親子そろって悪役令嬢！？

白魔法の文献編

２０５話『砦の現状 5』

砦で治療生活を始めて4日、私達はそれぞれ砦で忙しく奔走していた。



マリエラは実父と連絡を取りつつ、ハイライト王国の情勢を探っていた。

リーテ様とコンラート様については、砦の警備やら馬の世話やらと

あちらはあちらでいろいろ忙しそうだった。



新しく砦に齎もたらされた情報としては、

明日、エドワード兄の指揮する兵士と

コルニクス兵の混合軍が砦に到着するという話だった。



なんと、怪我を負った最後の魔物の討伐に成功したそうだ。

なんでも魔物はこの砦近くに潜んでいたらしい。

討伐時に負傷した兵士もいるらしく、場所的に近い砦に

向かっているということだった。





そして、私とベリアル様、ナナリーとマリク君はというと……

2日目の午前は救護班と砦の医師達と話し合いを行った。

私達の実力の程で担当場所も決めていった。

当然ではあるけれど、状態段階2～3の患者の担当だ。



あとは、私たちが到着するまでの砦の現状を詳しく聞いたりもした。



1日目の女性医師に関しては、ほぼナナリー達が話した状態と一致していた。

彼女の親族が勤務していて、重度の症状で医師達に「殺して欲しい」と

頼んだそうだ。



最初は聞き届けなかったそうだ。

必死に治療を施し、それでも手に負えない患者……

彼女の弟を彼女は自らの手で下したということだった。





「何故もっと早く来てくれなかったの！

　貴女立ちが早く来ていれば、私は、弟を……」



と責められもした。

だけど、私は何も言えなかった。

遅れてきたのは事実だったし、ナナリーとマリエラの話を聞いたから……


「彼女も、自分があなた方を責める資格は無いことは分かっているのです。

　ただ、心の整理がつかないだけで……」



他の医師の言葉に頷く。



分かってはいても、やっぱり面と向かって言われると辛い。



だけど、私達の中ではナナリーが一番辛そうではあったけれどね。

乗り物酔いこの場合は馬酔いさえなければと思っているのかもしれない。



会議の後、別室でマリク君に胸を貸して貰って泣いているのを

見てしまったからだ。



私はこのことを胸に留めた。



そして、意識を切り替える。

まだ助けられる人は沢山いるのだから。



2日目の午後、3日目とめまぐるしいほど兵舎を駆け回った。



4日目には中軽症患者の治療もほぼ完了したのだった。





あとの事は救護班の医師と砦の医師達に任せて、

私達はマリエラに教えてもらった新しい病気の患者についても、

その症状を診察した。

なんと、医師達含めて患者が増えていた。



治療を施す医師達から詳しく病状について聞いた。

いろいろな魔法を試したところ、まったく効き目が無いということだった。

自然に治ったものはいまだおらず、嘔吐を繰り返す患者を清潔に保つ事しか

出来ない状態だったという。



医師達の説明も踏まえていろいろ試した結果、

この病気にかかった者達には私の治癒魔法しか効果がなかった。

それも毒特化の解毒の治癒魔法だ。

2人治癒するだけでくたくたになる始末だった。



とりあえず、一番重症の患者を治癒した後は、兵舎を詳しく調べる事にした。

毒の原因を調べなきゃいけないもんね。



患者の一員となってしまった医師の話も聞いた。

この兵舎で普通に過ごしていたところ、病にかかったという。

前々日に井戸の水を加熱して料理に使ったといっていたので、

私達が一番怪しいと思ったのは、もちろんこの井戸の水だった。



そして、兵舎を細かく調べて分かった事があった。



発症した原因は食中毒であること。

そして予想通り、原因は水。

ハイライト王国側に備え付けてある井戸の水が原因であることまで

いろいろと調べる事ができていた。

私達の読みはあたっていたのだった。