猛焔滅斬の碧刃龍

ガスト

文字の大きさ
上 下
112 / 129
1章【地獄のスパルタ訓練編】

第111話・“魔力の質”

しおりを挟む
 幼女と魔王は今日、魔王城(ここ)を空けているらしい。
 ティガから聞いた話だと、“面倒事”を避ける為に人類の偉い人と会議をしにいったんだとか。
 しっかし、気掛かりな点が多い。
 この世界での魔王は人類の敵って扱いだったし、すんなりいけるとは思えないんだが⋯⋯。
 まぁ俺が深く関われる案件でも無さそうだし、気にしたトコで頭が痛くなるだけか。
 折角鍛錬の休憩時間なんだし、今はアインヘルムの“授業”に専念しよう。
 
「──で、ここまでの話で何か質問はあるか?」
「あ~⋯じゃあ、1つだけ」
「何ィ? 俺様のチョー丁寧な説明を聞いて、理解出来なかったってェーのか!? エェ!?」
「ゑッ!? ちょま⋯⋯ぐええーーっ!!」

 フロントチョークを決められた俺は、潰れたカエルの様な悲鳴をあげる。
 いやマジで苦しい⋯⋯というか死にそうなんだが、誰か助けてくれる奴いない?

「ったくよぉ、ヒトの話はちゃーんと聞いとけよな?」
「す、スマン⋯⋯ちょっと専門用語が多すぎて⋯⋯。
 何かの例を上げて説明して貰えると、助かるんだが⋯⋯」
「あァ?? オメーちょっと欲張り過ぎなんじゃあねぇかァーー!?」
「ぐえああーーーーッ!!」

 再び締め上げられ、俺はのたうち回る。
 結構派手にジタバタしてるつもりんなんだが、コイツときたらピクリとも動かない。
 ギルルもそうだが、パッと見はパワータイプじゃない奴ですら俺より筋力は上らしい。
 まぁ“魔王幹部”って肩書きがダテではないのは理解できるが、ハッキリ言って悔しいのがある。
 圧倒的な技術によって抑え込まれるのはいいんだが、純粋な筋力で負けてるとなるとな⋯⋯。
 雄(おとこ)としては、流石に傷付くモンがあるぜ。

「──全くよぉ。お前から言い出したんだろ?
 『魔力の扱いについて学ばせてくれ』ってなぁ。
 ギルルとの鍛錬の休憩時間を使ってまで、俺にソレを言いに来た所は認めてるやるが⋯⋯」
「⋯⋯すまない。思ってたより、俺が未熟だった。
 だが、これもオーガを倒すのに必要だと考えている。
 阿呆を相手に苛立ちもあるだろうが、頼む⋯⋯!!」
「ハッ、ガッツだけは大したヤツだぜ。──で? ドコのナニが聞きてぇって?」
「あぁ、それなんだが──⋯」




「⋯──って、所だ」
「おう、“魔力の質”の話だな」
「そう、それだ。そこがイマイチ理解が追い付かない」

 ──“魔力の質”。 
 バルドールと迎撃戦で再開した時、テュラングルと魔王城で再開した時⋯⋯。
 2人ともそんな単語を言ってた気はするが、抽象的な表現でよく理解出来てないのがあるんだよなぁ。

「魔力の質ってぇのは、所謂(いわゆる)『魔力の密度』の事だ。
 この星の全ての生物は魔力を持ってるワケだが、それぞれ所有している魔力の量は違う。
 そして、基本的には図体がデカい分、ソイツの魔力の所持量は多くなるってのがある。そこは分かるな?
 だが、例えばそこら辺の成体のレッドドラゴンとお前を比べた時、魔力量ってのはお前の方が多いだろ?」
「⋯⋯確かに。逆に俺より小さい奴でも、魔力が多い奴はいるな。アンタらとかもそうだし」
「そうだ。つまりは、“体内にある魔力の密度の違い”が“魔力の質”の正体だ。
 同じ魔力量だとしても、それを所持している肉体の大きさによって、魔力の密度は変化する。
 そして、その魔力の密度が高ければ高い程、強ぇヤツって事だな」

 な、成程⋯⋯そういう事か。
 確かに、幼女も似た様な事を言っていた気がするな。
 炭素が魔力だとすれば、その状態がダイヤモンドに近付く程に“魔力の質”は上がるって訳だ。

「──ただし、当然の事だが、魔力ってのは種族や成長段階によって“肉体の許容量”がある。
 まぁ、肉体強度に見合わない密度まで高めたり、または摂取したりすると死ぬってワケだ」
「⋯⋯つまり、“魔力の致死量”って事か?」
「ホォ、いい例えだな。その通りだ。
 しっかりとした肉体の強度⋯⋯。言うなれば、“下地”を作った上でなきゃあ、ダメって話だな。
 そして、それに関しては、“肉体強度を上げるのも、また魔力”というワケになる。
 『余程のイレギュラー』が無い限りは、普通に鍛錬を積めば普通に強くなれるってこった」

 余程のイレギュラー、か⋯⋯。
 テュラングルに角を貰った時の事を思い出すぜ。
 恐らくだが、“魔力の致死量”に達する何歩か手前の現象が、“魔力中毒”という訳だろう。
 1度経験した身だが、結構危なかったんだなぁ。

「⋯⋯っと。そろそろ、ギルルとの鍛錬に戻るか。
 ありがとうな、アイン。今後もしばらく世話になると思うし、宜しく頼むぜ」 
「ハッ。その代わりに、オーガをぶっ殺せなかったら覚悟しとけよ?」
「──勿論だ。そんじゃあな!」

 アインヘルムに手を振り、俺はその場を後にする。
 なんというか、やっぱりこの魔王軍ってのは良い奴が多いらしい。
 ゼルもティガもアインヘルムも。その内、ギルルやグレンデルとだって笑って話せる様になりたいぜ──⋯
 

NOW  LOADING⋯


「⋯⋯何ニヤニヤしてんだよ」
「ヘヘッ、聞いたか? “アイン”だってよ?」

 猛紅竜が去った後、ティガがアインヘルムの背後かわ現れる。
 アインヘルムの隣に並んだティガは、上機嫌な様子で彼の肩に腕を回した。
 
「おもしれぇヤツだよなぁ、アイツ」
「まぁ、な。自分の成長の為なら、意外と手段は選ばないタイプかもしれないぜ」
じゃあねぇよ。⋯⋯似てると思わねぇか?」
「誰にだ」
「なぁんだよ、ツレねーなぁ。分かんだろ?
 俺らのボスも、昔あんな雰囲気だったなってよぉ」
「ハッ。バカ言うなよ、ティガ」
 「ンだとぉ?」
 


「──魔王サマは、今も昔も変わんねぇよ」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

スキル喰らい(スキルイーター)がヤバすぎた 他人のスキルを食らって底辺から最強に駆け上がる

けんたん
ファンタジー
レイ・ユーグナイト 貴族の三男で産まれたおれは、12の成人の儀を受けたら家を出ないと行けなかった だが俺には誰にも言ってない秘密があった 前世の記憶があることだ  俺は10才になったら現代知識と貴族の子供が受ける継承の義で受け継ぐであろうスキルでスローライフの夢をみる  だが本来受け継ぐであろう親のスキルを何一つ受け継ぐことなく能無しとされひどい扱いを受けることになる だが実はスキルは受け継がなかったが俺にだけ見えるユニークスキル スキル喰らいで俺は密かに強くなり 俺に対してひどい扱いをしたやつを見返すことを心に誓った

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

処理中です...