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白魔法の文献編
161話『白魔法の文献 2』
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※エドワード視点です。
翌日、僕は朝の支度を済ませてマリエラ嬢を迎えに行き、
馬車で次の文献のありかまで移動する。
残りの文献はあと3冊だ。
マリエラ嬢のおかげでだいたいの文献の場所の目処はたっている。
その内の1冊は星教会にあるという事で、
僕とマリエラ嬢は朝から星教会に向かうことにした。
星教会はさまざまな施設が兼任された場所だ。
孤児院から、修道院、祭事を行う聖堂に、
この大陸のほとんどの人間が所属している星霊教も星教会が発端だ。
その中でも修道院は後ろめたい事をやらかした貴族が入れられる更生施設だ。
もちろん、自分から出家して入る者もいる。
しかし貴族の中では体のいいお払い箱として使われる場合がほとんどだ。
星教会に入院した彼達は修道女や修道僧として修行する。
主に原初の星霊とこの世界にいる15の星霊を崇める教えの元に
暮らしていくのだ。
僕からしたら宗教臭いからあまり好きじゃないけれどね。
確か、カインも来月から修道院通いになるんだったっけ。
チリチリとした苛立ちが心を襲う。
コンラートとカインに対して僕はいまだに怒りがおさまっていない。
エミリアが湖で襲われたと聞いた翌日、
何食わぬ顔をして学園に登校してきた彼達に
僕は殴りかからないように必死だった。
父上やベリアルには彼達に蝙蝠を演じて欲しいと言われたので
我慢していたけれどね。
だけど彼達は、犯した事についての罰はとっくに受けている。
カインは修道院送りに、コンラートは危険な国境砦への配置に。
しかし本来、国の法律では殺人未遂に取られかねない2人の罪は
そんなやさしい罰では許されない。
一番穏便に済みそうな罰をというのがエミリアの意向で、
今回はその意向を汲んで済まされたに過ぎなかった。
「もうすぐ着きますわよ。
エドワード殿下、考え事は後になさってください」
マリエラ嬢の声に顔を上げる。
「あ、ごめんね、マリエラ嬢」
本来なら、馬車の中で作戦会議をするという約束だったのに。
「いいえ。
私も星教会はあまり好きではありませんの。
表向きはとても素晴らしい教会として活動してますが……
裏ではとんでもない事をしているとも聞きます。
とっとと用件を済ませて帰りましょう」
「そうだね」
マリエラ嬢の言う裏というのは、闇商会関係の話だろう。
毎夜、闇商人の集まる夜会がどこかで開催されており、
その夜会では人身売買から麻薬、国の重要な情報などが取引されているという。
参加するメンバーの顔はお互いにも分からず、
覆面や仮面で顔は隠れているという。
参加する者は、国の重鎮から他国の間者までいるという噂だ。
そして、今回手紙のやり取りをした星教会の大司教が、
その夜会の出席者だと、暗部『ラビット』から情報が上がってきていた。
(気を引き締めていかないとね……)
馬車が星教会の門へとゆっくりと入っていく。
100メートルほどの、広場を通って教会の扉へと向かう。
広場では、子供達が雪かきを頑張っている姿がチラホラ見えた。
王家の紋章のついた馬車はとても目立つからね。
こちらに手を振る子供の姿も見えたので、窓から手を振り返す。
しばらくして、星教会入口の扉の前で馬車はゆっくりと停車した。
豪華な祭服を着た神父と同じくらい豪華な僧侶の格好をした男性が
扉の前で僕達を出迎えていた。
侍従に馬車の扉を開けてもらい、馬車からゆっくり降りる。
マリエラ嬢の手を取りエスコートし、神父と僧の元へ歩み出した。
さて、ここからが本番だ。
僕達は、気を引き締めて2人の男性を見つめた。
「エドワード殿下、ようこそお越しくださいました」
恭しく頭を下げる僧と神父にこちらも挨拶をする。
「出迎えご苦労。
今日の用件は、先日手紙で書いた通りだ。
詳しい話を聞きたい。 案内してくれるかい?」
相手が知っている前提で勝手に話を進める。
僕は正直、偉そうな態度はあまり好きではない。
だけど、僕は王族の王子だ。
相応の態度は示さなければならない。
それに、星教会には舐められるなと父上から言われている。
「もちろんでございます。
大司教様が談話室にてお待ちです」
大司教は入口で僕を出迎える気がないと?
隣のマリエラ嬢も眉を寄せている。
僕も不機嫌を装う。
「…………そうか。
では案内してもらおう」
僧はそのまま頭を下げ、扉を開けた。
教会の中を案内するのは神父のようだ。
先を歩く神父の背中を見つめる。
この神父、僕と話す時はずっと薄い笑みを貼り付けているけれど、
目が笑ってないんだよね。
やっぱり、星教会の人達は少し苦手だな。
久々に訪れた教会はやっぱり居心地が悪く感じた。
翌日、僕は朝の支度を済ませてマリエラ嬢を迎えに行き、
馬車で次の文献のありかまで移動する。
残りの文献はあと3冊だ。
マリエラ嬢のおかげでだいたいの文献の場所の目処はたっている。
その内の1冊は星教会にあるという事で、
僕とマリエラ嬢は朝から星教会に向かうことにした。
星教会はさまざまな施設が兼任された場所だ。
孤児院から、修道院、祭事を行う聖堂に、
この大陸のほとんどの人間が所属している星霊教も星教会が発端だ。
その中でも修道院は後ろめたい事をやらかした貴族が入れられる更生施設だ。
もちろん、自分から出家して入る者もいる。
しかし貴族の中では体のいいお払い箱として使われる場合がほとんどだ。
星教会に入院した彼達は修道女や修道僧として修行する。
主に原初の星霊とこの世界にいる15の星霊を崇める教えの元に
暮らしていくのだ。
僕からしたら宗教臭いからあまり好きじゃないけれどね。
確か、カインも来月から修道院通いになるんだったっけ。
チリチリとした苛立ちが心を襲う。
コンラートとカインに対して僕はいまだに怒りがおさまっていない。
エミリアが湖で襲われたと聞いた翌日、
何食わぬ顔をして学園に登校してきた彼達に
僕は殴りかからないように必死だった。
父上やベリアルには彼達に蝙蝠を演じて欲しいと言われたので
我慢していたけれどね。
だけど彼達は、犯した事についての罰はとっくに受けている。
カインは修道院送りに、コンラートは危険な国境砦への配置に。
しかし本来、国の法律では殺人未遂に取られかねない2人の罪は
そんなやさしい罰では許されない。
一番穏便に済みそうな罰をというのがエミリアの意向で、
今回はその意向を汲んで済まされたに過ぎなかった。
「もうすぐ着きますわよ。
エドワード殿下、考え事は後になさってください」
マリエラ嬢の声に顔を上げる。
「あ、ごめんね、マリエラ嬢」
本来なら、馬車の中で作戦会議をするという約束だったのに。
「いいえ。
私も星教会はあまり好きではありませんの。
表向きはとても素晴らしい教会として活動してますが……
裏ではとんでもない事をしているとも聞きます。
とっとと用件を済ませて帰りましょう」
「そうだね」
マリエラ嬢の言う裏というのは、闇商会関係の話だろう。
毎夜、闇商人の集まる夜会がどこかで開催されており、
その夜会では人身売買から麻薬、国の重要な情報などが取引されているという。
参加するメンバーの顔はお互いにも分からず、
覆面や仮面で顔は隠れているという。
参加する者は、国の重鎮から他国の間者までいるという噂だ。
そして、今回手紙のやり取りをした星教会の大司教が、
その夜会の出席者だと、暗部『ラビット』から情報が上がってきていた。
(気を引き締めていかないとね……)
馬車が星教会の門へとゆっくりと入っていく。
100メートルほどの、広場を通って教会の扉へと向かう。
広場では、子供達が雪かきを頑張っている姿がチラホラ見えた。
王家の紋章のついた馬車はとても目立つからね。
こちらに手を振る子供の姿も見えたので、窓から手を振り返す。
しばらくして、星教会入口の扉の前で馬車はゆっくりと停車した。
豪華な祭服を着た神父と同じくらい豪華な僧侶の格好をした男性が
扉の前で僕達を出迎えていた。
侍従に馬車の扉を開けてもらい、馬車からゆっくり降りる。
マリエラ嬢の手を取りエスコートし、神父と僧の元へ歩み出した。
さて、ここからが本番だ。
僕達は、気を引き締めて2人の男性を見つめた。
「エドワード殿下、ようこそお越しくださいました」
恭しく頭を下げる僧と神父にこちらも挨拶をする。
「出迎えご苦労。
今日の用件は、先日手紙で書いた通りだ。
詳しい話を聞きたい。 案内してくれるかい?」
相手が知っている前提で勝手に話を進める。
僕は正直、偉そうな態度はあまり好きではない。
だけど、僕は王族の王子だ。
相応の態度は示さなければならない。
それに、星教会には舐められるなと父上から言われている。
「もちろんでございます。
大司教様が談話室にてお待ちです」
大司教は入口で僕を出迎える気がないと?
隣のマリエラ嬢も眉を寄せている。
僕も不機嫌を装う。
「…………そうか。
では案内してもらおう」
僧はそのまま頭を下げ、扉を開けた。
教会の中を案内するのは神父のようだ。
先を歩く神父の背中を見つめる。
この神父、僕と話す時はずっと薄い笑みを貼り付けているけれど、
目が笑ってないんだよね。
やっぱり、星教会の人達は少し苦手だな。
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