親子そろって悪役令嬢!?

マヌァ

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白魔法の文献編

208話『ポーション作り』

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私達は、新しく借りた宿舎の一室で、

ポーション作りを開始するために準備を行っていた。



部屋に用意したのは人数分の作業机と魔霊水の入った樽に、

乾燥ハーブ類だ。

ポーション瓶は、ホットネン伯爵が商品として運んできた治療用の薬瓶を

使用する事にした。

蓋にはコルクを使う。



それらをテキパキと机に並べる。





「ベリアル様、魔法陣の作成をお願いします。

 マリク君は、トープ草を乾燥させたものを魔霊水で煎じるのをお願いします。

 ナナリーは、マリク君が作った煎じた魔霊水を

 この薬瓶の半分まで全部に流し込んでください」



トープ草とは、毒に効く薬草の事だ。

匂いはドクダミに似ているけれど、色が茶色で

こちらではトープ草と呼ばれている。

3人は私の指示した通りに動き出した。



マリク君は暖炉の前で作業を。



ナナリーは私がお手本で作ったトープ草の煎じ湯を

薬瓶に丁寧に注いでいる。



ベリアル様は手早く魔法陣を描きおえて、ナナリーの注いだ薬瓶を

魔法陣の上に並べてくれた。



1つの魔法陣に並べられた数は5本だ。





「エミリア、そんなに一気に作っても大丈夫なの?」





と不安げにナナリーが問いかけてきた。

5本は普段作っている数よりは少なめだ。

いつもは10本一気に作っているので、ナナリーが心配している内容が

ちょっと理解できなかった。



「5本は普段作っている数より少なめですので大丈夫ですよ」





「えっ……!?

 でも、午前中は2人治療するだけで疲れていたじゃない?」





そういえば、私の特性についてナナリー達に詳しく話して無かったことを

思い出した。





「そういえば、言ってませんでしたね。

 私の魔法は少し特殊でして、魔法を直接かけるよりも、

 ポーション等に付与したほうが魔力消費が少ないのです。



 患者に1回の治癒魔法をかける魔力で10本分の魔法薬ができます。

 ちなみに、魔法薬の効果は1人に集中して治癒する効果と同等です。



 メリットは多くの特化ポーションを沢山の人に配れる点ですね。

 デメリットは、あくまで特化ですので、裂傷と毒の場合は

 毒のポーションと治癒のポーションを服用しなければいけない点です。



 違う種類のポーションを同時に服用すると、

 どちらかの症状が回復しにくくなるというデメリットがありますので

 この場合は私が直接治癒したほうが早い場合もありますね」







私は、自分の特性についてナナリーとマリク君に詳しく説明をした。





「ちなみに特性というのは、先ほど説明した状態異常の付与の特性です。

 私の魔力は治癒や状態異常系回復の効果を

 付与することができるというものです」


相手の治癒能力を向上させ、自己治癒能力を高める効果もあることなどを

含めて説明した。

治癒の力をじわじわ使う事で、ゆっくりとだが、毒や火傷、

裂傷や打ち身、骨折などを回復できる、万能治癒力であること。



それを特化に使い分けもできる。

解毒特化、火傷特化という具合に。





「便利な能力ね」





「そうですね……

 ですが、万能治癒自体も本当の意味では万能では無いのです」





そう、万能ではない。

砦の患者の治療の時にナナリーの力を借りたのは、

この特殊な治癒魔法のせいでもあるともいえる。

いくら自己治癒を向上させられるとはいえ、相手が弱っていては

意味を成さない。

即効性の回復魔法の使い手であるナナリーの治癒の力があったからこそ

私は炎症特化の治癒に専念できたとも言える。



コルトの街のお母様の時はポーションを先に飲ませてから治療を行った。

アリエ様が手を貸してくれなかったら、本当はどうなっていたかもわからない。

魔力がカラッポになるまでの全力での治療だったのもあって

お母様を助けられたのは本当に奇跡だったとしか言いようが無かった。





「なので、私の治癒魔法は便利のように見えて、

 実は、体力の少ない人にはあまり使えない代物なのです。

 ナナリーがいてくれて、本当に助かりました」





私の微笑みを受けて、ナナリーは真っ赤になってアタフタしだした。


「そっ、そんっ……、わ、私とエミリアの力なんだもの!

 助かるのは、と、とうぜんでしょ!」





何この子、ツンデレか!?

ますます可愛く見えるナナリーに私は胸キュンした。





「2人共、手が止まっているぞ」





おっと、ベリアル様に叱られてしまった。

良く見ると、机に並べられた魔法陣の数と煎じたポットの数が増えていた。



私達は話をやめて、ポーション作りに集中した。

まずは5セット作った。

作ったポーションをすぐに井戸に持っていき試した結果、

なんともアッサリ、毒の浄化に成功した。



井戸の底に溜まっていた毒素も無くなっていると

マリク君の魔力視のお墨付きもいただいた。



残りの4本は患者さんに飲ませて解毒を行う。

こちらもアッサリと解毒に成功した。



これには医師の皆さんも驚いていた。



砦の管理官に頼まれて、患者全員分の解毒のポーションを作るようにも

お願いもされた。

こちらは、もともと全員分作る予定ではあったし、

ホットネン伯爵の提案もあり、回復のポーションも少しだけ常備用を作る

事も含めて、話を通したりもした。



それから午後からはずっと

ポーション作りにいそしむ事になったのであった。
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