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白魔法の文献編
175話『森の魔物討伐戦 1』
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※エレノアお母様視点です。
エミリアが出発した次の日、
私達はコルト街の近隣の森に潜む魔物を討伐するため、作戦会議をしていた。
場所は中央広場の兵士宿舎にある会議室だ。
会議に出席しているのは、エドワード殿下、クレス殿下、
近衛騎士副団長のマリー、この街の兵士の班長達と、斥候の4人。
王都から来た将軍2人に、魔術師班の班長4人、医療班のリーダー達と、
怪我人の数によっては生徒達にも手伝わせるので治癒学校の教師が4人だ。
広げられた地図には、街と魔物が潜む森が描かれている。
森全体の広さはあまり広くはない。
横にしたひょうたんのような形だ。
西側がひょうたんの頭部分で、東側がひょうたんのお尻部分と言ったら
分かりやすいだろうか。
斥候の一人が、詳しく森と森周辺の説明をしてくれていた。
「コルトから森までの距離は約1キロ半程です。
森は中央部分が細くなっており、かなり見晴らしのいい
木々の生え方をしています。
魔物は森全体に拡散しており、森の周囲100メートルに渡って霧が
広がっています。
ですが、この霧は無害な霧でして視界を遮るため、
外敵から身を守るために吐いた霧息だと思われます。
そして、魔物の中に一際大きく目立つ固体を発見しました。
その魔物は森の東側、コルト街寄りの方で同種の魔物に囲まれています。
魔物全体の数は大小合わせて、おおよそ13体といったところでした」
斥候の説明を聞きながら、エドワード殿下は、
地図に赤色のペンで分かりやすく描き加えている。
霧範囲、距離などだ。
あとは、斥候の言っていた目立つ魔物を、森の東側に
軍用駒で置いていく。
「この目立つ存在というのが親玉だとすると、
他の魔物の配置はこんな感じかな?」
エドワード殿下が軍用駒を使って配置していく魔物の陣形に
斥候は顔色を変えていく。
「そ、その通りです。
さすがは、エドワード殿下」
殿下が配置したのは、親玉を頭にしたジグザグに配置された
小さな魔物の駒だ。
魔物の駒はまるで蛇のような形にも見える。
私は陣形や兵法などには詳しくはないけれど、
その駒配置を見ていた班長達や斥候、将軍達は、
驚きの表情とエドワード殿下へ賞賛の眼差しを向けている。
「斥候である君達が見てきた魔物の陣形がもし本当にこの形だったら、
かなりまずい事になるね」
エドワード殿下の言葉に、将軍達も頷いている。
「そうですね。
一刻も早く、討伐隊の陣配置を完成させなくてはいけませんね」
「私達にも詳しく教えて頂いても?」
彼達だけで話を進められては困る。
私だって、前線に立つのだから。
「あ、失礼しました。
かあ……エ~、エレノアさんにも分かるように説明します」
「ええ。
分かりやすく教えてちょうだい」
エドワード殿下……
今、私の事「母さん」って言おうとしたわね。
ラナーのお茶会の後、エドワード殿下が前世の私の息子だって事を知った。
エミリアに教えてもらって、いざ会って驚いたものだ。
(この子まで死んでこちらの世界に来てしまっては、
あの人が心配になってくるわ。)
私は小さくため息を吐いた。
私のため息をどう受け取ったか知らないけれど、
エドワード殿下は、焦った表情で
紙を別に用意し、私と教師達に陣形について説明しだした。
(そんなにビクビクしなくてもいいでしょうに……)
私は意識を切り替えて、紙と地図に目を向けた。
「この魔物の陣形は、速さを活かした陣形です。
横や後ろにも対応できる陣形でもあります……。
魔物の知性がどの程度高いのかは知りませんが、
昨日コンラートからもたらされた魔物の進行ルートと、
この街への到達速度的に、本能的にこの陣形で移動するタイプのようです。
そして、森に隠れる時点でこの陣形を組んでいるということは、
すぐにでも進行できるという意味でもあります。
また、親玉の周りを取り囲むのが子供の場合、
親玉の討伐も難しくなります。
子供とはいえ、脅威度のランクはBでしょうから」
エドワード殿下の説明に、将軍達は頷き、
教師達は焦った表情だ。
「すぐに進行と言っても、今すぐと言うわけではないけれどね」
エドワード殿下は、そういいながら軍用の駒を並べる。
「僕達の陣形は魔物の進行ルートにエレノアさんを配置した本隊を。
森周辺の四方に別働隊を進軍させ敵が進行ルートを
変えられないようにしようと思います」
地図上の駒の配置は森に展開するジグザクの蛇のような形の魔物を
取り囲む凸の形をした兵が森の外側の四方に配置され、
ペンで赤い矢印を森に向かって書かれている。
本隊と言われたVの形の兵を敵の進行ルートであるコルト街との間、
北側と東側を囲む凸兵の間に設置され、親玉と思われる魔物へと
矢印が書かれている。
「しかし、森から魔物が出てこない場合、
つまり魔物が篭城戦を仕掛けてきた場合はどうするので?」
魔術師の1人がエドワード殿下が置いた駒を眺めながら問いかける。
「その場合は君達の出番だね。
森から300メートル離れた場所で兵士を展開する。
当然、森の魔物にも丸見えのはずだ。
東西南北、全ての兵の配置が終わった状態になっても、
魔物が動き出さない場合は、こちらから打って出る」
エドワード殿下はさらに地図に書き込みをする。
北側に配置された兵士の場所に赤いひし形の駒を等間隔に並べる。
「君達に、この位置から魔法を使って霧を吹き飛ばしてもらう」
エドワード殿下の考えた魔術師達の配置に皆驚いている。
「霧を飛ばす? そのような事に我々を使うと?」
高火力の魔術師達は、魔物と戦うためではなく、
霧を飛ばすために魔法を使えとエドワード殿下に言われているのだ。
話を聞いていた他の魔術師も若干顔が怒っている。
「今の時期は冬で、雪が降り積もる外で火の魔法を使っても
君達は本領を発揮できないだろう?
だから、道具を使って森の周囲を覆う霧を吹き飛ばしてもらう」
「しかし、我々は風の魔法なんて使えませんよ?」
「それは、分かっているよ。
だから、道具を使うんだ」
エドワードが別の紙に書き込む内容を要約すると
魔法粉を使った粉塵爆弾で森の周囲を覆う霧を吹き飛ばすというものだった。
魔法粉とは、魔力石を加工する時に出る粉状の物を差す。
普通は魔力石を魔道具にした時に出る粉なんて使い道は殆ど無い。
見た目がキラキラしているので小瓶に詰めてのお守り程度に使われる。
エドワード殿下が言うには、魔法粉は魔法で作り出した炎に反応して
爆発を起すようだ。
「こんなもので本当に、火力が上がるのですか?」
「使う場所と、風向きに気をつけて使わないと自分達が危なくなるけれどね。
今日の風向きは運が良く南西に吹いている。
絶好の実験日和だよね?」
最初は渋っていた魔術師達だったが、エドワード殿下の説明で
やる気というか、新しい実験を楽しむかのような表情に変わっていた。
(まったく……。
この子は、その情報をどこで手に入れてきたんだか……)
昔はそうとうヤンチャをしていたからその時だろうとは思うけれど。
魔術師達の興味とやる気を引き出すエドワード殿下の手腕は
さすがとしか言えないわね。
「それでは、さっそく準備に取り掛かりましょう」
将軍の言葉にみんなそれぞれ頷き、準備のために部屋を出て行く。
地図上の駒の配置を覚えた私も会議室を出て広場に向かった。
エミリアが出発した次の日、
私達はコルト街の近隣の森に潜む魔物を討伐するため、作戦会議をしていた。
場所は中央広場の兵士宿舎にある会議室だ。
会議に出席しているのは、エドワード殿下、クレス殿下、
近衛騎士副団長のマリー、この街の兵士の班長達と、斥候の4人。
王都から来た将軍2人に、魔術師班の班長4人、医療班のリーダー達と、
怪我人の数によっては生徒達にも手伝わせるので治癒学校の教師が4人だ。
広げられた地図には、街と魔物が潜む森が描かれている。
森全体の広さはあまり広くはない。
横にしたひょうたんのような形だ。
西側がひょうたんの頭部分で、東側がひょうたんのお尻部分と言ったら
分かりやすいだろうか。
斥候の一人が、詳しく森と森周辺の説明をしてくれていた。
「コルトから森までの距離は約1キロ半程です。
森は中央部分が細くなっており、かなり見晴らしのいい
木々の生え方をしています。
魔物は森全体に拡散しており、森の周囲100メートルに渡って霧が
広がっています。
ですが、この霧は無害な霧でして視界を遮るため、
外敵から身を守るために吐いた霧息だと思われます。
そして、魔物の中に一際大きく目立つ固体を発見しました。
その魔物は森の東側、コルト街寄りの方で同種の魔物に囲まれています。
魔物全体の数は大小合わせて、おおよそ13体といったところでした」
斥候の説明を聞きながら、エドワード殿下は、
地図に赤色のペンで分かりやすく描き加えている。
霧範囲、距離などだ。
あとは、斥候の言っていた目立つ魔物を、森の東側に
軍用駒で置いていく。
「この目立つ存在というのが親玉だとすると、
他の魔物の配置はこんな感じかな?」
エドワード殿下が軍用駒を使って配置していく魔物の陣形に
斥候は顔色を変えていく。
「そ、その通りです。
さすがは、エドワード殿下」
殿下が配置したのは、親玉を頭にしたジグザグに配置された
小さな魔物の駒だ。
魔物の駒はまるで蛇のような形にも見える。
私は陣形や兵法などには詳しくはないけれど、
その駒配置を見ていた班長達や斥候、将軍達は、
驚きの表情とエドワード殿下へ賞賛の眼差しを向けている。
「斥候である君達が見てきた魔物の陣形がもし本当にこの形だったら、
かなりまずい事になるね」
エドワード殿下の言葉に、将軍達も頷いている。
「そうですね。
一刻も早く、討伐隊の陣配置を完成させなくてはいけませんね」
「私達にも詳しく教えて頂いても?」
彼達だけで話を進められては困る。
私だって、前線に立つのだから。
「あ、失礼しました。
かあ……エ~、エレノアさんにも分かるように説明します」
「ええ。
分かりやすく教えてちょうだい」
エドワード殿下……
今、私の事「母さん」って言おうとしたわね。
ラナーのお茶会の後、エドワード殿下が前世の私の息子だって事を知った。
エミリアに教えてもらって、いざ会って驚いたものだ。
(この子まで死んでこちらの世界に来てしまっては、
あの人が心配になってくるわ。)
私は小さくため息を吐いた。
私のため息をどう受け取ったか知らないけれど、
エドワード殿下は、焦った表情で
紙を別に用意し、私と教師達に陣形について説明しだした。
(そんなにビクビクしなくてもいいでしょうに……)
私は意識を切り替えて、紙と地図に目を向けた。
「この魔物の陣形は、速さを活かした陣形です。
横や後ろにも対応できる陣形でもあります……。
魔物の知性がどの程度高いのかは知りませんが、
昨日コンラートからもたらされた魔物の進行ルートと、
この街への到達速度的に、本能的にこの陣形で移動するタイプのようです。
そして、森に隠れる時点でこの陣形を組んでいるということは、
すぐにでも進行できるという意味でもあります。
また、親玉の周りを取り囲むのが子供の場合、
親玉の討伐も難しくなります。
子供とはいえ、脅威度のランクはBでしょうから」
エドワード殿下の説明に、将軍達は頷き、
教師達は焦った表情だ。
「すぐに進行と言っても、今すぐと言うわけではないけれどね」
エドワード殿下は、そういいながら軍用の駒を並べる。
「僕達の陣形は魔物の進行ルートにエレノアさんを配置した本隊を。
森周辺の四方に別働隊を進軍させ敵が進行ルートを
変えられないようにしようと思います」
地図上の駒の配置は森に展開するジグザクの蛇のような形の魔物を
取り囲む凸の形をした兵が森の外側の四方に配置され、
ペンで赤い矢印を森に向かって書かれている。
本隊と言われたVの形の兵を敵の進行ルートであるコルト街との間、
北側と東側を囲む凸兵の間に設置され、親玉と思われる魔物へと
矢印が書かれている。
「しかし、森から魔物が出てこない場合、
つまり魔物が篭城戦を仕掛けてきた場合はどうするので?」
魔術師の1人がエドワード殿下が置いた駒を眺めながら問いかける。
「その場合は君達の出番だね。
森から300メートル離れた場所で兵士を展開する。
当然、森の魔物にも丸見えのはずだ。
東西南北、全ての兵の配置が終わった状態になっても、
魔物が動き出さない場合は、こちらから打って出る」
エドワード殿下はさらに地図に書き込みをする。
北側に配置された兵士の場所に赤いひし形の駒を等間隔に並べる。
「君達に、この位置から魔法を使って霧を吹き飛ばしてもらう」
エドワード殿下の考えた魔術師達の配置に皆驚いている。
「霧を飛ばす? そのような事に我々を使うと?」
高火力の魔術師達は、魔物と戦うためではなく、
霧を飛ばすために魔法を使えとエドワード殿下に言われているのだ。
話を聞いていた他の魔術師も若干顔が怒っている。
「今の時期は冬で、雪が降り積もる外で火の魔法を使っても
君達は本領を発揮できないだろう?
だから、道具を使って森の周囲を覆う霧を吹き飛ばしてもらう」
「しかし、我々は風の魔法なんて使えませんよ?」
「それは、分かっているよ。
だから、道具を使うんだ」
エドワードが別の紙に書き込む内容を要約すると
魔法粉を使った粉塵爆弾で森の周囲を覆う霧を吹き飛ばすというものだった。
魔法粉とは、魔力石を加工する時に出る粉状の物を差す。
普通は魔力石を魔道具にした時に出る粉なんて使い道は殆ど無い。
見た目がキラキラしているので小瓶に詰めてのお守り程度に使われる。
エドワード殿下が言うには、魔法粉は魔法で作り出した炎に反応して
爆発を起すようだ。
「こんなもので本当に、火力が上がるのですか?」
「使う場所と、風向きに気をつけて使わないと自分達が危なくなるけれどね。
今日の風向きは運が良く南西に吹いている。
絶好の実験日和だよね?」
最初は渋っていた魔術師達だったが、エドワード殿下の説明で
やる気というか、新しい実験を楽しむかのような表情に変わっていた。
(まったく……。
この子は、その情報をどこで手に入れてきたんだか……)
昔はそうとうヤンチャをしていたからその時だろうとは思うけれど。
魔術師達の興味とやる気を引き出すエドワード殿下の手腕は
さすがとしか言えないわね。
「それでは、さっそく準備に取り掛かりましょう」
将軍の言葉にみんなそれぞれ頷き、準備のために部屋を出て行く。
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