんが切り出したのは、思いもよらない勝負法なのでした。
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