病弱少女、転生して健康な肉体(最強)を手に入れる~友達が欲しくて魔境を旅立ちましたが、どうやら私の魔法は少しおかしいようです~

アトハ

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フィアナ、なぜか舎弟を増やしてしまう

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 そうして瞬く間に、決闘が始まりました。
 ギルドに居合わせた冒険者が数名、観客席で戦いの行方を見守っています。

「あら、また3馬鹿モヒカン。お相手は?」
「今日、登録したてのエリシュアンの編入生らしい。魔法の腕がえげつなくて、飛び級でCランクのライセンスを与えられるとか」
「ほ~、そりゃあお手並み拝見だなあ」

 冒険者たちからは、興味深そうな視線が注がれています。
 強さが正義の冒険者という世界――冒険者同士の決闘は、それだけで1つの娯楽として成り立っているようです。

「え? エリシュアンの編入生って、魔王の再来と噂の……、あの?」
「あ、うちのチームでも噂を聞いたことが――」
「違いますよ!!」

 そんな恐ろしい囁きまで聞こえてきて、高速で否定する私。

「ヒャッハー、覚悟はいいかぁ!!」

 一方、周囲の喧騒など気にせず、モヒカン3人衆は平常運転。
 もはやその様相は、ある種の癒やしのようであり、

「遠慮は要りません。かかってきて下さい」

 私が、クイクイと手招きすると、

「「「ぶち殺すっ!」」」

 モヒカン3人衆は怒りに任せて、私に突っ込んでくるのでした。


 
「どうした、どうしたぁ! 手も足も出ないかぁぁぁ!」
「ヒャッハー! 油断したなぁ!」
「ヒュー、アニキ! 悪徳貴族はサックリ成敗――格好いいッス!」

 モヒカンたちが高笑いしながら、無茶苦茶に手にしたサーベルを振り回してきます。

 それは荒々しくも綺麗な太刀筋でした。
 しかしあまりにも動きが素直なせいで、見切るのは容易でもあります。
 私は軽やかにステップを踏みながら、攻撃を回避していきます。

(何か企んでるんでしょうか)

 何を狙っているのかと思いきや、モヒカンさんたちは愚直に攻撃を繰り返してくるのみ。
 これが油断を誘うための演技だとしたら、大した策士ですが……、

「3対1だからって遠慮してるんですか? もっと本気でやっていいですよ?」
「アニキ!? こいつ、すばしっこいぞ!」
「どうなってるんだ、当たらねえ!?」
「慌てるな! 敵は魔術師。詠唱の隙さえ与えなければ、俺たちの勝利は――ふべしっ!」

 埒が明かないので、こちらから仕掛けます。
 何かを言いかけたリーダーモヒカンを、私は思いきりぶん殴り……、

「ホギャァァァアア!?」
「「アニキィィィィ!?」」

 相手は凄まじい勢いで吹っ飛び、そのまま場外に墜落していきました。

「は……?」
「嬢ちゃん、おまえ――魔術師じゃねえの?」
「剣士ですって!」

 ポカーンとしたまま動きを止めるモヒカンたち。

「何でもやりますよ。なんてったって私、健康ですから!」

 私は、えっへんと胸を張ります。

 ルナミリアでは、毎日のように模擬戦をして遊んでいた私です。
 だいたいの武器なら扱えますし、ある程度は肉弾戦だってお手のもの。
 虚弱で動けない前世とは違うのです。

「か……、怪力女!!」
「なっ!? 年頃の女の子に向かって、なんて言うことを言うんですか!!」

 ムカッときた私は、身体強化魔法をフル活用。
 一気にトップスピードまで加速し、そのまま1人の後ろを取ると、

「おまえ……!? いつの間に――」
「成敗!」

 情け容赦なくグーパン。
 拳を受けたモヒカンさんは、またしても天高く吹き飛び、

「ギャンッ!」

 地面に突き刺さりピクピクしています。

「これで……、あなただけですね!」
「ヒィィィイ――参った!!!」

 サーベルをポイッと投げ捨て、見事な土下座を決めるラストモヒカンさん。
 やけに手慣れた美しいフォームでした。

「そこまで! 2人は戦闘不能――1人は降参。勝者――フィアナ!」

 同時に、審判の宣言も響き渡り、

「あの嬢ちゃん、やるなあ!」
「まさか3馬鹿モヒカンを1方的にノシちまうなんて!」
「あいつら、頭に筋肉しか詰まってない馬鹿ばっかりだけど、実力だけは確かだからなぁ……」

 どっと湧く観客席。
 その声は、たしかに私を称えるものではありましたが、

(おかしいですね。友達作りから、どんどん遠ざかってるような――)

 拳を突き上げ、歓声に答えつつ。
 内心では、首を傾げる私なのでした。



*** 

 その数分後。

「嬢ちゃん! いいや、姉御!」
「……は?」

 リーダーモヒカンが、むくりと起き上がり、仲間になりたそうに、こちらを見てきました!

「俺、感動しちまったよ。魔法使いでありながら、軽やかな身のこなし。なにより笑顔のまま、情け容赦なく敵を屠るその冷徹さ――姉御は漢の中の漢だ!」
「だ~れが男じゃっ!」

 思わずグーパン。天高く吹っ飛ぶはモヒカン。
 精神攻撃なら100点満点です。

「へっ……、姉御にならこの命、捧げてもいいかもな。この世界は力がすべて――約束どおり、俺たちは、あんたの舎弟になろう!」
「ノーサンキューです!」

「ヒャッハー! オレっち、殴られるのが快感になっちまったぜぇ!」
「知りませんが!?」

 だらだら流血しながら、ナチュラルに狂ったことを言い出すモヒカン集団。

(冒険者って、みんなこうなんですかね!?)

 ぜえぜえと肩で息をしながら私は、

「これでCランクと認めてくれますか?」
「ハハァ! 姉御ならCランクどころか、すぐに伝説のSランクにもなれると思いやす!」

 とりあえずの目的を終え、静かにため息をつく私。
 冒険者登録をしたかっただけなのに、思えば随分と大事になってしまったものです。

「これから少しは人の話を聞いて下さいね」
「「「はい、姉御!」」」

 見事なジャンピング土下座を決めてみせるモヒカン3人衆。

「姉御呼びはちょっと――」
「「「はい、姉御!」」」
「……もう、それでいいです」

 友達の代わりに、なぜか出来たのは舎弟。

(どうしてこうなった~!?)


 ままならぬ現実を前に、私は天を仰ぐのでした。
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