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4. ヒロイン

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 ――その隙をついて、確実に仕留める。


 そんな決意とともに、私は2人のプレイヤーを見つけた方向へ向かう。


「6番のプレイヤーだね。エミリーだったっけ。
 こんなところでなにをしているんだい?」


 うちに潜む狂気を隠したまま、とろけるような甘い笑顔を浮かべてエルヴィスはエミリーに声をかけた。2人の会話に耳を傾けながら、私はこっそりと木の陰に隠れて様子をうかがう。エルヴィスの問いに対してヒロインの返しはーー


「やった、人に会えました!」

 という無邪気なものだった。

「私の条件は誰かと48時間以上ともに行動する、なんです。
 他のプレイヤーのと知りあえたのは幸運でした!」


 ニコニコと無邪気にしゃべり続けるヒロイン。


(ばかめ。それは罠回答だ、負けイベントのはじまりだ!)

 誰しもがドキッとするような無垢な笑みだが、エルヴィスは残念ながら普通の感性をお持ちではない。ちょっとイっちゃってるので、何の効果もないのだ。
 それどころか、エルヴィスはこう考えるのだ(原文ママ)

(なんだこのアホ女は。なぜこんなやつがゲームに参加している?
 幸運だ。とりあえず殺っておくか……)

 やつに愛などという感情はないのだ。殺せそうか殺せなさそうか、ただその2拓があるのみ。


 ここまで、理想通りの展開である。
 エルヴィスがヒロインを殺した瞬間を見計らって――私も動く。


 気づかれないように、それでも確実に相手を葬れる威力を込めた魔法を撃つために。私は密かに魔力を練り上げた。得意の火の魔法は、防御すら許さず敵を焼き尽くす。
 
 そんな状況だったが、エルヴィスはいきなりこちらを振り返ると、木の陰で隠れる私に対して氷塊を放つ。


(ちっ、気がついてたのね)


 巨大な氷の塊が迫ってくるのを目の当たりにしても、私はあわてることなく手をかざしてシールドを展開。飛来する氷の塊を打ち落とし、エルヴィスに向き直る。彼もこちらを警戒しているのか鋭い視線を向けてきた。
 そして「え、え?」とキョトンとすっとぼけたアホ面を見せるヒロインちゃん。可愛い。


「貴様、この女の仲間か?」

(気がつかれていたとは、甘く見過ぎたかな。予想外よ)

 間違いなく警戒された。ただでさえこちらは全員を相手取る必要があるのだ。警戒心を持たれた相手を取り逃すのは、まずいなんてものじゃない。


 ――ここで確実に殺る

「これから死ぬものに、答える必要がありまして?」

 相手は暗殺者だ。いくら根本的な魔法技術で優れていようにも、相手を殺めるための技術・手段は、ただの令嬢である私よりも相手の方が上だろう。決して油断はしない。


「今回のゲームには、こんな骨のありそうな奴らが居たとはな。
 メインディッシュは最後までとっておく主義でな。殺すのは最後にしておいてやるよ」


 やる気満々だった私に対して、エルヴィスはあっさりと撤退を選択した。エルヴィス目線、私はヒロインちゃんと組んでいるように見えたのだろう。


(エルヴィスは徒党を組むようなタイプじゃない。
 放っておくと、一番やばいのは間違いなくこいつ!)

 ヒロインことエミリーが使う支援魔法は、本当に凶悪なのだ。「キャラクターへの好感度に応じて効果が上がる」というチート性能のバフは、特に物語が終盤になるにつれて公認チートの私でも太刀打ちができない驚異となりうる。確実にここで仕留めなければならない。


 ヒロイン・エミリー。プレイヤー・6番、解毒条件は【48時間以上誰かとともに行動する】というもの。私は警戒心を緩めずエミリーに向き合う。

 これまでにないチャンス。
 生き残るためには殺れ。同年代の可愛い女の子が相手でも……殺らなければ、最終的にはやられるぞ。私は自分自身に言い聞かせ、魔法を放とうとする。
 しかし……



「ティアナちゃん!
 助けてくれてありがとう。こ、こわかったよ~!」
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