親子そろって悪役令嬢!?

マヌァ

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お茶会編。

102話『メシマズ』

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ゲームメンバーで集まってテーマを決める会が無事に終了して数日たった。

ただいま、ナナリーのサロンにマリエラと来ています。



私はベリアル様の従者であるポアソン君をお借りして来ている。

サロンは女性限定だからね。男性は入れないのだ。

そう言ったら、ベリアル様の苦肉の策がポアソン君のレンタルだった。

ポアソン君は従者だから男でも問題ない。

待機室にて、こちらを厳しく監視するのだ。たぶん。



そしてサロンのメンバーはマリエラと私だけっていう……。

最低でも2人は誘わないといけないから、

しょうがないのかもしれないけれど。



約束の手作りケーキも一緒に持って来たよ。

ナナリーには一人で後で食べてもいいと伝えたので、

今回のサロンには出さなくていい旨も伝えたよ。

籠から見えるガトーショコラにナナリーの目がキラキラしていた。

籠は食べ終わったあと、いつでもいいので返してもらう予定だ。



私とマリエラは、ナナリーに招かれてリビングに入る。



ナナリーの部屋はピンクと白のふわふわフリフリの空間だった。

白い絨毯には、赤糸でハート模様刺繍がされている。

長い白色の机とピンクの麻生地のソファー。

本棚や窓枠などにもピンクのレースで飾りつけがされている。

ドアカバーに至るまでピンクってすごい。

普段のままなのか、テーブルクロスなどは敷かれていなかったが、

布で出来たハートの形のコースターは用意されていた。



「貴女、もっと同性への態度を改めたほうがいいんじゃない?」



とはマリエラの声だ。

主催者であるナナリーは私とマリエラ、そして自分の紅茶を入れている。

ケーキスタンドには歪な形のマフィンと黒ずんだクッキーも用意されていた。

ナナリーの手作りかな?侍女がいないっぽいし、しょうがないのか。



「どういうことよ」



ムッとした表情でマリエラを睨む。

どうも、この2人は馬が合わないらしい。



「そのままの意味よ。

 私とエミリアはやさしいから貴女の招待状を受け取ってあげたけれど。

 このままじゃ、卒業できないんじゃない?」



マリエラは辛辣だ。

はっきり言わないあたり、腹黒い。

含む言葉の意味をナナリーは全部理解できているのだろうか……。



「だって誘っても皆、私に婚約者を取られるって勘違いするんだもん」



何を言っているんだこの子は……。

マリエラも呆れている。





「貴女、自分の言っている言葉で私とエミリアを見ても、何も思わないの?」



ナナリーは顔を上げて、キョトンとしてマリエラを見つめる。

しばらくそのまま何かを考えていたナナリーは、急にハッとなった。

そして俯いた。



「私は、そんなつもりないもん。

 お、お友達を増やそうと……」



オロオロしながら、ナナリーは紅茶を口に運んだ。

ゴクゴクといっきに飲んでいる。



「異性のお友達ばっかり増やして、相手を呼び捨てや愛称呼び?

 おもしろい冗談ね」



マリエラは笑っているが、目が笑っていない。 怖いわ~。



ナナリーは悔しそうな表情で今度はこちらを向いた。



「エミリア~……さま、だって、エド様の事なんとも想って無いって

 言ってたじゃないですか!」



私の名前、呼び捨てにするのかしないのかハッキリしてほしい。



「そうですね。

 私はエドワード殿下のことを兄としてしか見ていませんもの」



これは真実だからね。



「なら――」



「良くはありませんよ」



口をキュっとするナナリーに続きを言う。



「ナナリー様が、エドワード殿下の事を、本当にお慕いしているのなら、

 私はお二人を応援しますわ。

 ですが、ナナリー様は、覚悟はありますか?」



怪訝な表情のナナリーは聞き返す。



「かく……ご……?」



そんなナナリーに私は姿勢を伸ばし、まっすぐに見つめ、

王妃様仕込の所作を取る。

指先、髪の毛いっぽんいっぽんに至るまで、神経を研ぎ澄ませて

私は偉いのだという意思を言葉に込めて問う。



「エドワード王太子殿下、彼はいずれこの国の王になられます。

 その隣に立つお覚悟、そして支えるお覚悟は貴女には、ありますか?」



ゴクリ。 と唾を飲み込む音が聞こえた。

マリエラとナナリーは少しだけすくみ上がっている。





この方法は、相手に舐められないための所作だ。

動きだけで、その場を支配する。

洗練された所作は相手を威圧できるのだ。



私は『淑女の覇気』を使った。



「私は、殿下の為に産まれる前から望まれた婚約者でした。

 私のこの15年間の積み重ねを、ナナリー様は背負う覚悟はありますか?」



ゆっくりとした動きで紅茶に口をつける。



うぐっ……

ナナリーの入れた紅茶はゲキマズだった……。



ふっ……とその場の緊張が解けてしまった。


「どうして、いつもそんな言い方するのよ!!

 私だって、頑張ってる……!!」



目に涙を溜めるナナリー。



「さっき、貴方はそんなつもりじゃないって言ったわよね?

 貴女がそんなつもりじゃなくても、周りには、婚約者のいる男性を

 誑かす悪い女ってイメージが付いているってどうして理解できないの?

 エミリアが勝手に言って広めてるですって? バカらしい。

 自滅じゃない。 人のせいにしないでよ。 ウザったぃ」



マリエラはイライラしているのか、素にもどっている。

というか、言いすぎ。



味方がいないナナリーはマリエラの言葉を黙って聞くしかない。

自分が誘った相手を追い出せないし、自分の部屋だから

逃げる事もできないのだった。



「そ、そんな言い方しなくったって……」



「マリエラ。 言いすぎよ」



私に注意されて冷静になったのか、マリエラはそれ以上何も言わないで

紅茶に手を付ける。





あっ! その紅茶は――。



「ぶふううううううううううう」





その後、マリエラは大きな噴水になった―――。



何が起こったのか理解できていないナナリーは焦ってオロオロし、

私とマリエラの侍女がマリエラを介抱し、ポアソン君は待機室で爆笑していた。





ナナリーは、メシマズ女子の称号を入手したのだった。





というかナナリー、自分の作った料理の味は大丈夫なの?

まさかの味音痴かっ!?

ナナリーの属性が多すぎるよ!!



その後サロンは解散となった。

気を失ったマリエラをポアソン君が抱えて、一緒に帰りました。



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