今日は僕の命日

あやめ_綾眼

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   俺は混血の吸血鬼である―――。
 『混血の吸血鬼』と言っても、実際はそんなに良いものじゃない。――そう割り切って考えられるのには理由があるのだ。
  それは――単に"元人間"というに過ぎないのだ。

 吸血鬼だからって得をすることなんて、数で言えば人間とあまり変わらない。ただ『得意不得意』があるだけだ。吸血鬼なんて夢があるものじゃない。

 俺の頭には、常にこびり付いて離れない記憶がある。読者には、それを少しでも消化させる為に、これから続くとっても見苦しい余談に付き合って欲しい。――不死身だからって、MARVELのデッドプールにキャラクターを寄せただなんて、くれぐれも考えないで欲しい。

 そういえば、「暇は吸血鬼を殺す」という言葉があるらしいが、アレは本当なんだ。――これから少しだけ、吐いて捨てるほど繰り返した夢の話しをする。

 俺はあの時、眠ろうとしていた。そう――「していた」のだ。俺は吸血鬼になったばかりで寝方もまともに知らないような状態で、思考を停止させることだけに、長い時間をかけて四苦八苦していた。
 さながら熊の冬眠のように、身体の活動能力を極限まで低下させて数年に渡る眠り付こうというその時、人体が焼けるような匂いが鼻を触ったのだ。

 、と言うのは正確な言い方ではない。ただ、焦げ付いた匂いが俺をその場所にたどり着かせた。
  アイツは勝手に、俺を吸血鬼にした。その真意は俺も理解しているつもりだった。

  アイツは時間をかけて灰になっていくその身体を…、首だけでこちらを向いて「ごめんな、私は勝手なんだ」ただそれだけの言葉を置いて逝った。
  その言葉の真意は今でも分からない。ただ、「勝手」という台詞はアイツの口癖だった…。

  あの時の出来ごとを、何度思い出しただろう――。
  あれから300年、十数年周期で数年単位の睡眠を繰り返す俺は、昼間この部屋で起床する度に思い出すのだ。
「飽きた」
  俺はなぜか、そんな3文字を口にする――。
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