親子そろって悪役令嬢!?

マヌァ

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白魔法の文献編

190話『ヒロイン達の苦難 5』

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※ナナリー視点です。 エミリアよりナナリーが主人公してる件。




テントの外では、パイプテントに傷だらけになったリーテさんと

板で運ばれる途中のマリク君の姿があった。

リーテさんは、イスに座らずに右手を押えて、コルニクス公爵と話をしていた。



(リーテさんは無事だ)



ホッとした私は、マリク君が運ばれたテントへ向かう。



マリク君の姿は、シンシアに近しい状態だった。

複数人の医師の人がマリク君の体に治癒魔法を使っていた。



私は近くにいた医師の人に声をかけて、手伝いを申し出る。

医師の人たちは快く了解してくれて、一緒に治療を施した。



3人の医師が炎症を抑え、私が傷を癒し、1人の医師が発疹の治療をしていく。

私の治癒の魔法の協力で、すぐにマリク君の傷は塞がっていく事に、

医師達は驚いているようだった。



5分もかからずに、マリク君の治療は終わった。



顔色もよくなり寝息を立てるマリク君の頬を触ると、ほんのり暖かかった。



安心した私は、さっきリーテさんを見たときに、

治療していない常態だったのを思い出して、テントの外に出る。





私はリーテさんに近寄った。



「リーテさん! 大丈夫!?」



私は、周りを気にせずに治癒魔法を使った。



「ナ、ナナリー……さん……

 す、すまない。 彼は、無事だろうか?」



一瞬驚いた表情になったリーテさんは、私に問いかけた。



「マリク君の治療は終わりました」



「そうか……。

 マリク殿の事は、本当に申し訳ない。

 私の力不足だった」



俯いたリーテさんに、私は疑問を覚えた。



「リーテさん、エミリア達は?」



「その事についてだが、今コルニクス公爵に詳しく話していたところだ」



難しい顔のコルニクス公爵は、リーテさんの肩を触って



「情報感謝する」



それだけ言って去っていった。



「ナナリーさんにも、何があったか説明しようと思う」



治療が終わり、怪我の具合を確かめたリーテさんは、

私にお礼を言ってパイプテントにあるイスに座った。

少しだけ落ち着いたように深呼吸した。

私も隣のイスに座る。



「ナナリーさんが馬で駆けて行ったすぐあと、

 マリク殿が魔法で戦闘に加わった。


 マリク殿の魔法は素晴らしかった。

 炎の魔法の範囲も威力も申し分なかった。

 私がおとりとなり、マリク殿が魔法を放つ。

 最初は、そうやって魔物の体力を削っていたんだ。


 だが、それだけで魔物を討伐できるわけがない。

 魔物の皮膚が分厚いのか、私達の攻撃では

 致命傷を与える事はできなかったのだ」



リーテさんは自分の膝の上に置いた剣の鞘を撫でて、続ける。



「私達の戦闘を学んだ魔物が、私ではなく魔法を放ったマリク殿に

 標的が変わったんだ。

 そして、マリク殿は真正面から魔物の突進を受けた。

 私は庇おうとしたのだが、間に合わなかった」



悔いた表情のリーテさんはそのまま続ける。



「『今ですっ―!! リーテさん――!!』そう叫んだマリク殿の

 身を犠牲にして作ってくれた隙を私がついた。

 魔物の腹に剣を突き刺したが、浅かったのだろうな。

 魔物は悲鳴を上げて去っていったんだ……」



膝の上の剣の柄をギュっと握り締めたリーテさんの手に、

私は自分の手を重ねた。

辛い顔をしたリーテさんは、顔をあげて私に薄く笑った。

そして、話を続けた。



「魔物は去ったが、霧が晴れる気配がなくてな……。

 このままではマリク殿が危ないと思い、逃げた馬を見つけて、

 マリク殿を担いで砦に向かおうとしたんだ。


 そしたら、兵士達がこちらに来るのが見えてな。

 将軍を名乗る男にその場を任せて、

 マリク殿と私はここまで運ばれたということだ」



私は、疲れた表情のリーテさんの手をギュッと握った。


生きていてくれたんだ。

それだけで、私は嬉しかった。



「リーテさん、私を守ってくれてありがとう」



リーテさんは悲しい表情のあと、涙ぐんで微笑んでくれた。

この後、リーテさんをテントに案内した。

テントには、マリク君も運ばれていて

6つある寝台の1つに寝かされている状態だった。



リーテさんは、マリク君の様子を確認し、ホッとした表情になった。

そのあと、体や服についた血や土を綺麗にタオルで拭ったあと、

用意されていた私と同じサーコートに着替えた。

そうとう疲れていたのか、リーテさんは寝台に倒れるように

眠りについたのだった。



2人の寝顔を見たあと、私はマリエラを呼びにテントの外に出た所で、

見覚えのある3人を見つけた。

私は涙を目じりに貯めて、駆け出していた。


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