猛焔滅斬の碧刃龍

ガスト

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1章【地獄のスパルタ訓練編】

第95話・魔王幹部

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【“豪拳(ごうけん)”・ティガ 】
・好戦的かつ獰猛。
 徒手格闘を主軸とした戦闘が得意。遊撃手の役割。

「──よォこらガキ。可愛がってやるぜ~?」

 身長180cm強はある男が、俺の顔を覗き込む。
 額の、折れた・もしくは切断された一本角の跡が特徴的なヤツだ。
 ぶっちゃけた話、魔王より全然こえー気がするぜ。
 筋肉はムッキムキだし、髪型はガチガチのマンバンだし。
 顔面も、今まで出会ってきた誰よりも話が通じなさそうな顔付きしてやがる。

 格好は⋯⋯なんだコレ?
 黒い上着みたいな──服に見える──外殻(がいかく)が形成されているな。
 上半身は裸で、それはまぁ見事な筋肉が露出しているが⋯⋯下はちゃんと着ているな。
 アレみたいだ。あの、土方の人がよく履いてる⋯⋯アレ。(※ニッカポッカ)
 全体的に見てみると、喧嘩番長みたいな雰囲気だ。
 付け加えるなら、膝と肘、そして肩に大きな棘の様なモノが生えているって感じだな。
 仮に戦うとしたら、膝蹴りや肘打ちは受けたくないぜ。

【“暴魔(ぼうま)”・アインヘルム】
・ティガ同様、好戦的。
 魔力の操作に長け、また魔法の使用も極めて得意。

「──使えなかったら、承知しねぇぞ」

 今度は、ティガより少し小柄な男が此方を見る。
 アインへルムこいつは、ちゃんとした一本角が生えているな。
 格好としては、やはり外殻(がいかく)が衣服の様に変化したモノに身を包んでいる。
 ただティガと違って、彼はロングコートみたいな形状だ。
 しかも、所々に銀色の装飾(そうしょく)まであるぞ。
 そこら辺のディティールは、自由に変化させられるのだろうか? いやはや面白い。
 こうして見てみると、真っ黒な肌や角といった部分を除けば、かなり個体差がある様だな。

【“我楽流(がらる)”・ギルル】
・好戦的な他幹部と比べると、温厚な性格。
 “ガラルギルル”と呼ばれる事も。

「──⋯⋯。」
「あのう??」
「⋯⋯zzZ⋯⋯zzZ」

 いや、寝てるんかーい!
 “我楽流”って、「やりたいようにやる」ってワケね!
 おっけー分かった! そのまま寝ててくれ!
 コッチはコッチで、見た目の把握だけ済ませられればモウマンタイだから!
 えっーーっと? さっきと2人と一緒で、パーカーみたいな外殻なのねーー!!
 随分とブカブカじゃないですかねー!? 身体の一部なら、そこら辺の調整は出来なかったですかーー!?
 あと、フードも込みで外殻なんですねーー!! 結構便利そうですねーーーっ!!

「お前、顔が五月蝿(うるさ)いな」
「アッ──。すいません⋯⋯」

 「起きてたんですね」というセリフを飲み込み、俺はぺこりと頭を下げる。
 雑魚だ、小物だと笑われてもいいさ。
 コイツらの機嫌を損ねて、反撃する間もなく殺されるよりはな。

「──コイツらが、ウチの幹部達だ⋯⋯つっても、幹部なんて名前だけだけどな。
 魔王“軍”ってのは、人間共が勝手にそう呼んでるだけだし。
 “組織”つうよりかは、単なる“集団”なんだよ。俺を中心とした、な」
「⋯⋯中心とした」
「おん? 何だ?」
「いいえ、なんでもありません⋯⋯」
 
 ──あぁ、この魔王って男、悪ヤツじゃないな。
 部下にあれだけ低姿勢でこられて尚、自分を“トップ”ではなく“中心”と表現しているんだ。
 少なくとも話は通じるし、根が悪人という事は決してないだろう。
 格下の──という表現でも足りない──俺に対する接し方としても、排他的なものではないし⋯⋯。
 幼女が「気さく」と言っていたのも、大いに頷けるな。

「ウチの幹部は四人なんだが、もう一人がさっきのアイツだ。グレンデルって奴を見たろ?」
「あぁ、今オーガを足止めしている──」
「いや、丁度帰ってきた。アイツも紹介しておこう」
「はい⋯⋯?」

 帰って⋯⋯きた? 帰ってきたって!?
 彼にオーガを任せてから、俺が此処にくるまで、まだ10分も経っていないのにか!?
 幼女が相手になっていたレベルの相手を、いくら魔王幹部とはいえ、もう撃退を⋯⋯!?

「──申し訳ございません。遅くなりました」
「いいや、よくやってくれたぞ。
 紹介するぜ、紅志(あかし)だ。あのクソジジイをブチ殺せる力をつけるまで、付き合ってやれ」
「⋯⋯⋯⋯。かしこまりました、魔王様」

【グレンデル】
・人間を極端に嫌う。
 生粋の魔族。

「⋯⋯チッ。魔王様の命令だ。
 事 が 済 む ま で は、付き合ってやる」
「あ⋯⋯どうも、よろしく⋯⋯」
「『よろしく』だと⋯⋯? 貴様、勘違いするなよ?
 俺にとって、貴様の一問一答、一挙手一投足の全てか不快だ。馴れ合うつもりは無い。
 事が済んだら、そのまま死ね」

 ⋯⋯⋯⋯本能は凄いな。
 これだけ見下されれば、多少なり反論や怒りが湧いてくる筈だ。
 それなのに、コイツを前にした俺ときたら。
 全く、微塵も、何も、湧いてこない。
 言われた言葉を、頭が勝手に受け入れてしまう。
 こんなの、魔王なんかより余っ程恐ろしい奴じゃないか。

「まぁ、落ち着けグレンデル。
 ──兎に角、事情が事情だ。お前には、とことん付き合ってもらうぞ」
「はい⋯⋯」
「じゃあ、後は任せたぞ」
「「「「仰せのままに」」」」
「おっけい♪」
 
 命令を下し、魔王は広間を後にする。
 アリアが残ってくれたのが、唯一の救いだった。

「──んじゃ、始めちゃおっか!」
「待て、アルノヴィア。貴様には言う事が⋯⋯」
「ゴメンて。いや、ホント」
「舐めているのか⋯? お前は魔王様の善意を──」

 幼女に突っかかるグレンデルを背景に、俺は顔を覆う。
 かくして始まった、“打倒オーガ”を目標とした訓練は、「地獄のスパルタ訓練」として、以降の俺の記憶に焼き付く事となる。
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