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白魔法の文献編
164話『白魔法の文献 5』
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※エドワード視点です。
笑いがおさまったマリエラ嬢に改めて様子を確認する。
「大丈夫かい?」
さっきと同じ言葉なのに、ニュアンスというか篭っている言葉が違う。
言葉って不思議だよねー。
「ええ、エドワード殿下。
もう大丈夫です。
突然笑ったりして、申し訳ありません」
もう大丈夫と言うマリエラ嬢の頬は少しだけ赤く染まっていて
口角も上がったままだ。
何がマリエラ嬢の笑いのツボを刺激したのか。
僕は、マリエラ嬢の笑いのツボを探すために問いかけた。
「マリエラ嬢、何がそんなに面白かったんだい?」
困った顔というか、複雑そうな表情でマリエラ嬢は答える。
「以前お話した、私の前回の話は覚えておいでですか?」
僕は頷く。
マリエラ嬢がタイムリープする前の話だね。
聞いているだけでムナクソ悪くなる話だった。
前回の世界も今回の世界もカインの性格は、あまり変化はなさそうだけど。
「カイン様が参加されていた夜会、『仮面会』で私は……
さっきの男に売られたんですの」
えっ…………?
「……っ」
突然のカミングアウト過ぎるマリエラ嬢に言葉を失う。
「売られた後の結末なんて、
聞いても気分が悪くなるだけですわ。聞きますか?」
というマリエラ嬢の問いに僕は全力で首を振った。
マリエラ嬢が前回で大司教に売られたのなら、
大司教は完全に仮面会のメンバーという事になる。
あとで父上に報告しないとね。
しかし、マリエラ嬢は何でそんな辛い思い出があるのに、
笑いが出たのかが良く分からない。
「どうしてマリエラ嬢は笑う事が出来るんだい?
普通、泣いたりとか、辛くなったりするもんじゃないのかな?」
普通の女性だったら、とか良く分からないけれど……
もっと、こう……、気に病んで泣き続けたりするんじゃない?
「私がそんなひ弱な泣き虫令嬢に見えるんですの?」
トゲがある言い方だね。
「それに、泣いてもどうにもならないこともあるんですのよ……」
小さく呟かれた声にはマリエラ嬢の本心が隠れているようにも思えた。
「あのブタは、以前はあそこまで太ってはいなかった気がしますの。
きっとカイン様が修道僧になり、紹介者がいなくなり、
夜会へ参加できなくなった事でストレスで肥え太ったのだと思います。
自分の思い通りにならないと直ぐに暴飲暴食に走りますの。
最後のあの様子だと、醜く食い散らかす様が想像できて
まさに滑稽でしたわ」
笑いのツボは、それを想像したからだとマリエラ嬢は笑って言った。
「君は強いよね」
「褒め言葉として受け取っておきます」
マリエラ嬢を見ていると僕まで笑えてくるのが不思議だ。
いや、理由は分かっているんだけどね。
「ねぇ、マリエラ嬢。
名前、呼び捨てにしてもいいかな?」
突然の話の転化に目を丸くしたマリエラ嬢は、首をかしげつつも頷いた。
「かまいませんよ」
「ありがとう、マリエラ。
マリエラも僕の事を呼び捨てで呼んでほしいな」
僕は親しい同性には名前で呼び合うことにしている。
異性に関しては、家族以外に呼び捨てにされる事は無い。
もちろん、エミリアにだって許してはいない。
ナナリーの愛称呼びは論外だ。
親しみを込めてって言われたから仕方なくだ。
呼び捨てだったら絶対に許してはいないだろう。
それだけ自分にとっての、こだわりのようなものがあったから。
マリエラは僕の呼び捨てへのこだわりを理解できるだろうね。
彼女はとても頭が良いから。
「わ、わかりました、エドワード」
(好みの女性に名前を呼ばれるだけでこんなに嬉しいなんてね)
微笑む僕にマリエラは頬を染めておどおどしだした。
彼女の一挙一動が愛おしいとさえ思えてくるから不思議だ。
(これが愛情なんだよね、エミリア)
僕とマリエラは学園の寮に着くまでずっと、握った手を離すことは無かった。
笑いがおさまったマリエラ嬢に改めて様子を確認する。
「大丈夫かい?」
さっきと同じ言葉なのに、ニュアンスというか篭っている言葉が違う。
言葉って不思議だよねー。
「ええ、エドワード殿下。
もう大丈夫です。
突然笑ったりして、申し訳ありません」
もう大丈夫と言うマリエラ嬢の頬は少しだけ赤く染まっていて
口角も上がったままだ。
何がマリエラ嬢の笑いのツボを刺激したのか。
僕は、マリエラ嬢の笑いのツボを探すために問いかけた。
「マリエラ嬢、何がそんなに面白かったんだい?」
困った顔というか、複雑そうな表情でマリエラ嬢は答える。
「以前お話した、私の前回の話は覚えておいでですか?」
僕は頷く。
マリエラ嬢がタイムリープする前の話だね。
聞いているだけでムナクソ悪くなる話だった。
前回の世界も今回の世界もカインの性格は、あまり変化はなさそうだけど。
「カイン様が参加されていた夜会、『仮面会』で私は……
さっきの男に売られたんですの」
えっ…………?
「……っ」
突然のカミングアウト過ぎるマリエラ嬢に言葉を失う。
「売られた後の結末なんて、
聞いても気分が悪くなるだけですわ。聞きますか?」
というマリエラ嬢の問いに僕は全力で首を振った。
マリエラ嬢が前回で大司教に売られたのなら、
大司教は完全に仮面会のメンバーという事になる。
あとで父上に報告しないとね。
しかし、マリエラ嬢は何でそんな辛い思い出があるのに、
笑いが出たのかが良く分からない。
「どうしてマリエラ嬢は笑う事が出来るんだい?
普通、泣いたりとか、辛くなったりするもんじゃないのかな?」
普通の女性だったら、とか良く分からないけれど……
もっと、こう……、気に病んで泣き続けたりするんじゃない?
「私がそんなひ弱な泣き虫令嬢に見えるんですの?」
トゲがある言い方だね。
「それに、泣いてもどうにもならないこともあるんですのよ……」
小さく呟かれた声にはマリエラ嬢の本心が隠れているようにも思えた。
「あのブタは、以前はあそこまで太ってはいなかった気がしますの。
きっとカイン様が修道僧になり、紹介者がいなくなり、
夜会へ参加できなくなった事でストレスで肥え太ったのだと思います。
自分の思い通りにならないと直ぐに暴飲暴食に走りますの。
最後のあの様子だと、醜く食い散らかす様が想像できて
まさに滑稽でしたわ」
笑いのツボは、それを想像したからだとマリエラ嬢は笑って言った。
「君は強いよね」
「褒め言葉として受け取っておきます」
マリエラ嬢を見ていると僕まで笑えてくるのが不思議だ。
いや、理由は分かっているんだけどね。
「ねぇ、マリエラ嬢。
名前、呼び捨てにしてもいいかな?」
突然の話の転化に目を丸くしたマリエラ嬢は、首をかしげつつも頷いた。
「かまいませんよ」
「ありがとう、マリエラ。
マリエラも僕の事を呼び捨てで呼んでほしいな」
僕は親しい同性には名前で呼び合うことにしている。
異性に関しては、家族以外に呼び捨てにされる事は無い。
もちろん、エミリアにだって許してはいない。
ナナリーの愛称呼びは論外だ。
親しみを込めてって言われたから仕方なくだ。
呼び捨てだったら絶対に許してはいないだろう。
それだけ自分にとっての、こだわりのようなものがあったから。
マリエラは僕の呼び捨てへのこだわりを理解できるだろうね。
彼女はとても頭が良いから。
「わ、わかりました、エドワード」
(好みの女性に名前を呼ばれるだけでこんなに嬉しいなんてね)
微笑む僕にマリエラは頬を染めておどおどしだした。
彼女の一挙一動が愛おしいとさえ思えてくるから不思議だ。
(これが愛情なんだよね、エミリア)
僕とマリエラは学園の寮に着くまでずっと、握った手を離すことは無かった。
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