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白魔法の文献編
178話『魔物討伐戦その後 1』
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※エドワード視点です。
本陣にもたらされたエレノアさんの勝利の勝鬨に、
救護テントで待機していたほとんどの者達が歓声に沸いた。
北側、西側、南側、東側、それぞれ中型の2メートル急のボアを2匹ずつ
相手をした。
重度の症状の者もいる。
魔物の吐く霧息を直接浴びた者や吸い込んでしまった者もいる。
現在、北側の兵士達は、本陣に移動し終えていた。
まだ南側と西側の兵士達は本陣に到着していない。
まだまだ、負傷者は増えることだろうね。
僕は治療班に診てもらっている兵士達へ声をかけて回っていた。
「よく頑張ってくれた。
君達の頑張りのおかげで、エレノアさんが魔物の親玉を討伐できたんだ。
ゆっくりと養生してくれ」
「は、はいっ……!
あ、ありがたき……お言葉です」
負傷兵達を医師に任せてテントの外へ出る。
「殿下! コルトから救護馬車が到着しました」
兵士の一人の呼びかけに気を引き締めてそちらを向く。
「分かった。
至急、馬車に乗っている治癒科の者達を救護テントへ」
指示を出しながら馬車へ向かう。
討伐完了の光玉を合図に、コルトの街から治癒学校と治癒科の生徒達を
呼び寄せる手はずとなっていた。
馬車から降りた彼らは、いそいそと救護テントへ入っていく。
チーム分けをされた彼らは手際よく兵士達の治療に取り掛かっていた。
救護テントにいる医療班の班長の一人に声をかける。
彼は死傷者の数を計測する名簿を持っているはずだ。
「君、すまないが今回の作戦での死傷者の数を教えてほしい」
「は! 殿下、こちらが名簿になります」
兵士の名前と状態の書かれた冊子を受け取る。
兵士の一人一人の状態と死傷者の兵士の数が分かるようにしてあった。
気を使ってか、班長が死傷者の数を口頭で教えてくれた。
「北側と東側、エレノア様の部隊からは死者はいません。
重傷者3名、軽症者22名といったところです。
南側と西側の魔物は距離が近く、
彼らは最初の作戦とは大きく異なる状況で戦ったようです」
「魔物が合流したと聞いたが?」
「その通りです。
西と南にいた魔物は合流し、とても厄介な状況だったと。
死者は6名、重傷者は12名、軽症者は8名です。
至急こちらに向かってきているようです」
死者が出てしまったという言葉に目の前がチカチカした。
「そうか……。
できれば救護馬車を向かわせて、迎えを送ってあげて」
(できるかぎり、兵士達を助けてあげたい)
冊子を医師に返す手は少しだけ震えていた。
「わかりました。
……殿下、お気を病まずに。
これは、魔物との戦争です。
死者が出ることは、仕方がないのです」
「そう、なのかな……」
相手は魔物だ。
誰一人死なずになんて無理な話だ。
そんな事はわかっている。
むしろこれだけの死者で済んだのだと王都の臣下達は言うだろう。
けれど、やっぱりもう少し作戦を練り直せたんじゃないのかとか
自分が南側にいればなんて、そんな事を考えてしまう。
実際問題、僕が南側にいた所であまり変わらないのかもしれないけれど。
(くだらない事を考えるな。
このあと、コルニクス公爵の援護に向かうんだぞ)
首を振って考えを振り払う。
僕は足取り重く、作戦会議用のテントへ向かおうとした。
戦闘を終えたエレノアさんと兵士達がこちらに向かってくるのが見える。
負傷者はいないようだ。
きっとエレノアさんが治療したあとだろうね。
エレノアさん自身もパっと見、外傷は殆どないことにホッとする。
「お疲れ様でしたエレノアさん」
「エドワード殿下。 貴方もがんばったそうね」
「そう……ですね」
頑張ったか……
僕自身できることはやったと思う。
それでも、目の前で魔物の突進にやられた兵士の姿が浮かぶ。
正直、ヴォルステイン家の魔法薬が無かったら、自分も危なかった。
それに、たびたび心の中で思い浮かぶマリエラの事も気がかりだった。
彼女が心配でならない。
コルニクス公爵への手紙の返事は送った。
送ったばかりなので、返事はまだ先だろう。
マリエラが出発してから、かなりの日数が経っている。
コンラートは砦ではマリエラには合って居ないと言っていた。
すれ違いか、もしくは実家で大人しくしていてくれているのか……。
俯いていた僕に、エレノアさんが声をかける。
「思い詰めすぎよ」
「えっ……?」
「エミリアもそうだけど、貴方も溜め込みすぎよ。
気がかりなのはマリエラさんのことかしら?」
図星を言い当てたエレノアさんに表情に出さないように驚く。
「大丈夫よ。
手紙を届ける早馬がコルニクス家でマリエラさんの無事を確認するわ。
もしすれ違いでマリエラさんが砦に向かったとしても、エミリア達がいる」
ゆっくりと近づいてくるエレノアさん。
「大丈夫よ」
もう一度、そう呟いて、
そっと僕の頬に触れる。
エレノアさんの手の感触は暖かかった。
「そうですね」
やさしい眼差し、優しい手。
なんだか、泣きそうになってしまった。
「貴方は、貴方の出来る事をなさい」
エレノアさんはそう言って、手を離す。
「大丈夫よ。 エドワード」
そう最後に呟いて、救護テントへと向かっていった。
エレノアさんとはここでお別れだ。
(ありがとう母さん……)
僕は心の中でお礼を言って、会議テントへ向かうのだった。
本陣にもたらされたエレノアさんの勝利の勝鬨に、
救護テントで待機していたほとんどの者達が歓声に沸いた。
北側、西側、南側、東側、それぞれ中型の2メートル急のボアを2匹ずつ
相手をした。
重度の症状の者もいる。
魔物の吐く霧息を直接浴びた者や吸い込んでしまった者もいる。
現在、北側の兵士達は、本陣に移動し終えていた。
まだ南側と西側の兵士達は本陣に到着していない。
まだまだ、負傷者は増えることだろうね。
僕は治療班に診てもらっている兵士達へ声をかけて回っていた。
「よく頑張ってくれた。
君達の頑張りのおかげで、エレノアさんが魔物の親玉を討伐できたんだ。
ゆっくりと養生してくれ」
「は、はいっ……!
あ、ありがたき……お言葉です」
負傷兵達を医師に任せてテントの外へ出る。
「殿下! コルトから救護馬車が到着しました」
兵士の一人の呼びかけに気を引き締めてそちらを向く。
「分かった。
至急、馬車に乗っている治癒科の者達を救護テントへ」
指示を出しながら馬車へ向かう。
討伐完了の光玉を合図に、コルトの街から治癒学校と治癒科の生徒達を
呼び寄せる手はずとなっていた。
馬車から降りた彼らは、いそいそと救護テントへ入っていく。
チーム分けをされた彼らは手際よく兵士達の治療に取り掛かっていた。
救護テントにいる医療班の班長の一人に声をかける。
彼は死傷者の数を計測する名簿を持っているはずだ。
「君、すまないが今回の作戦での死傷者の数を教えてほしい」
「は! 殿下、こちらが名簿になります」
兵士の名前と状態の書かれた冊子を受け取る。
兵士の一人一人の状態と死傷者の兵士の数が分かるようにしてあった。
気を使ってか、班長が死傷者の数を口頭で教えてくれた。
「北側と東側、エレノア様の部隊からは死者はいません。
重傷者3名、軽症者22名といったところです。
南側と西側の魔物は距離が近く、
彼らは最初の作戦とは大きく異なる状況で戦ったようです」
「魔物が合流したと聞いたが?」
「その通りです。
西と南にいた魔物は合流し、とても厄介な状況だったと。
死者は6名、重傷者は12名、軽症者は8名です。
至急こちらに向かってきているようです」
死者が出てしまったという言葉に目の前がチカチカした。
「そうか……。
できれば救護馬車を向かわせて、迎えを送ってあげて」
(できるかぎり、兵士達を助けてあげたい)
冊子を医師に返す手は少しだけ震えていた。
「わかりました。
……殿下、お気を病まずに。
これは、魔物との戦争です。
死者が出ることは、仕方がないのです」
「そう、なのかな……」
相手は魔物だ。
誰一人死なずになんて無理な話だ。
そんな事はわかっている。
むしろこれだけの死者で済んだのだと王都の臣下達は言うだろう。
けれど、やっぱりもう少し作戦を練り直せたんじゃないのかとか
自分が南側にいればなんて、そんな事を考えてしまう。
実際問題、僕が南側にいた所であまり変わらないのかもしれないけれど。
(くだらない事を考えるな。
このあと、コルニクス公爵の援護に向かうんだぞ)
首を振って考えを振り払う。
僕は足取り重く、作戦会議用のテントへ向かおうとした。
戦闘を終えたエレノアさんと兵士達がこちらに向かってくるのが見える。
負傷者はいないようだ。
きっとエレノアさんが治療したあとだろうね。
エレノアさん自身もパっと見、外傷は殆どないことにホッとする。
「お疲れ様でしたエレノアさん」
「エドワード殿下。 貴方もがんばったそうね」
「そう……ですね」
頑張ったか……
僕自身できることはやったと思う。
それでも、目の前で魔物の突進にやられた兵士の姿が浮かぶ。
正直、ヴォルステイン家の魔法薬が無かったら、自分も危なかった。
それに、たびたび心の中で思い浮かぶマリエラの事も気がかりだった。
彼女が心配でならない。
コルニクス公爵への手紙の返事は送った。
送ったばかりなので、返事はまだ先だろう。
マリエラが出発してから、かなりの日数が経っている。
コンラートは砦ではマリエラには合って居ないと言っていた。
すれ違いか、もしくは実家で大人しくしていてくれているのか……。
俯いていた僕に、エレノアさんが声をかける。
「思い詰めすぎよ」
「えっ……?」
「エミリアもそうだけど、貴方も溜め込みすぎよ。
気がかりなのはマリエラさんのことかしら?」
図星を言い当てたエレノアさんに表情に出さないように驚く。
「大丈夫よ。
手紙を届ける早馬がコルニクス家でマリエラさんの無事を確認するわ。
もしすれ違いでマリエラさんが砦に向かったとしても、エミリア達がいる」
ゆっくりと近づいてくるエレノアさん。
「大丈夫よ」
もう一度、そう呟いて、
そっと僕の頬に触れる。
エレノアさんの手の感触は暖かかった。
「そうですね」
やさしい眼差し、優しい手。
なんだか、泣きそうになってしまった。
「貴方は、貴方の出来る事をなさい」
エレノアさんはそう言って、手を離す。
「大丈夫よ。 エドワード」
そう最後に呟いて、救護テントへと向かっていった。
エレノアさんとはここでお別れだ。
(ありがとう母さん……)
僕は心の中でお礼を言って、会議テントへ向かうのだった。
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