57 / 231
学園生活開始~学園祭。
57話『学園祭準備』
しおりを挟むそれからしばらくは、サロンに呼んだり、呼ばれたりする日々を過ごした。
ベリアル様も順調に夜会を開催し、参加されているようだった。
思ったよりも早くサロンの課題は終わりそうだ。
学園祭の準備も徐々に本格的になってきている。
10月の後半にある学園祭は、1年生は劇をすることになっている。
本番直前にナナリーの服がズタボロになるイベントだ。
もちろん、犯人は私ではない。だって、そんなことしないもの。
うちのクラスの劇は、シンデレラとロミジュリに
近い内容のバッドエンドの劇だ。
『王子が下級貴族の姫に恋をするが、姫の腹違いの妹に意地悪される。
お城の舞踏会に招待され、姫にドレスを贈る王子。
贈られたドレスで出席して、王子と踊る。
姫は、踊るところを見ていた妹に嫉妬され、毒薬を飲まされ殺される。
嘆き悲しんだ王子は、姫の棺桶の前で永遠の誓いを口にする。
棺桶の姫に誓いのキスをして終了だ』
本当は、続きのストーリーがあるのだけれど、劇の時間が決まっていて
ここまでの内容になっている。
もちろん、私は裏方。
姫役はマリエラで、王子役はエドワード殿下だ。リアル王子だ。
裏方に回ったのだから、精一杯、劇を盛り上げるつもりだ。
私が考案した新魔法であるスクロールを使って、タイミングで光や
白い霧などの演出も簡単にこなせるようになるはずだ。
授業後に、クラス全員で教室で劇について話し合う。
事前に集合の連絡を聞いていたので、誰一人欠けることなく集合していた。
ちなみに、うちのクラスの名称は一ノ実クラスだ。
シンボルマークはノームの枝についた木の実の数が1つだからだ。
他のクラスになると木の実が増える。
二ノ実クラスには、イケメンsナンバー2のカイン様とケヴィン様が。
三ノ実クラスには、イケメンsナンバー3のコンラート様とナナリーがいる。
カイン様はマリエラと一緒のクラスじゃないのかって?
違うんだなぁ、これが。
本当は同じだったのを、マリエラのお願いでラナー様の口ぞえがあったのだ。
そのおかげでマリエラは一ノ実になったのである。権力ってすごー。
演出班と主演班、小道具班や衣装班に分かれてそれぞれ話し合う。
私とベリアル様はもちろん演出と小道具をはしごだ。
ああでもない、こうでもないと皆で話し合った。
「小道具には、このスクロールをお使いください」
「エミリア様、こちらは?」
クラスメイトたちは私の開発したスクロールに興味津々だった。
「これは、スクロールと言って、魔力を込めるとスクロールに
付与された魔法を発動できる道具ですわ」
私は、スクロールの使い方を説明する。
「使い方は魔法ペンと同じで魔力を込めれば発動します。
効果は、込める魔力量で調節していただきます」
一通り説明し終わる。
その後、主演班のメンバーが舞台の広さの感覚を掴むために、
会場を見たいと言い出したので、移動することになった。
劇の会場は、教養の教室だ。
舞台の設置は横10m奥行5mくらいの広さだった。
実際に動きやセリフ時の振り付けをして、感覚を覚えるのだとか。
学園祭に向けての準備と練習に励む日々を過ごす中、
学園祭1週間前という一番忙しい時期に、事件は突然起こった。
マリエラとエドワード殿下がダンスを踊るシーンを練習中に、
衣装係の子がドレスの帯を引きずったまま移動していたらしく、
その帯を踏んだエドワード殿下はマリエラと一緒に派手に転んだという。
覆いかぶさる形で倒れた際、エドワード殿下はマリエラの頭をかばうために
左腕を犠牲にし、マリエラは、倒れた際に足を捻ったのだった。
左腕の骨にヒビが入った殿下と、足を捻挫したマリエラは
もちろん主役の座から降りたのだった。
その後、王子役と姫役の後釜に回ってきたのが、私とベリアル様だった。
クラスでの投票の結果だ。多数決に勝てるわけが無かった……。
「二人とも、すまないな。
出来るだけ練習には立ち会うようにするよ」
エドワード殿下が申し訳なさそうに言った。
マリエラも、少し大げさなくらいに包帯を巻いて杖をついている。
彼女のお世話をする侍女に支えられて悲しい表情だった。
「エミリア。
私もエドワード王子と同じで、出来る限り練習を手伝います」
私とベリアル様は、劇に向けて練習を頑張るのだった。
あきまへん! 演劇なんてやったことありまへんがな!!
焦って変な関西弁? が久しぶりに出てしまった。
というか、本番一週間前ってどんな試練よ。神様。
0
お気に入りに追加
866
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
元おっさんの幼馴染育成計画
みずがめ
恋愛
独身貴族のおっさんが逆行転生してしまった。結婚願望がなかったわけじゃない、むしろ強く思っていた。今度こそ人並みのささやかな夢を叶えるために彼女を作るのだ。
だけど結婚どころか彼女すらできたことのないような日陰ものの自分にそんなことができるのだろうか? 軟派なことをできる自信がない。ならば幼馴染の女の子を作ってそのままゴールインすればいい。という考えのもと始まる元おっさんの幼馴染育成計画。
※この作品は小説家になろうにも掲載しています。
※【挿絵あり】の話にはいただいたイラストを載せています。表紙はチャーコさんが依頼して、まるぶち銀河さんに描いていただきました。
最底辺の落ちこぼれ、実は彼がハイスペックであることを知っている元幼馴染のヤンデレ義妹が入学してきたせいで真の実力が発覚してしまう!
電脳ピエロ
恋愛
時野 玲二はとある事情から真の実力を隠しており、常に退学ギリギリの成績をとっていたことから最底辺の落ちこぼれとバカにされていた。
しかし玲二が2年生になった頃、時を同じくして義理の妹になった人気モデルの神堂 朱音が入学してきたことにより、彼の実力隠しは終わりを迎えようとしていた。
「わたしは大好きなお義兄様の真の実力を、全校生徒に知らしめたいんです♡ そして、全校生徒から羨望の眼差しを向けられているお兄様をわたしだけのものにすることに興奮するんです……あぁんっ♡ お義兄様ぁ♡」
朱音は玲二が実力隠しを始めるよりも前、幼少期からの幼馴染だった。
そして義理の兄妹として再開した現在、玲二に対して変質的な愛情を抱くヤンデレなブラコン義妹に変貌していた朱音は、あの手この手を使って彼の真の実力を発覚させようとしてくる!
――俺はもう、人に期待されるのはごめんなんだ。
そんな玲二の願いは叶うことなく、ヤンデレ義妹の暴走によって彼がハイスペックであるという噂は徐々に学校中へと広まっていく。
やがて玲二の真の実力に危機感を覚えた生徒会までもが動き始めてしまい……。
義兄の実力を全校生徒に知らしめたい、ブラコンにしてヤンデレの人気モデル VS 真の実力を絶対に隠し通したい、実は最強な最底辺の陰キャぼっち。
二人の心理戦は、やがて学校全体を巻き込むほどの大きな戦いへと発展していく。
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
妹がいなくなった
アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。
メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。
お父様とお母様の泣き声が聞こえる。
「うるさくて寝ていられないわ」
妹は我が家の宝。
お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。
妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる