2 / 6
エピソード0 後編
しおりを挟む
「飽きた」
俺はなぜか、そんな3文字を口にした。一瞬、その真意が自分でも理解出来なかった。
いや、理解できないのは数秒が経過した今でも同じことだ。――それは脳裏に引っかかって、解こうとすればするほど複雑性を増していく毛色のように、俺の脳ミソは熱を上げていく。
右足を上にして足を組んで、ゲンコツを作り親指を下顎の裏にくっ付けて、石像のように固まって思考に全神経を費やした。考えて考えて、考え抜いた。
太陽が東へ沈む頃になるまで時間を費やして、それでも答えは出なかった。俺には俺自身の思想が理解できないようにすら感じた。
そして考えることをやめた…。
そして新しく物ごとを考える。「飽きた」この言葉が指す意味とは何か。
俺は、このなんの価値もない廃村という寝床を守るために1人で見回りをして、外部からの存在を始末するなんて下らないことに100数年を費やしていた。――怠惰に塗れていた。
吸血鬼として悠久の時間を生きていくことに飽きたのかもしれない。
そう考えた時、ふとアイツの姿を思い出す。
「あぁ、こえいうコトだったのか…」
柄にもなく、浮世離れをした思考をしてしまったのかもしれない。
『かもしれない』そう、自分でも理解できない。俺は俺の思考が理解できない…。妙に達観した感覚が脳ミソを支配する。
時々、故郷が恋しくなってくる。
今はどんな姿をしているのだろうか?想像にかたくない。
どこだったかも忘れてしまった。アイツはこういう時、頭蓋骨を破壊して脳ミソをいじり回していたけれど、俺にはそれができない。
そして思考の根幹に立ち戻る――。
俺は他に、今までに何をしていただろうか。人を殺していた。吸血鬼を殺していた。豆腐を切り崩すように、或いはスポンジを千切る様に。それは例外なく淘汰できる事柄だった。
「それは虐殺だった」
思考の答に辿り着いてしまった。
人間の虐殺をやめよう。これが「飽き」を払拭する方法だった。
そう決めたのならば、何も無くなった廃村には用がない。
廃屋の戸棚から、辛うじて経年による破損を間逃れていた方位磁針を黒衣に忍ばせる。
沈みきった太陽を右手に、姿を現した月を左にして、南へ歩みを進めていく。
暖かい土地へ、人の住む場所へ。未だに何の予定も決まっていない。ただ南へ。
俺はなぜか、そんな3文字を口にした。一瞬、その真意が自分でも理解出来なかった。
いや、理解できないのは数秒が経過した今でも同じことだ。――それは脳裏に引っかかって、解こうとすればするほど複雑性を増していく毛色のように、俺の脳ミソは熱を上げていく。
右足を上にして足を組んで、ゲンコツを作り親指を下顎の裏にくっ付けて、石像のように固まって思考に全神経を費やした。考えて考えて、考え抜いた。
太陽が東へ沈む頃になるまで時間を費やして、それでも答えは出なかった。俺には俺自身の思想が理解できないようにすら感じた。
そして考えることをやめた…。
そして新しく物ごとを考える。「飽きた」この言葉が指す意味とは何か。
俺は、このなんの価値もない廃村という寝床を守るために1人で見回りをして、外部からの存在を始末するなんて下らないことに100数年を費やしていた。――怠惰に塗れていた。
吸血鬼として悠久の時間を生きていくことに飽きたのかもしれない。
そう考えた時、ふとアイツの姿を思い出す。
「あぁ、こえいうコトだったのか…」
柄にもなく、浮世離れをした思考をしてしまったのかもしれない。
『かもしれない』そう、自分でも理解できない。俺は俺の思考が理解できない…。妙に達観した感覚が脳ミソを支配する。
時々、故郷が恋しくなってくる。
今はどんな姿をしているのだろうか?想像にかたくない。
どこだったかも忘れてしまった。アイツはこういう時、頭蓋骨を破壊して脳ミソをいじり回していたけれど、俺にはそれができない。
そして思考の根幹に立ち戻る――。
俺は他に、今までに何をしていただろうか。人を殺していた。吸血鬼を殺していた。豆腐を切り崩すように、或いはスポンジを千切る様に。それは例外なく淘汰できる事柄だった。
「それは虐殺だった」
思考の答に辿り着いてしまった。
人間の虐殺をやめよう。これが「飽き」を払拭する方法だった。
そう決めたのならば、何も無くなった廃村には用がない。
廃屋の戸棚から、辛うじて経年による破損を間逃れていた方位磁針を黒衣に忍ばせる。
沈みきった太陽を右手に、姿を現した月を左にして、南へ歩みを進めていく。
暖かい土地へ、人の住む場所へ。未だに何の予定も決まっていない。ただ南へ。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
まったく知らない世界に転生したようです
吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし?
まったく知らない世界に転生したようです。
何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?!
頼れるのは己のみ、みたいです……?
※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。
私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。
111話までは毎日更新。
それ以降は毎週金曜日20時に更新します。
カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。
永遠の愛を誓う吸血鬼のアナタ
影葉 柚希
ファンタジー
吸血鬼のヒーローと人間のヒロインによる真実の愛を紡いでいく物語
世界の真実と種を超えた愛の果てに見付かる事実はどんな輝きを見せるのか
それは現代に生きる人々にどんな物語を語るのかはまだ未知数ではあるのかも知れないがそれでも静かに語られていく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
転生王子はダラけたい
朝比奈 和
ファンタジー
大学生の俺、一ノ瀬陽翔(いちのせ はると)が転生したのは、小さな王国グレスハートの末っ子王子、フィル・グレスハートだった。
束縛だらけだった前世、今世では好きなペットをモフモフしながら、ダラけて自由に生きるんだ!
と思ったのだが……召喚獣に精霊に鉱石に魔獣に、この世界のことを知れば知るほどトラブル発生で悪目立ち!
ぐーたら生活したいのに、全然出来ないんだけどっ!
ダラけたいのにダラけられない、フィルの物語は始まったばかり!
※2016年11月。第1巻
2017年 4月。第2巻
2017年 9月。第3巻
2017年12月。第4巻
2018年 3月。第5巻
2018年 8月。第6巻
2018年12月。第7巻
2019年 5月。第8巻
2019年10月。第9巻
2020年 6月。第10巻
2020年12月。第11巻 出版しました。
PNもエリン改め、朝比奈 和(あさひな なごむ)となります。
投稿継続中です。よろしくお願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる