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5. 素敵な生き方ですね
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「まあいいか」
鍋少年は、苦笑しながらそう呟きました。
「僕にパーティーメンバーがいるか、だっけ?」
私は黙って話の続きを促しました。
「パーティメンバーは僕1人、余りものだね。
この学園は、実力主義だから。
コネでパーティーを作り上げることはできない」
ヴォン殿下のもとには、学園でもトップレベルの者たちが集まっていましたね。
ヴォン殿下の友達と婚約者の私、そして殿下に溺愛されていたイリア。
「……変人・奇人と呼ばれる厄介な変わり者。
僕に対する評価は、決して間違ってはないからね」
「演習の最中に、堂々と臭いを発する調理をしていましたからね……。
否定はできないです」
「こんな僕でも、ケガでもさせようものなら責任問題だ。
さぞ扱いにくいだろうね……」
――責任問題?
どうやら相当に高位の貴族なのかもしれません。
それを言うなら、私もそうなのですが。
「もとから1人だったんですね。
てっきり、パーティーから追放でもされたのかと思いましたよ。
料理で足を引っ張ってパーティー追放。笑い話にもなりませんね。
……いただいた以上、料理は止めませんけどね」
「さすがに場所は選ぶよ。
寄ってきたモンスターなんて、片っ端から切れ捨てれば良い。
餌に釣られて寄ってくるモンスターなんて雑魚だ。
相手にもならない、新鮮な食材だ」
命の危険もあるモンスターを、まさかの食材呼ばわり。
決して強がっているわけでもなく、それが彼にとっての日常なのだろなと思います。
自然体。貴族特有の自分をどう見せようか、という打算をまったく感じません。
「あなたにとってはそうでも、他の方にとっては違うでしょう。
……そんなことをしているから、パーティーを組むことすらできない。
結果として、1人で鍋をつついているのでは?」
「否定はできないね。
まあ、それならそれで良いじゃないか」
――他者の評価をまったく気にしないからなんだろうな
変人・奇人の評価をありのまま受け入れ、それでなお自分の道を歩き続ける。
今までの私には理解できない考え方です。
受け入れられる努力をしないのは逃げでしかない。そんなものは無価値だと。
こんな状況でなければ、鼻で笑っていたかもしれません。
「決められたやりかたに従うだけじゃ、見えないこともあると僕は思ってるからね。
これまでの道は、僕が自分で選び取ったものだ。
ならその結果もどんなものであれ、納得して受け入れいれるべきだ」
回りの期待を背負い、自らの欲求を殺し続けた私。
その答えとして与えられた婚約破棄という結末は。
おまけのように突き付けられたパーティーからの追放。
「素敵な生き方ですね……」
ポツリ、と言葉から出てきたのは素直な感想。
目の前の少年の生き方は、まるで私の生き方とは真逆です。
「君がそう言うのは意外だね。
『受け入れられる努力をしないのは逃げです』とでも言うかと思っていたよ」
「あなたは、ずいぶん私のことを知ったようなことを言うんですね」
内心をずばりと言い当てられました。
貴族社会に生きる令嬢としては、一般的な物言いなのでしょうか。
「こう言ったら失礼かもしれないけど。
まあ……どこにでもいそうな、貴族らしい貴族だとは思ってたよ」
どこにでもいそうな貴族……ですか。
なんとなく面白くない表現です。
ムッとしたまま、鍋に手を伸ばしました。
そこで「まだ食べるんだ……」とか、そんなしみじみと言わないで欲しいです。
貴族としてとか、変人・奇人であるとか、それ以前の問題として。
ただただ人として、普通にデリカシーに欠けています……。
鍋少年は、苦笑しながらそう呟きました。
「僕にパーティーメンバーがいるか、だっけ?」
私は黙って話の続きを促しました。
「パーティメンバーは僕1人、余りものだね。
この学園は、実力主義だから。
コネでパーティーを作り上げることはできない」
ヴォン殿下のもとには、学園でもトップレベルの者たちが集まっていましたね。
ヴォン殿下の友達と婚約者の私、そして殿下に溺愛されていたイリア。
「……変人・奇人と呼ばれる厄介な変わり者。
僕に対する評価は、決して間違ってはないからね」
「演習の最中に、堂々と臭いを発する調理をしていましたからね……。
否定はできないです」
「こんな僕でも、ケガでもさせようものなら責任問題だ。
さぞ扱いにくいだろうね……」
――責任問題?
どうやら相当に高位の貴族なのかもしれません。
それを言うなら、私もそうなのですが。
「もとから1人だったんですね。
てっきり、パーティーから追放でもされたのかと思いましたよ。
料理で足を引っ張ってパーティー追放。笑い話にもなりませんね。
……いただいた以上、料理は止めませんけどね」
「さすがに場所は選ぶよ。
寄ってきたモンスターなんて、片っ端から切れ捨てれば良い。
餌に釣られて寄ってくるモンスターなんて雑魚だ。
相手にもならない、新鮮な食材だ」
命の危険もあるモンスターを、まさかの食材呼ばわり。
決して強がっているわけでもなく、それが彼にとっての日常なのだろなと思います。
自然体。貴族特有の自分をどう見せようか、という打算をまったく感じません。
「あなたにとってはそうでも、他の方にとっては違うでしょう。
……そんなことをしているから、パーティーを組むことすらできない。
結果として、1人で鍋をつついているのでは?」
「否定はできないね。
まあ、それならそれで良いじゃないか」
――他者の評価をまったく気にしないからなんだろうな
変人・奇人の評価をありのまま受け入れ、それでなお自分の道を歩き続ける。
今までの私には理解できない考え方です。
受け入れられる努力をしないのは逃げでしかない。そんなものは無価値だと。
こんな状況でなければ、鼻で笑っていたかもしれません。
「決められたやりかたに従うだけじゃ、見えないこともあると僕は思ってるからね。
これまでの道は、僕が自分で選び取ったものだ。
ならその結果もどんなものであれ、納得して受け入れいれるべきだ」
回りの期待を背負い、自らの欲求を殺し続けた私。
その答えとして与えられた婚約破棄という結末は。
おまけのように突き付けられたパーティーからの追放。
「素敵な生き方ですね……」
ポツリ、と言葉から出てきたのは素直な感想。
目の前の少年の生き方は、まるで私の生き方とは真逆です。
「君がそう言うのは意外だね。
『受け入れられる努力をしないのは逃げです』とでも言うかと思っていたよ」
「あなたは、ずいぶん私のことを知ったようなことを言うんですね」
内心をずばりと言い当てられました。
貴族社会に生きる令嬢としては、一般的な物言いなのでしょうか。
「こう言ったら失礼かもしれないけど。
まあ……どこにでもいそうな、貴族らしい貴族だとは思ってたよ」
どこにでもいそうな貴族……ですか。
なんとなく面白くない表現です。
ムッとしたまま、鍋に手を伸ばしました。
そこで「まだ食べるんだ……」とか、そんなしみじみと言わないで欲しいです。
貴族としてとか、変人・奇人であるとか、それ以前の問題として。
ただただ人として、普通にデリカシーに欠けています……。
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