猛焔滅斬の碧刃龍

ガスト

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1章【地獄のスパルタ訓練編】

第98話・終わりの始まり

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「──やはり、お前だったか」
「⋯⋯ッ!!」

 俺は圧倒されていた。
 目の前のソイツが、物凄い剣幕で俺を見ていたからだ。
 確かに、、いつも不機嫌そうな顔をしている奴だったが⋯⋯。
 今日の所は、そんな顔をしている原因が特別そうだ。
 
「──なぁ、テュラングル?」
「⋯⋯なんだ」
「その、頭のタンコブどした?」
「⋯⋯⋯⋯。⋯⋯気にするな」

 むう、久し振りだっつうーのにシケた奴だ。
 まぁこうしてまた顔を合わせられただけ、良しとするか。
 ⋯⋯しっかし、相も変わらずスゲェ存在感で感心させられるなぁ。
 俺も成長したら、あんな風になれるのだろうか。

「──時に紅志よ。貴様、随分と成長した様だな?
 魔力の質や量もそうだが、肉体もかなり強靭なものになっているぞ」
「あぁ、分かるか?  そうなんだよ。
 最近、朝昼晩とエグい量の飯を食わされててな。
 全く、成長するなって方が難しいくらいだぜ⋯⋯」
「成程、それなりの苦労があるようだな。
 だが、肉体を強くする上で、食事とは極めて重要な行為。
 疎かにしてはならぬぞ?」
 
 俺の肩を叩き、テュラングルは此方の顔を覗く。
 オメーはトーチャンか! とでもツッコミたい所だが、真面目なトーンで言われたから言い難い。
 やれやれ。折角の休憩時間なら、ジョークでも言ってリラックスしたかったぜ。
 
「──よォし。続きをやるぜ、紅志」
「ッシ⋯⋯」

 ティガの呼び掛けに応じ、俺はストレッチをする。
 肩や脚、腕の体操を済ませた俺は、深く呼吸をした。
 ──そして、その直後。

「はぁッ!!」

 ドンッ! と音を響かせ、俺は炎装形態に移行する。
 今まで、特訓は“基礎体力の向上”が目的だった為、炎装の使用は禁止されていた。
 だが、つい先日。
 『そろそろ特訓のレベルを上げよう』と幼女が言ったのがきっかけで、こうして使える様になったワケだ。
 ⋯⋯ぐふふ、やっぱりそうでなくちゃな。
 
「へへッ。どうだ、テュラングル?」
「フム、中々の力ではあるが⋯⋯」
「あるが?」
「──いや、気にするな。鍛錬を続けろ」

 う~ん? 妙なリアクションを見せるな。
 チェ、シンプルに褒めて欲しかったトコだったんだが⋯⋯まぁいっか。今は特訓に集中しよう。

「いくぜェ? 俺もちぃっとやる気を出すから、気をつけろよ~?」
「⋯⋯勢い余って殺してくれるなよ?」
「それは、オメェ次第だぜッッ!!」

 爆走で、ティガが迫り来る。
 即座にバックステップをした俺は、続いてティガに背を向ける。
 今なら、スタートから終了まで、1度も捕まらずに逃げ切れる気がするぜ。
 
 
NOW  LOADING⋯

 
 『虚無空間』。
 そこは、神のみが自由に行き来できる場所である。
 “世界の外側”にあるその空間は、文字通り何も存在しない。 
 ただ一面が白色で、常人では上下や左右の概念さえ見失う様な場所なのである。
 とある、1箇所をのぞいて。
 
「──ぐッ⋯⋯クソォッ!!」

 虚無空間の中心。
 無数の扉が浮遊するその場所で、オーガは声を荒らげる。
 星廻龍には逃げられ、憎き魔族に足止めされ、自身が送り込んだ転生者には裏切られる⋯⋯。
 不測の事態が連続して発生した彼の心中は、当然だが穏やかではない。
 なにより、“星廻龍の思惑”がオーガの予想通りであれば、命の危機さえ訪れる場合がある。
 神とて、1つの生命体。
 死ぬ事への恐怖しかり、神である自分がそんな感情を抱いている事しかり。
 オーガの内心は、酷く渦巻き、醜く荒んでいた。

「⋯⋯こうなっては、是が非でも炙り出してやる⋯⋯!!」

 “何か”を強く決心し、オーガは扉の1つを開ける。
 その先から差し込む光に吸い込まれる様に、彼は姿を虚無空間から消したのであった。
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