88 / 108
1章【真実編】
第87話・ロリとショタ、そしてショタ
しおりを挟む「言っとくけど、30分も居られないからね?」
「分かってる。少し、見て回りたいだけだから」
逸る気持ちを抑え、俺は小刻みに頷く。
何故だか、あの村へいち早く行ってみたい欲求が湧いてくる。
自分でも理由は分かんないが、一つだけ言える。『俺はこの村が好き』という事を。
「それじゃあ早速──」
「あぁっ。ちょいちょい、待って待って」
「⋯なんだよ。30分も留まれないんだろ?」
「『その姿』のままで村に入る気?」
幼女に言われ、俺は自身の身体を見てみる。
うむ、今日もしっかりとグレイドラゴンだな。
⋯あぁ、成程。
べルトンやクローネの時と違って、今は俺が安全だという証明してくれる人が居ない。下手に村人達を刺激してしまうのは、宜しくないってワケか。
「こうなったら、下手に出て無害をアピールするしか無いな」
「いや。遠くからドラゴンが近付いて来たら、例え幼体だとしても警戒するでしょ」
「徹底的に下手に出るんだよ。匍匐前進しながら、こんにちわーって」
「ダメ。ここは私が──。⋯待って、匍匐前進?w」
言葉を区切り、幼女が俺の顔を見る。
どうやらツボらしく、『何言ってんだ』的な表情を浮かべつつどんどん口角を上げていった。
「あ、アハハ!ほふく!匍匐前進って!」
「そうそう。こんな風に⋯⋯」
「や!やらなくていいから!モゾモゾ動くのキモイって!ww」
うぅむ、変なトコに笑いのツボがある奴だな。
まぁ⋯ジョークで笑ってくれるのは嬉しいから、別にいいが。
⋯⋯うむ。それはそれとして、いつまで笑ってんだコイツ。
「──それで?幼女。さっきなんて言おうとしたんだ?『私が』の続きを聞かせてくれ」
「けほっ。笑い過ぎてむせた、ちょっと待って」
「( ´д`)ハァ⋯」
「ン"ン"っ!あ~笑った。⋯で、なんだっけ?」
喉を鳴らし、幼女は腰に両手を当てる。
俺が唇を固めて片眉を吊り上げて見せると、幼女は『てへ♪』と笑みを浮かべて顔を傾けた。
「まぁ、今のは冗談として。あの村に入るにあたって問題なのは、今の君の姿。そして、今の君ではそれを解決できないって事だ」
「姿って言われたってなぁ。変える事も出来な──」
その時、俺は気が付いた。
目の前の『星廻龍』と名乗った存在が、幼女の姿をしている事に。それが意味するのは、つまり⋯⋯
「気付いたようだね。そう、やろうと思えば出来るんだよ。
『人の姿になる』っていうのが」
「⋯マジか。もっと早く知りたかったぜ」
「いや。どちらにせよ、私が『擬人化』と呼んでいる能力を今の君が習得するのは難しいんだ。“魔力の動かし方”が複雑だからね」
「そうなのか?じゃあ、どうするって──」
と、俺が言いかけた時、幼女の姿が消えた。
⋯⋯って、いやいや。なんだ今のは?高速移動だとかワープだとか、そんかチャチなもんじゃあ断じてない。もっと恐ろしいものの片鱗を味わった気がしたぞ。
(おーい!ここ、ここ!ここにいるよー!)
どこからとも無く、幼女の声が響く。
それと同時に、俺の脳裏にデジャヴの予感が走った。
「ヒトの頭ん中に、勝手に入らないでもらえるか⋯?」
(こうするしか無いし、仕方無いじゃん)
〖──え!!誰キミ!!ここ僕の部屋なんだけど!?〗
おう、お前は最悪のタイミングで起きてくるな。
それと、人の頭の中に自分の部屋を作るな。
(んん??君こそ誰よ?)
〖僕?僕は僕だよ。この身体のホントの主さっ!フフン!〗
(⋯う~ん、成程。『グレイドラゴン本来の意識』って事か)
「分かるのか?」
(⋯これは、あくまで予想だけど──⋯)
⋯──オーガは、紅志を転生させる際にこの肉体を選んだ。
その時、『既に肉体にあった魂』を押し退けて、強引に『紅志の魂』を入れた。その結果、『1つの身体に、2つの意識』があるって状態になった⋯。的な事情があるんだろう。
⋯ただ、主観的に見て、このやり方はオーガらしくない。
彼なら、『新たに肉体を用意する』か、滅多に無いけど『前世の肉体のまま』で、コッチに呼び寄せるからね。
察するに、紅志は『適当に転生させられた』可能性が高い。
そもそも、『魔物が嫌い』なオーガの事だから、『魔物の転生者』という事例が無かったんだろうし。
それでも、“今の紅志”って存在がいるのなら、オーガには何かしらの思惑があったのかもしれない──⋯
(⋯──と言っても、その思惑が何かって話までは分からないんだけどね⋯)
「はぁ、そうかぁ。適当に転生かぁ⋯」
(⋯君のオーガへの敵意を煽る訳じゃないけど、彼のやり口としては、『意図的に前世で死亡』させてから転生させるって感じなんだよ。つまり、ワザと殺して手下にするって事だ)
「⋯⋯⋯そう、か」
⋯俺、前世で親を遺して来ちまったんだよな。
自分で言うのも恥ずかしいが、結構好きだったんだけどなぁ。
⋯そうか、そんな軽い感覚で人生奪われたのか。
会社の同僚とか上司とか、仲のいい友人達とかな⋯。ダチとだって、上手くやれたと思うんだけどなぁ⋯。
〖──僕は、紅志と会えて良かったよ?〗
「え⋯?」
〖あ。もちろん、紅志が『死んで良かった』なんイミじゃないからね?⋯でも、紅志と一緒にいると楽しいって思えるんだ。
だからさ⋯⋯その、僕が言いたいのは⋯えーっと⋯⋯〗
(ふふっ。転生しても、悪い事ばっかじゃないでしょ?って♪)
⋯⋯なんだそりゃ。
いきなり何を言い出すかと思えば、そんな子どもみたいな⋯。
そんな、子どもみたいな⋯⋯
〖えっ!?泣いてるっ!?ゴメンゴメン!泣かないで!!〗
(⋯いいんだよ、泣いたって。純粋で無垢な言葉っていうのは、心に染みるものだから)
「泣いてねーよ、別に。⋯早く、頭の中に入ったワケを話せよ、幼女」
空を仰ぎ、俺は深呼吸をする。
涙なんて出てないが、こうして上を向いていたい気分だ。
⋯全く、子どもっていうのは。
(⋯紅志も、強いね)
「ん、何か言ったか?」
(──ううん。⋯さて、色々始めようか)
幼女がそう言うと、俺の右手が動き始める。
それも、動かそうと意識していないのに、ひとりでに。
(少しだけ、君の身体と魔力を動かさせてもらうよ?)
「え⋯いいけど、痛いのとかは──」
その瞬間、俺の身体に異変がおきる。
まるで、全身が縮こまっていく様に、小さくなり始めたのだ。
かなりの圧迫感と息苦しさを感じるが、不思議と痛みは無い。
⋯ただ、思わず目を瞑ってしまったのはあるが。
(よしっ。取り敢えず、これでいいかな♪)
「⋯⋯終わったのか?」
(ん~まぁね~♪)
ふむ、圧迫感は残っているが、それ以外に変化は感じないな。
強いて言うなら、いつも以上に視線が低い様な⋯⋯
ん⋯?待てよ?なんだ、この違和感は?
なんか、妙に視界が狭いし⋯感じる情報が少ない気がする⋯?
⋯って、魔力感知が使えないじゃないか。
しかも、なんだか身体もヘンだぞ。
尻尾が無いせいで、バランスが取りずら──
「⋯え、」
〖わぁ。僕のチャームポイントの1つが無くなっちゃった〗
し、尻尾がない。
一体何処に消えたんだ⋯っと、なんだ?首が回しにくい⋯ぞ?
(そりゃあ、人間の首は短いからね。ドラゴンの様に、自分の全身見渡すのも難しいだろう。⋯ましてや、子どもなら)
「こども⋯?」
俺は、即座に金属を生成する。
生成速度もめっちゃ遅くなっているが、それよりも優先して確認すべき事があった。
「な、な、な──」
ガラクタの様な金属を片手に、俺は目を見開く。
鈍く反射するその金属の表面からは、見知らぬ少年が此方を覗いていた。
⋯⋯いや、待て。
俺は、『この少年』を知っているぞ?!
「なんじゃこりゃーッ!?」
灰色の髪と、碧の瞳。
美少年という言葉が似合う少年の正体は⋯
──幼き日の、俺自身であった。
1
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜【毎日更新】
墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。
主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。
異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……?
召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。
明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。
妻がエロくて死にそうです
菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。
美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。
こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。
それは……
限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
18禁NTR鬱ゲーの裏ボス最強悪役貴族に転生したのでスローライフを楽しんでいたら、ヒロイン達が奴隷としてやって来たので幸せにすることにした
田中又雄
ファンタジー
『異世界少女を歪ませたい』はエロゲー+MMORPGの要素も入った神ゲーであった。
しかし、NTR鬱ゲーであるためENDはいつも目を覆いたくなるものばかりであった。
そんなある日、裏ボスの悪役貴族として転生したわけだが...俺は悪役貴族として動く気はない。
そう思っていたのに、そこに奴隷として現れたのは今作のヒロイン達。
なので、酷い目にあってきた彼女達を精一杯愛し、幸せなトゥルーエンドに導くことに決めた。
あらすじを読んでいただきありがとうございます。
併せて、本作品についてはYouTubeで動画を投稿しております。
より、作品に没入できるようつくっているものですので、よければ見ていただければ幸いです!
【R18 】必ずイカせる! 異世界性活
飼猫タマ
ファンタジー
ネットサーフィン中に新しいオンラインゲームを見つけた俺ゴトウ・サイトが、ゲーム設定の途中寝落すると、目が覚めたら廃墟の中の魔方陣の中心に寝ていた。
偶然、奴隷商人が襲われている所に居合わせ、助けた奴隷の元漆黒の森の姫であるダークエルフの幼女ガブリエルと、その近衛騎士だった猫耳族のブリトニーを、助ける代わりに俺の性奴隷なる契約をする。
ダークエルフの美幼女と、エロい猫耳少女とSEXしたり、魔王を倒したり、ダンジョンを攻略したりするエロエロファンタジー。
漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?
みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。
なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。
身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。
一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。
……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ?
※他サイトでも掲載しています。
※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる