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仮装パーティ編。
74話『一難去ってまた一難。』
しおりを挟むその後、雷雨がおさまり小降りの雨が続く談話室にエドワード殿下が戻ってきた。
続きの話は、ラナー様が開く秘密のお茶会で行うことになった。
両陛下は、帰る準備を始めた。
「ヴォルステイン侯爵家のエミリア」
アスト陛下に名前を呼ばれたので、そちらに向かう。
その手には、エドワード殿下が持ってきた箱が握られている。
「これを渡しておくよ。ジェバースから新魔法の開発について聞いた。
表立って開発する権利書と、品や必要な物資が各領を通る際にかかる税金を
免除する内容の書類だ。商品として扱うための書類も入っている。
それと、少しばかり資金を用意した。開発資金に充てなさい」
「あ、ありがとうございます! 謹んでお受けいたします」
ずっしりとした箱を受け取る。
資金援助と税を免除ということは、新薬とスクロールを大々的に国に取り組むと
言っているようなものだ。受けないわけにはいかない。
というか、結構、重大任務になってる?
Σ(゜ロ゜;)ひぃいい。
その後、私とベリアル様はモンスター部門のパーティ会場に戻った。
エドワード殿下は用事があるとかで、妖精部門の会場に入って行った。
まぁ、格好的にエドワード殿下はもうヴァンパイアじゃないもんね。
まだダンスの音楽は流れていたので、私とベリアル様は一緒にダンスを踊った。
何気に気疲れしていたけれど、踊ってみたら楽しくなって
どうでもよくなったのだった。
その後は、マリエラとレヴァンヌを加えて一緒に会場のスイーツを
全制覇したりといろいろ楽しんだ。
今更だけど、ベリアル様って大食漢なのね。
ちなみに、エドワード殿下は妖精部門でナナリーとダンスを踊ったそうだ。
ちゃっかり好感度上げをしているナナリーに私は驚いたのだった。
というか、ナナリーってダンス踊れたのね。そこに驚いた。
仮装パーティが終わったので、馬車に乗り込む。
向かうは寮の自室だ。
馬車の中で新魔法開発の権利書に目を通す。
ドルステン王国、国王アスト・エルド・ノーム・ドルステンが勅命す。
ドルステン王国ヴォルステイン領内での新魔法の総括者は
ヴォルステイン家の長女、エミリア・ヴォルステインに任命する。
新魔法開発の権限を与える、開発者として国に貢献せよ。
という内容だった。
もっと詳しく読むと、項目が多すぎてげんなりする。
要は、国外や他領に情報が漏れないようにしてくれってことだった。
特例として、一緒に開発しているベリアル様は別だ。
魔族街ヴェルマとの共同開発を認める旨も書かれていた。
同じ内容の書類は、すでにヴェルマに届けてあるらしい。
ポアソン君が教えてくれた。
これで何とか、婚約破棄した後の私の未来はなんとかやっていけそうだった。
今日は疲れた。
早く寮に帰って休みたい。
寮の自室の玄関前までベリアル様にエスコートされてお見送りされる。
ピーラの事件以来、ずっとここまで送ってくれるのだ。
箱はカーラが持っているので、
メーデが、部屋の扉に鍵を差し込み回す。
恭しく扉を開けてもらうのだ。
カチャ―――
バチバチバチバチ!
扉から光が飛び散った―――。
「エミリア!!」
とっさにベリアル様が私を抱き包む。
カーラは、すぐに私達に駆け寄ってきて、身代わりになれる位置に立った。
「エミリア様、ベリアル様、逃げる準備を!!」
ポアソン君が前に立ちはだかり、いつの間にか手に持っていた小型の短剣を
扉に放つ。
バチバチと音を立てる扉は短剣が刺さった瞬間に光が散った。
そして、短剣が刺さった部分から黒い煙が扉から立ち上がる。
黒い煙は、じりじりとこちらに向かってくる。
「きゃ!」
メーデが驚いてしりもちをついた。
(このままじゃ、メーデが!!)
私は、ベリアル様を振りほどこうとした。
けど―――
ピキイイイイイイイイイン!
メーデに煙が触れる直前に、ポアソン君が放った短剣が発光した。
強い虹色の光を浴びて、黒い煙は飛散した。
「な、なにが……?」
メーデが驚いた表情で言った。
「もう大丈夫ですよ」
笑った顔で言うポアソン君の言葉に、私とカーラはメーデに駆け寄った。
「メーデ! 怪我は!?」 「立てますか!?」
私とカーラのあわてぶりを見て、少し落ち着いたのか
メーデは自分の体を確認して、立ち上がった。
「だ、大丈夫です」
とりあえず、私達は近くの談話室に向かうことにした。
ポアソン君だけ、私の部屋の中の様子を見てくれるらしい。
複雑な感情が浮かぶが、仕方ない。ポアソン君を信じよう。
部屋を隅々まで見られることくらい、命には代えられないのだ。
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