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わくわく山荷葉探索
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イアニスを先頭に、中には入らず塀に沿って旅館の周りを進む。ダンジョン化しているという敷地内へ突入する前に、リヒャルトがそれまで出入りしていた地点の確認をするらしい。
慎重だ。未知の探索とは、こういうものか。俺はど素人だから、冒険者二人の言うことにはきちんと従わなくては。慎重な行動は大賛成です。
イアニスの後ろに俺、その後ろのしんがりがリヒャルトで、俺たちの上をヒュンヒュン飛び回りながらおはぎコウモリがついてくる。
「位置の目星はついてるのかい?」
「つかん」
潔いほどキッパリとリヒャルトは返答した。
リヒャルトがここへくる時は、いつも高い所から見下ろす位置にこの旅館が見えてくるらしい。本当に全然違うルートで来たんだな。
レダーリア山は景色が似通っていて、遠景から位置を推し量るのが困難だ。こうして歩いて、行き当たるのを待つしかない。
リヒャルトの声がかかるまで、15分は歩いたろうか。石塀の一部が崩れ落ち、中に入れるようになっている箇所を見つけた。
少し離れた所には火おこしの後がある。ここで間違いないそうだ。
「まさかここ、お前がぶっ壊したのか?」
「そうだ。ボロいから容易かった」
「乱暴だな…」
石の塀は無惨に崩されて、大きな隙間から中が覗ける。爆破でもしたのかよ。
いよいよ中へ突入だ。イアニスはアイテムボックスから小さな盾を取り出し、左腕に装着している。リヒャルトは特に何もせず、おはぎコウモリは焚き火跡の傍でりんごを齧っている。
「おい、何くつろいでんだ」
「シャリシャリ…」
「あれ、いつの間にそんなもの貰ったの?」
「やっていないぞ」
てっきりリヒャルトがまたりんごを出してあげたのかと思ったが、集落の小屋で渡して以来何も与えていないという。
「もう行くよ」とイアニスが声をかけると、おはぎコウモリは無念そうに食事を中断して俺の方に飛んで来た。その際、食べかけのりんごが一瞬でぱっと消えてしまう。
「なんだ、今の?」
「キィキィ」
「ねぇ君、りんごをどこにやったの?」
「キキッ?キィ」
至近距離をヒュンヒュン飛びまわるので思わず腕を掲げると、おはぎコウモリはすかさず俺の腕にとまった。そうして、イアニスの問いかけに答えるように、何もない所からりんごを出して見せる。さっきの食べかけだ。
「オマエらと同じ…って、まさかアイテムボックス?君が?」
「キィ!」
「魔物がそんなスキルを持つわけないだろう」
「キ、キィ~」
おはぎコウモリはムッとした様子で、何度もりんごを出し入れしだした。手品を様々と見せつけられては、否定のしようがない。どうやら本当にアイテムボックスのようだと、リヒャルトもイアニスも驚いている。俺は関心して思わず尋ねた。
「魔物にもスキルってあるのか?」
「そりゃ勿論。ただ種族によって大抵決まっていて、プラムバットなら風魔法強化とか…持っていたとしても、その程度なはずだけど」
「キキーィ」
あ、ドヤ顔してる。
「特殊個体だと?フン、何を大層な。ただの色ボケな変わり者の間違いだろう」
「ギギッ」
リヒャルトに嘲られ、おはぎコウモリは気分を害したようだ。羽についた鉤爪がギュッと俺の腕に食い込む。いててて!
「痛えよやめろ!もうこっちで大人しくしてろ、お前は」
「キィ~~」
「あんたもコウモリ相手に煽るなよ、大人気ない奴だな」
「何だと!?貴様こそ悪口を言ってたろうが!」
「なぁ、もう行こうよ…」
イアニスが呆れ気味に催促する。
俺はリヒャルトとの言い合いをやめ、ふてくされたおはぎコウモリを背中に張り付けて旅館の敷地へと足を踏み入れた。
いよいよダンジョンか。目的は中にある旅館で、精霊爺さんの言っていた「装束」を探し出す事だ。
「管理人の装束ってことは、従業員のいる裏方を探す方が良さそうだな」
イアニスの後に続きながら、なんとなく思った事を口にする。
ここが見た目通りの旅館なら、主人と呼ばれるのは管理人というより責任者だろう。それなら、事務室とか社長室的な場所が怪しいな。旅館に社長室があるのか分からんが。
「従業員って……」
「ん?だってここ、温泉宿だったんだろう?」
「あ、そういえば…そうだったね」
こちらの世界でも、温泉や大衆浴場といったものはあるらしい。ただこの国ではあまり馴染みがないようだ。
「めぐり湯温泉だのと名前があったが、そもそもめぐり湯とは何だ?」
「そのままだ。湯船が色んなところにあって、ブラブラ渡り歩いて入るんだ」
「何故そんな面倒なことを」
「なぜって、それが楽しいんだよ。そういう風習を楽しむというか……まぁ人によるけどさ」
温泉街のあちこちに点在してる場合もあるし、ホテルの中で幾つかの湯を巡るというのもある。めぐり湯と名のつく旅館だから、ここも湯船が複数あるのだろう。
「ここを見つけた時に探索したんだろ。湯船とか見なかったか?」
「見た事ないものばかりで何とも判断がつかん。それらしい池は確か…あっちで見かけた」
「行ってみようか」
池かね。しかしリヒャルトは温泉も大浴場も行ったことがないと言うから、湯船を池だと思っているのかもしれない。
慎重だ。未知の探索とは、こういうものか。俺はど素人だから、冒険者二人の言うことにはきちんと従わなくては。慎重な行動は大賛成です。
イアニスの後ろに俺、その後ろのしんがりがリヒャルトで、俺たちの上をヒュンヒュン飛び回りながらおはぎコウモリがついてくる。
「位置の目星はついてるのかい?」
「つかん」
潔いほどキッパリとリヒャルトは返答した。
リヒャルトがここへくる時は、いつも高い所から見下ろす位置にこの旅館が見えてくるらしい。本当に全然違うルートで来たんだな。
レダーリア山は景色が似通っていて、遠景から位置を推し量るのが困難だ。こうして歩いて、行き当たるのを待つしかない。
リヒャルトの声がかかるまで、15分は歩いたろうか。石塀の一部が崩れ落ち、中に入れるようになっている箇所を見つけた。
少し離れた所には火おこしの後がある。ここで間違いないそうだ。
「まさかここ、お前がぶっ壊したのか?」
「そうだ。ボロいから容易かった」
「乱暴だな…」
石の塀は無惨に崩されて、大きな隙間から中が覗ける。爆破でもしたのかよ。
いよいよ中へ突入だ。イアニスはアイテムボックスから小さな盾を取り出し、左腕に装着している。リヒャルトは特に何もせず、おはぎコウモリは焚き火跡の傍でりんごを齧っている。
「おい、何くつろいでんだ」
「シャリシャリ…」
「あれ、いつの間にそんなもの貰ったの?」
「やっていないぞ」
てっきりリヒャルトがまたりんごを出してあげたのかと思ったが、集落の小屋で渡して以来何も与えていないという。
「もう行くよ」とイアニスが声をかけると、おはぎコウモリは無念そうに食事を中断して俺の方に飛んで来た。その際、食べかけのりんごが一瞬でぱっと消えてしまう。
「なんだ、今の?」
「キィキィ」
「ねぇ君、りんごをどこにやったの?」
「キキッ?キィ」
至近距離をヒュンヒュン飛びまわるので思わず腕を掲げると、おはぎコウモリはすかさず俺の腕にとまった。そうして、イアニスの問いかけに答えるように、何もない所からりんごを出して見せる。さっきの食べかけだ。
「オマエらと同じ…って、まさかアイテムボックス?君が?」
「キィ!」
「魔物がそんなスキルを持つわけないだろう」
「キ、キィ~」
おはぎコウモリはムッとした様子で、何度もりんごを出し入れしだした。手品を様々と見せつけられては、否定のしようがない。どうやら本当にアイテムボックスのようだと、リヒャルトもイアニスも驚いている。俺は関心して思わず尋ねた。
「魔物にもスキルってあるのか?」
「そりゃ勿論。ただ種族によって大抵決まっていて、プラムバットなら風魔法強化とか…持っていたとしても、その程度なはずだけど」
「キキーィ」
あ、ドヤ顔してる。
「特殊個体だと?フン、何を大層な。ただの色ボケな変わり者の間違いだろう」
「ギギッ」
リヒャルトに嘲られ、おはぎコウモリは気分を害したようだ。羽についた鉤爪がギュッと俺の腕に食い込む。いててて!
「痛えよやめろ!もうこっちで大人しくしてろ、お前は」
「キィ~~」
「あんたもコウモリ相手に煽るなよ、大人気ない奴だな」
「何だと!?貴様こそ悪口を言ってたろうが!」
「なぁ、もう行こうよ…」
イアニスが呆れ気味に催促する。
俺はリヒャルトとの言い合いをやめ、ふてくされたおはぎコウモリを背中に張り付けて旅館の敷地へと足を踏み入れた。
いよいよダンジョンか。目的は中にある旅館で、精霊爺さんの言っていた「装束」を探し出す事だ。
「管理人の装束ってことは、従業員のいる裏方を探す方が良さそうだな」
イアニスの後に続きながら、なんとなく思った事を口にする。
ここが見た目通りの旅館なら、主人と呼ばれるのは管理人というより責任者だろう。それなら、事務室とか社長室的な場所が怪しいな。旅館に社長室があるのか分からんが。
「従業員って……」
「ん?だってここ、温泉宿だったんだろう?」
「あ、そういえば…そうだったね」
こちらの世界でも、温泉や大衆浴場といったものはあるらしい。ただこの国ではあまり馴染みがないようだ。
「めぐり湯温泉だのと名前があったが、そもそもめぐり湯とは何だ?」
「そのままだ。湯船が色んなところにあって、ブラブラ渡り歩いて入るんだ」
「何故そんな面倒なことを」
「なぜって、それが楽しいんだよ。そういう風習を楽しむというか……まぁ人によるけどさ」
温泉街のあちこちに点在してる場合もあるし、ホテルの中で幾つかの湯を巡るというのもある。めぐり湯と名のつく旅館だから、ここも湯船が複数あるのだろう。
「ここを見つけた時に探索したんだろ。湯船とか見なかったか?」
「見た事ないものばかりで何とも判断がつかん。それらしい池は確か…あっちで見かけた」
「行ってみようか」
池かね。しかしリヒャルトは温泉も大浴場も行ったことがないと言うから、湯船を池だと思っているのかもしれない。
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