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8. こうして、国に訪れた大災厄は防がれたのでした
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お母さんは、錫杖を厳かに振り、舞いを踊ります。
こんな緊急事態にも関わらず、堂々とした美しい佇まいで。
――やっぱりお母さんはカッコイイ!
妖精の愛し子と呼ばれても。
妖精さんとお喋りして全部お任せ~、なんてかっこよくない!
お母さんの雄姿を見て、居ても立っても居られなくなり。
聖女らしいことをしたい! と両手を合わせて、祈りのポーズを取りました。
「妖精さん、私の声が聞こえるなら――」
『もちろん聞こえてるよ~』
『そんなことよりはやく邪竜を倒すの~』
「……儀式だから。
ほんの少しだけ付き合って?」
『面倒だよ!』
『いつものアルシャの方が好きなの~』
お母さんを真似して儀式を行おうとしましたが。
元気な妖精さんが、じゃれついてきたので断念。
「でも……。
皆が頑張ってるのをここで見てるだけなんて」
『それなら応援して~?』
『アルシャの応援があれば、もっと頑張れるの~』
聖女の役割の本質は、堅苦しい儀式ではなく。
何を置いても妖精が望むものを差し出すこと。
それを思い出します。
「力を貸してくれてありがとうございます。
みんな、頑張って!」
『わ~い。アルシャのために頑張るよ!』
『邪竜なんて、ぎったんぎったんにしてやる~』
飛び立っていく妖精さんを笑顔で眺め――
直後、妖精さんたちによる凄まじい魔法が発動。
七色の輝きが発現すると同時に邪竜を襲い――
5分後には、跡形もなく邪竜はこの世から消滅していました。
妖精さんの本気。見るのは初めてですが、ここまで圧倒的な力だったとは。
「これが選ばれし聖女。妖精の愛し子か……」
あまりのことに、しばらくは呆然としていた兵士たちですが。
「やった~!
聖女様がやって下さったぞ~!」
「助かったんだ~!!」
「うおーーー!」
やがて巻き起こるのは、兵士たちの雄叫び。
こうして、国に訪れた大災厄は防がれたのでした。
◇◆◇◆◇
「なぜ、あの金喰い虫がここに?」
一方、その様子を影で苦々しく見ていた人物がいました。
魔法の研究を推し進め、自らの手柄としていた宰相とその息子。
そして宰相の支持する第三王子。
「たまたま我々の開発した魔法具の調子が悪かったにすぎん。
所詮、奴は祈る真似事をしたにすぎん!」
カアッと目を見開く宰相。
「なぜあんな見え見えの芝居に引っかかるのか。
結局、邪竜を倒したのも奴ではない、どこからか現れた魔法だったではないか!
聖女の力なぞ噓っぱちだ!」
ブツブツと機嫌が悪そうなガマガエル顔の宰相に、息子も相槌を打ちます。
「どうするんだ?
兵士たちは、聖女の祈りとやらをすっかり信じ切っているようだぞ?」
「目を覚ましてやるためには仕方ない。
かくなる上は――」
不安げな王子を安心させるように。
ガマガエル顔の宰相は、ニタァと気色悪い笑みを浮かべたのでした。
こんな緊急事態にも関わらず、堂々とした美しい佇まいで。
――やっぱりお母さんはカッコイイ!
妖精の愛し子と呼ばれても。
妖精さんとお喋りして全部お任せ~、なんてかっこよくない!
お母さんの雄姿を見て、居ても立っても居られなくなり。
聖女らしいことをしたい! と両手を合わせて、祈りのポーズを取りました。
「妖精さん、私の声が聞こえるなら――」
『もちろん聞こえてるよ~』
『そんなことよりはやく邪竜を倒すの~』
「……儀式だから。
ほんの少しだけ付き合って?」
『面倒だよ!』
『いつものアルシャの方が好きなの~』
お母さんを真似して儀式を行おうとしましたが。
元気な妖精さんが、じゃれついてきたので断念。
「でも……。
皆が頑張ってるのをここで見てるだけなんて」
『それなら応援して~?』
『アルシャの応援があれば、もっと頑張れるの~』
聖女の役割の本質は、堅苦しい儀式ではなく。
何を置いても妖精が望むものを差し出すこと。
それを思い出します。
「力を貸してくれてありがとうございます。
みんな、頑張って!」
『わ~い。アルシャのために頑張るよ!』
『邪竜なんて、ぎったんぎったんにしてやる~』
飛び立っていく妖精さんを笑顔で眺め――
直後、妖精さんたちによる凄まじい魔法が発動。
七色の輝きが発現すると同時に邪竜を襲い――
5分後には、跡形もなく邪竜はこの世から消滅していました。
妖精さんの本気。見るのは初めてですが、ここまで圧倒的な力だったとは。
「これが選ばれし聖女。妖精の愛し子か……」
あまりのことに、しばらくは呆然としていた兵士たちですが。
「やった~!
聖女様がやって下さったぞ~!」
「助かったんだ~!!」
「うおーーー!」
やがて巻き起こるのは、兵士たちの雄叫び。
こうして、国に訪れた大災厄は防がれたのでした。
◇◆◇◆◇
「なぜ、あの金喰い虫がここに?」
一方、その様子を影で苦々しく見ていた人物がいました。
魔法の研究を推し進め、自らの手柄としていた宰相とその息子。
そして宰相の支持する第三王子。
「たまたま我々の開発した魔法具の調子が悪かったにすぎん。
所詮、奴は祈る真似事をしたにすぎん!」
カアッと目を見開く宰相。
「なぜあんな見え見えの芝居に引っかかるのか。
結局、邪竜を倒したのも奴ではない、どこからか現れた魔法だったではないか!
聖女の力なぞ噓っぱちだ!」
ブツブツと機嫌が悪そうなガマガエル顔の宰相に、息子も相槌を打ちます。
「どうするんだ?
兵士たちは、聖女の祈りとやらをすっかり信じ切っているようだぞ?」
「目を覚ましてやるためには仕方ない。
かくなる上は――」
不安げな王子を安心させるように。
ガマガエル顔の宰相は、ニタァと気色悪い笑みを浮かべたのでした。
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