親子そろって悪役令嬢!?

マヌァ

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白魔法の文献編

180話『検問所到着』

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※エミリア視点に戻ります。




コルトの街を出発して2日、

空が茜色に染まる時間帯にコルニクス領への検問所に到着した私達は、

馬から下りて検問所内の一室に案内されていた。



当初の予定では昨日の夕方には検問所に到着し、

今頃はコルニクス領の途中の村での一泊のはずだった。



だけど、私もナナリーも慣れない馬での旅とコルト街での騒動のせいで

体力的にも精神的にも疲労が溜まっていて、大分進行が遅れてしまった。

なんとも悲しいかなナナリーに関しては、馬の揺れで酔ってしまわれている。



1日目は休み休み行くうちに、あっという間に過ぎていった。

ちなみに1日目の夜は野宿だったよ。

疲れがピークに達したのは野宿のせいもあるかもね。



迷惑をかけたくないという理由で、馬旅に慣れている医師の皆さんとは

別行動になり、護衛の騎士達と共に先に砦に向かってもらった。





私とベリアル様、ナナリーとマリク君、リーテ様とコンラート様は

今日は検問所で一泊して行く事になった。



検問所は旅人や商人用の宿泊施設としても使われているようで、

格安で利用可能だという。

部屋はちょうどいい人数の部屋がなく、8人用の大部屋を借りた。



「申し訳ありません」 「ごめ……なさい……」



申し訳ない顔の私と、顔色が悪いナナリーが他メンバーに頭を下げる。



「馬での長旅には慣れてない人には辛いので仕方がないですよ」


「そうですよ。

 今日はここでゆっくり休みましょう」



リーテ様とマリク君のフォローにベリアル様もコンラート様も頷く。



「ありがとうございます」 「ありが……うっ……」



お礼を言おうとしたナナリーが口元を押えてうずくまる。



「ナナリー!? 大丈夫かっ!」


コンラート様は大げさな勢いでナナリーの心配をしている。

ちょいちょい、私とマリク君に向ける眼差しが厳しいのには気づいているよ。

まだ何か根に持っているっぽいね。



「ナナリー、少し横になりましょう」



ナナリーを支えて、8つ用意されている寝台の一つに向かう。

薄い木の板に藁を詰め込んだマットを敷いたものだ。

清潔なシーツはもちろんしてあるし、ふかふかの毛布もある。

部屋も掃除が行き届いていた。



ギシギシと音を立てる寝台にナナリーを寝かせる。

万能治癒を少しずつ使って背中を撫でてあげた。



だけど、万能治癒って酔いには何故か効かないのだ。

酔いにいい魔法が無いのが不思議だった。

薬ならあるんだけどね。



もちろん、お酒の酔いも治せない。

先生によるとお酒は薬としての認識もあるから。という説があるけれど、

乗り物酔いへの魔法が効かない理由には当てはまらない。

本当に不思議だった。



一応、ナナリーが吐いてもいいようにおけも用意する。


「……だ、大分よくなってきたわ。

 ありがとうエミリア、貴女も休んでいいわよ」



大分と言ってもナナリーの顔色はまだ悪い。



「僕が交代します」



というマリク君のお言葉に甘えて、ナナリーの隣の寝台に腰掛ける。







「私は少し検問所の兵士と話をしてくる。

 情報も集めておいたほうがいいだろうからな」



リーテ様はそう言って部屋を出て行かれた。



「くっ……ナナリー……

 俺の馬に乗っていればっ!」



コンラート様はナナリーが自分の馬に乗っていればこんな事にはなっていない

とでも言いたげな視線だ。



誰の馬に乗ったところで同じだったでしょうけどね。



「ナナリーさんが貴方の馬に乗っていたら、

 確実に今よりもっと酷い状態だったでしょうね。

 砦への進行も、ずっと遅れていました」



おおっと!?



「なんだと貴様っ!?」



まさかの、マリク君がコンラート様に喧嘩を売った。



「僕は事実を口にしただけですよ」



「貴様の馬に乗ったせいでナナリーがこんな状態なんだぞ!?」



「僕の馬に乗っていたからこそ、この程度で済んだんですよ?」



2人は睨み合い、お互いに一歩も引かない状況だ。



「あーもー、うるさいわねー!

 騒ぐのなら、あんた達も情報収集でもして来なさいよ!」



ナナリーは、うるさそうに喧嘩する2人に言い放った。

ナナリー、喧嘩の原因は貴女よ?

ここは、私のために喧嘩はやめてって言うシーンじゃないの!?



とか思ったけれど、ナナリーはそれどころじゃないくらい顔色が悪い。



「ナナリー、何か元気になる食べ物をもらってくるからな」



コンラート様は、空気が読めないのかナナリーのために食べ物を

もらってくるそうだ。



若干、苦い顔のナナリーは食べ物と聞いただけで今にも吐きそうだ。

残念系イケメンのコンラート様はいい笑顔で部屋を出て行った。



「では僕も動物達の耳を借りて情報収集でもしてきます」



マリク君は結構まともな理由で部屋を出て行った。



とりあえず静かになったので、私とナナリーは仮眠を取る事にした。

もちろん見張りはベリアル様だ。



「ナナリー、静かになったのでそろそろ休みましょう。

 辛いでしょうが、眠ったほうがいいです」



「そうね。

 お言葉に甘えさせてもらうわね」



そう言ってナナリーは毛布を頭から被った。

私も眠気が少しだけ出てきたので、ベリアル様に視線を向ける。



「エミリアも気にしないでゆっくり休むといい」



さすがベリアル様!

私の思っていることを分かってくれている!



「お言葉に甘えて、お先に休ませて頂きます。

 なにかあったら遠慮せず起してくださいね」



「分かった」



ベリアル様が頷いたのを確認して寝台に横になる。



「おやすみなさい」



「おやすみ」



ベリアル様と挨拶を交わして、私は目を閉じた。




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