169 / 231
白魔法の文献編
169話『援軍到着 3』
しおりを挟むクレス殿下に手を引かれて、
なぜかクレス殿下の隣に腰を降ろすことになった。
ベリアル様は私の後ろで静かに立っている。
クレス殿下はベリアル様を一瞬だけ見て、頭をかしげていた。
何か気になることでもあったのかな?
「エミリア様!
いままでの愚兄の愚かな振る舞い、申し訳ありませんでした!」
エドワード殿下の後ろに立っているバイゼイン家の美女が
私に向かって頭を下げた。
マリー副団長もすぐに頭を下げ、
コンラート様の頭を掴んで下げさせている。
下げられたコンラート様の表情は窺えない。
私は直ぐに3人に顔を上げるように声をかける。
「頭を上げてください。
謝罪はもう十分受け取りましたから。
それと、えーっと……」
私は、コンラート様のことを愚兄と言った美女に顔を向ける
「申し送れました。私の名前はリーテ。
リーテ・バイゼインと申します。
エミリア様、ベリアル王子、どうぞお見知り置きを」
リーテ・バイゼイン!?
リーテって、ジョシュアが言っていた続編のヒロイン!?
私は内心の驚きが表情に出ないようにし、優雅にお辞儀した。
思っていた印象より、リーテは律儀で礼儀正しい。
綺麗な騎士の所作で敬意を示してくれる。
「リーテ様、どうぞ仲良くして下さいね」
「もちろんです! エミリア様!
ベリアル王子も、良ければ貴方の剣術の腕を後で見せて頂きたい。
エレノア様から、1人でヴェルフェボア2匹を相手に立ち回ったと聞いて、
一度貴方と手合わせをしたいと思っておりました。
若輩者の私ですが、これでも母と父に鍛えられた身。
どうか、私の相手をして頂けないだろうか?」
リーテ様は、ベリアル様に視線を向けて微笑む。
リーテ様の頬が少しだけ染まっているのは、興奮しているからだろうか?
それとも……?
私は、チクリと痛む胸を我慢して成り行きを見つめる。
ベリアル王子は難しい顔をして、言葉を発した。
「すまないが……断らせてもらう。
私より、エレノア姫の方が剣の腕前で言うなら上だ。
私は我流だし、魔物を倒したのも星霊シェイドの力ありきだ。
魔法を使って戦うのと剣術だけで戦うのとは違うからな」
ベリアル様はそんな言い訳でリーテ様の誘いを断った。
「そうか……。
わかりました。無理を言ってしまい申し訳ない」
リーテ様は、切ない表情を浮かべてベリアル様を見たあと頭を下げた。
頭を上げた時には、少しだけ落ち込んではいたが、
さっきまでの微笑みに戻っていた。
ベリアル様が断った時、私は少しだけうれしい気持ちになってしまった。
リーテ様には申し訳ないけれどね……。
私達があいさつを済ませたあと、クレス殿下が焦れたのか声を発した。
「ねーねー、早く本題に入ろうよ。
エミリアとベリアル王子にも無関係じゃないんだからさ。
さっさと話し合いを終わらせて、夕ご飯を食べたいなぁ」
「そうだね。
じゃあ2人にも最初から説明しないとね」
エドワード殿下の言葉に、お母様とバイゼイン夫人は頷く。
私達にも無関係じゃない?
疑問を浮かべる私とベリアル様に視線を向けて
説明するために一歩前に出たのは、コンラート様だった。
0
お気に入りに追加
866
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

くだらない冤罪で投獄されたので呪うことにしました。
音爽(ネソウ)
恋愛
<良くある話ですが凄くバカで下品な話です。>
婚約者と友人に裏切られた、伯爵令嬢。
冤罪で投獄された恨みを晴らしましょう。
「ごめんなさい?私がかけた呪いはとけませんよ」

悪役令嬢カテリーナでございます。
くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ……
気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。
どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。
40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。
ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。
40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。
懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話
六剣
恋愛
社会人の鳳健吾(おおとりけんご)と高校生の鮫島凛香(さめじまりんか)はアパートのお隣同士だった。
兄貴気質であるケンゴはシングルマザーで常に働きに出ているリンカの母親に代わってよく彼女の面倒を見ていた。
リンカが中学生になった頃、ケンゴは海外に転勤してしまい、三年の月日が流れる。
三年ぶりに日本のアパートに戻って来たケンゴに対してリンカは、
「なんだ。帰ってきたんだ」
と、嫌悪な様子で接するのだった。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた
菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…?
※他サイトでも掲載中しております。

【完結】悪役令嬢の反撃の日々
くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。
「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。
お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。
「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる