病弱少女、転生して健康な肉体(最強)を手に入れる~友達が欲しくて魔境を旅立ちましたが、どうやら私の魔法は少しおかしいようです~

アトハ

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【エリン視点】

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 私――エリンは、この学園には相応しくない。
 ずっと、そう思っていました。

「まるでマナーがなっていないな」
「お前みたいな役立たずに、エリシュアンは相応しくない」
「どけよ、下賤な平民が!」

 投げられた侮蔑の言葉は数知れず。
 周りに居たのは、きらびやかな衣装が似合うお貴族様ばかり――私にできたのは、ぐっと唇を噛んで心無い言葉に耐えることだけでした。

 私がエリシュアンへの入学を許されたのは、魔力鑑定の儀で光属性への適性が認められたからです。
 せめて使えるようになれば、少しは学園で居場所が出来るはず。

 そう思って必死で練習してきた私ですが、魔法が発動する兆しすら見えず……、


「このまま変化がなければ、特待生扱いを打ち切ることになる。すまないね――君だけを特別扱いすることも出来なくてな」

 突きつけられたのは最後通告。
 今年度中に、光属性のマナを扱えなければ、特待生の地位は剥奪。
 貧乏な私の家は、とても学費なんて払えません。


 結局、私は学園を去ることになりますが……、

「仕方ないよね――」

 光属性の魔法は、歴代の聖女さまと同じ英雄の力。
 そんな奇跡のような代物が、私に宿るはずがなかったのです。


 ある日、編入生が入ってきました。
 嫌味な試験官をぶっ飛ばし、自己紹介の場では変なことを言う面白い子。

 見ていれば分かりました――その才能は、まさしく宝石そのもの。
 この子のような人が、いずれは国を背負う英雄になっていくんだと思います。
 平民でありながら、圧倒的な力で運命を切り開いていく姿は、まさしく私にとって理想そのものでした――住む世界が違っていたのです。


 しかし、その子は何を思ったのか私を冒険者としてパーティーに誘ってきたのです。
 私の役立たずぶりは、もう学園中に広がっています。
 今では、誰もパーティーを組んでくれようとしませんでした。

 なんで自分なんかとパーティーを組みたいのかは分かりません。
 それでも私は、藁にもすがる気持ちでうなずきます。


 フィアナちゃんは、不思議な子でした。
 破れかぶれで、ソロでどうにかしようと身に着けた杖術――誰もが馬鹿にした明後日の方向への努力を見て、笑うどころか凄いと目を輝かせていたのです。

 というよりフィアナちゃん本人も、マジシャンに圧倒的な適性がありながら、前衛でバシバシと敵を叩き斬る不思議な子で(「健康な身体を活かすにはこれです!」とか、よく分からないことを言ってました……)

「光属性の本質は、支援と癒やし」
「発動には、想像力と――信じてあげる心が大事」

 いつの日にか、完全に無くしてしまった自信。
 無邪気に奇跡を信じる心――その言葉は、とても胸に刺さるものがありました。



 そうしてボス戦が始まりました。
 ダンジョンの『ボス』は、これまで相手にしてきたモンスターとは別格の強さでした。
 睨まれただけで、私は恐怖にかられて動けなくなってしまうほど。

 それでもフィアナちゃんは、真っ直ぐに立ち向かいました。


(――英雄)

 圧倒的な敵を前に、決して振り向かず、それどころか見るものを勇気づけるように、どこか楽しそうに戦う姿――おとぎ話の言葉を借りるなら、それは勇者そのものでした。

 フィアナちゃんは、将来、間違いなく英雄になる人です。
 そんなフィアナちゃんが、私なんかを庇って死ぬ?

「冗談じゃない」

 私なんかを、信じてると言ってくれたのです。
 もし奇跡というものが本当になるなら、今だけは応えて欲しい。

「お願い――力を貸して!」

 イメージしたのは、かつての聖女が使ったという奇跡。
 ――それと”私の英雄”が使った盾の魔法。

「これが――光魔法!?」

 無我夢中で、それからのことはよく覚えていません。
 気がつけばドラゴンは一刀両断されていて、何食わぬ顔でフィアナちゃんが魔石を手にしていました。
 やっぱり、フィアナちゃんは凄いです。

「フィアナちゃん――良かった~!」

 初めて魔法が発動した喜びよりも、フィアナちゃんが無事だった事実が嬉しくて。
 おまけにフィアナちゃんは、今後もパーティーを組もうとも言ってくれて――
 もしフィアナちゃんの隣で、その活躍をずっと見守っていられるなら、それはきっと素晴らしいことで……、


(フィアナちゃんは、きっと英雄になる人です)
(でも、すごく危なっかしい子)

 同時に覚えたのは一抹の不安。

 なにせフィアナちゃんは、おっちょこちょいで、他人のために命すら危険にさらすお人好し。
 どこか見知らぬ土地で、お腹が空いて行き倒れてそうな危うさもあるのです。


 ――私が、傍で見守ってないと
 ひそかにそんな決意を固める私なのでした。
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