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テスト期間編。
140話『魔物の討伐』
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※ベリアル様視点です。
悲鳴がした方角は西門前の方角からだった。
私とエレノア姫は、足に魔力をためて跳躍するように移動する。
後ろからは、傷の癒えた兵士達が後を追ってきている。
大通りを真っ直ぐに西へ進んでいると、目の前に見覚えのある少女が
真っ赤に染まった大きな袋の様なものを抱えて蹲っていた。
伸ばされた手も真っ赤に染まっていて、少女が抱きかかえているもの、
それが血まみれの人間だと私とエレノア姫は気づく。
「ベリアル王子。 魔物は任せます」
エレノア姫の言葉に頷く。
「承知した」
少女の隣を通り過ぎて、私は西門へ向かった。
西門前は悲惨な状況に陥っていた。
兵士達は全滅し、生きている者は地面に転がってうめき声を上げていた。
魔物は、閉ざされた門に突撃を繰り返している。
門は木と鉄で出来た頑丈なものだった。
それが外側と内側、両方からの衝撃でメキメキと音を立てて
壊れつつあった。
「これは、酷いですな……」
追いかけてきた兵士達に、周りで倒れている兵士達を救護所へ運ぶように言う。
遅れて、帆馬車も何台か向かってきていた。
「君達は手を出すな」
「えっ!? ……し、しかし……」
「君達がいては、私が本気を出せない。
私には星霊シェイドが憑いている。心配はいらない」
私の言葉に、兵士は瞠目している。
「わ、わかりました……」
「怪我人を頼んだ」
私はそれだけ言うと、剣を抜き放ち魔物にゆっくりと近づく。
途中に倒れていた兵士の一人が私に声をかけた。
「き、気をつけてください……
ヤツの体に触れると危険です!!
触れただけで、あの病にかかる……!!」
「わかった。触れないように気をつけよう」
私は、助走をつけ勢いのままに剣を前へ突き出す。
魔物はこちらに気づき、振り返って避けようとしたが、
反応できずに、太腿あたりに剣が突き刺さった。
そのまま、重力魔法を込める。
グビイイイイ!!
体を震わせて、私と剣を振りほどこうとする魔物から
わざと剣を抜き、後ろに跳躍して距離をとる。
「『長くは持たぬぞ……』」
「わかっている」
シェイドの力を存分に活かした攻撃魔法を複数発動する。
ちょうど、魔物が居るのは外壁と門の影が差し掛かる場所だ。
私は剣を地面に刺し、魔法を発動した。
「突き下れ!」
外壁と門にかかる影が、無数の影で出来た槍を作り出し、
下から上に魔物を突き刺すように現れる。
重力の魔法で魔物は下へ向かう力により避ける事が出来ないはずだ。
無数の地面から突き出る槍に貫かれて、魔物は数分後に絶命した。
門の隙間から仲間の最後を見ていた残り2体の魔物は、
さっきよりもすさまじい勢いで門を打ち砕きに掛かっていた。
私は、再度駆け出し、門の隙間から魔物を攻撃しようとしたが……
門を壊しに掛かる2匹の内、片方だけ妙な動きをし出した。
鬣が奮い立ち、背中の辺りが紫色に点滅している。
嫌な予感が襲った。
私は、門の直線状にいる兵士たちに向かって声を張り上げた。
「左右へ避けろ!!」
私の声で、門の直線状に居た兵士たちが左右に飛んで避け、
私も地面を蹴って真上へ向かって跳躍して、外壁へ上る。
直後、黒い煙の様なブレスが魔物の口から放たれた。
煙はすぐに薄くなり飛散するが、周囲に薄暗い霧が漂い始めた。
「クッ……」
袖を使って、鼻と口を塞ぐ。
外壁の下では、兵士たちが咳き込みだしていた。
「まずいな……」
普段であれば、先見で今の霧息くらい事前に防げただろう。
しかし、これもゲームのせいなのだろうか?
先見が発動しない事がこんなにも厄介だとは……。
先見が発動しなかったからエレノア姫も
怪我を負ったのだろうな……。
「『黒キ者よ。
このまま外で戦ったほうが良いぞ。
我にもあの魔物の動きは予想できぬ』」
「そうだな」
私はそのまま城壁の上から外側に飛び降りる。
外側から門を壊している魔物の背中に向かって
重力魔法を込めた剣を突き刺す。
落下の勢いもそのまま加わり、そのまま急所を上から下へと突き刺した。
蹴り飛ばして剣を抜きつつ、距離をとる。
「魔物の知能が低くて助かったな」
ブギッィイイイ!
蹴り飛ばされた魔物が、隣の魔物にぶつかった。
仲間をさらに倒されて、残った魔物は怒っているようだ。
「お待たせしました」
門の隙間から、炎を纏ったレイピアの先が見えた。
私はとっさに後ろに飛びのいた。
瞬間、私と魔物がいた場所にだ茜色の炎が横に広がった。
残っていた魔物と絶命した魔物それぞれ、炎に焼かれて、
あっけなく灰になって崩れ去った。
怒りを込めた一撃で魔物を屠ったエレノア姫は、
レイピアを振るって、鞘に収めた。
私はそんな彼女の姿に愕然とした。
悲鳴がした方角は西門前の方角からだった。
私とエレノア姫は、足に魔力をためて跳躍するように移動する。
後ろからは、傷の癒えた兵士達が後を追ってきている。
大通りを真っ直ぐに西へ進んでいると、目の前に見覚えのある少女が
真っ赤に染まった大きな袋の様なものを抱えて蹲っていた。
伸ばされた手も真っ赤に染まっていて、少女が抱きかかえているもの、
それが血まみれの人間だと私とエレノア姫は気づく。
「ベリアル王子。 魔物は任せます」
エレノア姫の言葉に頷く。
「承知した」
少女の隣を通り過ぎて、私は西門へ向かった。
西門前は悲惨な状況に陥っていた。
兵士達は全滅し、生きている者は地面に転がってうめき声を上げていた。
魔物は、閉ざされた門に突撃を繰り返している。
門は木と鉄で出来た頑丈なものだった。
それが外側と内側、両方からの衝撃でメキメキと音を立てて
壊れつつあった。
「これは、酷いですな……」
追いかけてきた兵士達に、周りで倒れている兵士達を救護所へ運ぶように言う。
遅れて、帆馬車も何台か向かってきていた。
「君達は手を出すな」
「えっ!? ……し、しかし……」
「君達がいては、私が本気を出せない。
私には星霊シェイドが憑いている。心配はいらない」
私の言葉に、兵士は瞠目している。
「わ、わかりました……」
「怪我人を頼んだ」
私はそれだけ言うと、剣を抜き放ち魔物にゆっくりと近づく。
途中に倒れていた兵士の一人が私に声をかけた。
「き、気をつけてください……
ヤツの体に触れると危険です!!
触れただけで、あの病にかかる……!!」
「わかった。触れないように気をつけよう」
私は、助走をつけ勢いのままに剣を前へ突き出す。
魔物はこちらに気づき、振り返って避けようとしたが、
反応できずに、太腿あたりに剣が突き刺さった。
そのまま、重力魔法を込める。
グビイイイイ!!
体を震わせて、私と剣を振りほどこうとする魔物から
わざと剣を抜き、後ろに跳躍して距離をとる。
「『長くは持たぬぞ……』」
「わかっている」
シェイドの力を存分に活かした攻撃魔法を複数発動する。
ちょうど、魔物が居るのは外壁と門の影が差し掛かる場所だ。
私は剣を地面に刺し、魔法を発動した。
「突き下れ!」
外壁と門にかかる影が、無数の影で出来た槍を作り出し、
下から上に魔物を突き刺すように現れる。
重力の魔法で魔物は下へ向かう力により避ける事が出来ないはずだ。
無数の地面から突き出る槍に貫かれて、魔物は数分後に絶命した。
門の隙間から仲間の最後を見ていた残り2体の魔物は、
さっきよりもすさまじい勢いで門を打ち砕きに掛かっていた。
私は、再度駆け出し、門の隙間から魔物を攻撃しようとしたが……
門を壊しに掛かる2匹の内、片方だけ妙な動きをし出した。
鬣が奮い立ち、背中の辺りが紫色に点滅している。
嫌な予感が襲った。
私は、門の直線状にいる兵士たちに向かって声を張り上げた。
「左右へ避けろ!!」
私の声で、門の直線状に居た兵士たちが左右に飛んで避け、
私も地面を蹴って真上へ向かって跳躍して、外壁へ上る。
直後、黒い煙の様なブレスが魔物の口から放たれた。
煙はすぐに薄くなり飛散するが、周囲に薄暗い霧が漂い始めた。
「クッ……」
袖を使って、鼻と口を塞ぐ。
外壁の下では、兵士たちが咳き込みだしていた。
「まずいな……」
普段であれば、先見で今の霧息くらい事前に防げただろう。
しかし、これもゲームのせいなのだろうか?
先見が発動しない事がこんなにも厄介だとは……。
先見が発動しなかったからエレノア姫も
怪我を負ったのだろうな……。
「『黒キ者よ。
このまま外で戦ったほうが良いぞ。
我にもあの魔物の動きは予想できぬ』」
「そうだな」
私はそのまま城壁の上から外側に飛び降りる。
外側から門を壊している魔物の背中に向かって
重力魔法を込めた剣を突き刺す。
落下の勢いもそのまま加わり、そのまま急所を上から下へと突き刺した。
蹴り飛ばして剣を抜きつつ、距離をとる。
「魔物の知能が低くて助かったな」
ブギッィイイイ!
蹴り飛ばされた魔物が、隣の魔物にぶつかった。
仲間をさらに倒されて、残った魔物は怒っているようだ。
「お待たせしました」
門の隙間から、炎を纏ったレイピアの先が見えた。
私はとっさに後ろに飛びのいた。
瞬間、私と魔物がいた場所にだ茜色の炎が横に広がった。
残っていた魔物と絶命した魔物それぞれ、炎に焼かれて、
あっけなく灰になって崩れ去った。
怒りを込めた一撃で魔物を屠ったエレノア姫は、
レイピアを振るって、鞘に収めた。
私はそんな彼女の姿に愕然とした。
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