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学園生活開始~学園祭。
37話『密偵』
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※ベリアル様視点です。
「陛下やっるなー。さすが!」
そう声をかけてきたのは、私の従者ポアソンだ。
言葉遣いが違う? こいつは普段はこんな砕けた言葉遣いだ。
ちゃんと場所で使い分けてくれるのなら私は文句はない。
私の部屋は、簡素だ。
ワインレッドの絨毯に金糸で刺繍されているのは魔法陣だ。
この魔法陣には会話遮断の効果がついている。
絨毯の上での会話内容は漏れない。
すぐ近くにいても、絨毯に乗っていなければ会話できないのだ。
絨毯の上には長方形の黒檀の机が1つ。
横長い赤皮のソファーが2つだ。
調度品の類はほとんどない。
学園で必要な書類や教材が棚にあるだけだ。
棚の横にはエミリア嬢との部屋を繋ぐ魔法陣だ。
「何が言いたい?」
私はポアソンを睨んだ。たちの悪い笑顔だ。
「僕はさ、エミリア様ならいいと思うよ! 応援してる!」
悪い笑みをうかべたポアソンが答える。
そう、こいつは性格が悪い。
こいつの素をエミリア嬢にだけは見せたくないな。
「陛下だって、自分の気持ちに気づいてるんでしょ?
だから、あんな行動取った。 ちがう?」
あんな行動とは、エミリア嬢にしたことだろう。
自分でもあれは少しばかりやりすぎたと思う。
「だが、彼女は……」――迷惑なのではないだろうか?
「もー、陛下自信もちなって!
大丈夫だって! 脈有りだって!」
笑いながら言うポアソンの言葉は信用できない。
こいつは、私の苦悩を面白がっている。まったくタチの悪い。
「もう、この話は終わりだ!」
私は話を打ち切った。
聞きたいことは他にもあるからな。
「それで、ポアソン。 あの少女の動向は?」
「それがさー。彼女、変わってるんだよね。
独り言が多いっていうのかさ。
誰も聞いてないと思ってるのか、めっちゃエミリア様の悪口言ってたよ」
ポアソンの正体は隠密行動をする密偵だ。
こいつは特殊な聖霊師で微聖霊を飛ばして通信できる。
微聖霊をつけた密偵達の行動すら筒抜けだ。
「ふむ……」
そして、調べさせたことが本当なら、
やはり、ナナリーがリリーナで間違いない?
あそこまで憎悪をエミリア嬢に向けるところを見るとそうとしか思えないな。
「あ、それとね」
ポアソンが報告の続きを言う。
「彼女の周りを飛び回っている妖精がさ、
1人で森の奥に向かって飛んでたんだよ」
「森に? そこには何かあるのか?」
なぜ、妖精がそんなところに? 仲間でもいるのだろうか?
「んーと、森自体は何もないかな。一応、この学園の敷地内だけど。
森の奥に湖があって、恋人達の憩い場とかいう名前がついてたよ。
普通は湖に向かうには、森を迂回して馬車とかで行くんだけどさ。
その妖精が、湖に向かってビンで何かを撒いていたんだ」
「なんだそれは?」
両手を肩の前で広げて言うポアソン。
「さーね。ビンの中身は不明。ビン自体は魔法で作られててさ。
中身撒いたあとに消えちゃってたんだ。
あのビンと中身がなんだったのかはさっぱり」
その湖には何かあるのか?
いべんと だったか。
「明日、エミリア嬢に詳しく聞くしかないだろうな」
ポアソンは「そうだね」とだけ答えた。
「引き続きお前の密偵に彼女達をさぐらせろ」
私はポアソンにそう命じて、下がらせた。
「陛下やっるなー。さすが!」
そう声をかけてきたのは、私の従者ポアソンだ。
言葉遣いが違う? こいつは普段はこんな砕けた言葉遣いだ。
ちゃんと場所で使い分けてくれるのなら私は文句はない。
私の部屋は、簡素だ。
ワインレッドの絨毯に金糸で刺繍されているのは魔法陣だ。
この魔法陣には会話遮断の効果がついている。
絨毯の上での会話内容は漏れない。
すぐ近くにいても、絨毯に乗っていなければ会話できないのだ。
絨毯の上には長方形の黒檀の机が1つ。
横長い赤皮のソファーが2つだ。
調度品の類はほとんどない。
学園で必要な書類や教材が棚にあるだけだ。
棚の横にはエミリア嬢との部屋を繋ぐ魔法陣だ。
「何が言いたい?」
私はポアソンを睨んだ。たちの悪い笑顔だ。
「僕はさ、エミリア様ならいいと思うよ! 応援してる!」
悪い笑みをうかべたポアソンが答える。
そう、こいつは性格が悪い。
こいつの素をエミリア嬢にだけは見せたくないな。
「陛下だって、自分の気持ちに気づいてるんでしょ?
だから、あんな行動取った。 ちがう?」
あんな行動とは、エミリア嬢にしたことだろう。
自分でもあれは少しばかりやりすぎたと思う。
「だが、彼女は……」――迷惑なのではないだろうか?
「もー、陛下自信もちなって!
大丈夫だって! 脈有りだって!」
笑いながら言うポアソンの言葉は信用できない。
こいつは、私の苦悩を面白がっている。まったくタチの悪い。
「もう、この話は終わりだ!」
私は話を打ち切った。
聞きたいことは他にもあるからな。
「それで、ポアソン。 あの少女の動向は?」
「それがさー。彼女、変わってるんだよね。
独り言が多いっていうのかさ。
誰も聞いてないと思ってるのか、めっちゃエミリア様の悪口言ってたよ」
ポアソンの正体は隠密行動をする密偵だ。
こいつは特殊な聖霊師で微聖霊を飛ばして通信できる。
微聖霊をつけた密偵達の行動すら筒抜けだ。
「ふむ……」
そして、調べさせたことが本当なら、
やはり、ナナリーがリリーナで間違いない?
あそこまで憎悪をエミリア嬢に向けるところを見るとそうとしか思えないな。
「あ、それとね」
ポアソンが報告の続きを言う。
「彼女の周りを飛び回っている妖精がさ、
1人で森の奥に向かって飛んでたんだよ」
「森に? そこには何かあるのか?」
なぜ、妖精がそんなところに? 仲間でもいるのだろうか?
「んーと、森自体は何もないかな。一応、この学園の敷地内だけど。
森の奥に湖があって、恋人達の憩い場とかいう名前がついてたよ。
普通は湖に向かうには、森を迂回して馬車とかで行くんだけどさ。
その妖精が、湖に向かってビンで何かを撒いていたんだ」
「なんだそれは?」
両手を肩の前で広げて言うポアソン。
「さーね。ビンの中身は不明。ビン自体は魔法で作られててさ。
中身撒いたあとに消えちゃってたんだ。
あのビンと中身がなんだったのかはさっぱり」
その湖には何かあるのか?
いべんと だったか。
「明日、エミリア嬢に詳しく聞くしかないだろうな」
ポアソンは「そうだね」とだけ答えた。
「引き続きお前の密偵に彼女達をさぐらせろ」
私はポアソンにそう命じて、下がらせた。
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