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37話 一章完結 俺達の戦いはこれからだ
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「真人、朝だよ?」
いつものように水雪が起こしにくる。
水雪の髪から香るミントのような懐かしい匂いが俺の鼻腔を蕩かす。
優しく肩を揺らされて、今日もいい一日になるなと、俺はそっと目をあけた。
「水雪、おは……」
「真人、早く起きなさいよ?」
なぜか夜音の声まで聞こえてきた。
「真人君や、体調はどうかな?」
なんと響までいるじゃねーか。
俺の横には水雪、扉の前には夜音と響がいる。
朝から美少女三人に起こされるのはナイスなシチュエーションだが、それは幼馴染が包丁をもってないときに限る。
水雪は包丁を俺のお腹に向けて、ダークサイドな眼差しを向けていた。
「み、水雪……どうした? なにがあった?」
「……それは真人しかしらないこと」
ゴゴゴゴ……こ、これはまた俺はしくじったみたいだ。
「真人、朝ごはんは私が作ったんだから、食べなさいよね?」
夜音がそんなことを言う。
「あ、あ、おー……あれ? ではなんで水雪さん包丁もってるんですか……ね?」
「包丁を持ちたい気分だったから」
な、なんだよ……気分って……こえーよ……。
「オーケー、水雪話あおう? 民主主義バンザイだ」
水雪はコクリと頷く。
「私もいろいろ聞きたいことある」
「よ、よし、とりあえず、包丁をしまってくれないか? そこにあると起き上がったら痛いだろ?」
「……大丈夫。痛み感じないようにいっきに9つの急所をつく」
ちょ、おま、それ……九頭龍閃……飛天御剣流だぞ……?
包丁でそんなことしようとするなよ。
「ち、ちがう! そうじゃない、いいから包丁をどけろ」
「……私は先に下降りてるから、早くきてよね? 冷ましたら許さないからね?」
そういって夜音は去っていく。
お前、この状況見て、何も感じないのか?
やっぱりあいつの頭はいかれてる。ダンジョンのことしか考えてないオオバカだ。
「ネゴシエータになるのと、PTを組むのはわかった。でも夜音を泊めるなんて聞いてない」
「や、それは、あいつがまた野宿とか言い出して……」
「……だったら、私もここに泊まる」
「おまんちすぐ隣じゃねーか」
「なに?」
いちいち包丁をちらつかせるな。こえーよ。
あの大人しかった水雪はどこにいったんだ……。
「いやいや、親御さんとかにも話ししないとだし、ね? ほら……いろいろ世間体とか、ね?」
俺はそっと、身体をずらして……包丁から避けるように身体を起こそうとしたが、ん、なんだ身体が動かん。
「いや、なんだ? いたたたた!!」
「真人、どうしたの?」
「あちゃ~……」
響が、手を額に当ててやっぱりかぁと言わんばかりの顔を向けている。
「真人さぁ、私が渡した薬いっきに三つも飲んだでしょ?」
俺の机の上においてあるピルケールを指して言う。
「お、おう……」
「ふつー、一粒ずつ飲むでしょ? あれってさ無理やり魔石の力を解放させて、一時的に力を強くする薬、謂わばドーピング。それを一気に三つも飲んだら、しばらく身体動かせないと思うよ?」
「なっ、おい、それは言っとけ、いたたた……」
首を持ち上げるだけでも全身が悲鳴をあげる。
例えるなら、全身筋肉痛の5倍くらい痛い。
我慢して動くこともできないくらいに痛い。
軽く泣けるぞ。
「はぁ、しょーがない、しばらくお世話してあげるから、大人しく寝ときなさい」
「真人のお世話は私がする」
「ん-……いつもなら雪ちゃんにお願いするんだけど、私の作った薬であーなっちゃたわけだしなー」
「早く、来なさいよ! 冷めるでしょ? 先に食べるわよー!?」
下から夜音の声が聞こえてきた。
なんだ、食べずに待ってたのか。
以外にそういうところはきっちりしてるんだよな。
「ぐぉぉ……腹はめちゃくちゃ空いてるのに、身体がマジで動かん……いてー……」
「しょうがないなー、とりあえず、朝ごはん持ってきてあげる」
響は、そういって部屋を出て行った。
残った水雪は、包丁を俺に向けたまま首を可愛く傾げて聞いてきた。
「お父さんと、お母さんがいいっていったら泊まって真人のお世話していい?」
「お、そりゃ……おー、まぁー……なー?」
だめだ、怖すぎて、これ以上は拒否できん。
あとは頼みました。お父さんお母さん!
きっぱり水雪を教育してください!!
筋肉痛5倍と冷や汗でビショビショなふがいない俺では、これ以上はできませんでした!
「……わかった。学校終わったら、お父さんとお母さんに話してみる」
そう言って、包丁をおろした。
はぁ、こんな調子で、俺達はダンジョン攻略できるのか……。
人生の攻略方法を教えてほしいくらいだぜ。
水雪が、ベッド横のカーテンを開けると、俺の気分とは正反対な雲ひとつ無い眩しいくらいの快晴だ。
俺は空に向かってため息を一つついてから、今日という残された一日を謳歌しようと決めた。
我が家にあつまった自称最強のパーティメンバーと共に生きるために。
~第一章 完~
いつものように水雪が起こしにくる。
水雪の髪から香るミントのような懐かしい匂いが俺の鼻腔を蕩かす。
優しく肩を揺らされて、今日もいい一日になるなと、俺はそっと目をあけた。
「水雪、おは……」
「真人、早く起きなさいよ?」
なぜか夜音の声まで聞こえてきた。
「真人君や、体調はどうかな?」
なんと響までいるじゃねーか。
俺の横には水雪、扉の前には夜音と響がいる。
朝から美少女三人に起こされるのはナイスなシチュエーションだが、それは幼馴染が包丁をもってないときに限る。
水雪は包丁を俺のお腹に向けて、ダークサイドな眼差しを向けていた。
「み、水雪……どうした? なにがあった?」
「……それは真人しかしらないこと」
ゴゴゴゴ……こ、これはまた俺はしくじったみたいだ。
「真人、朝ごはんは私が作ったんだから、食べなさいよね?」
夜音がそんなことを言う。
「あ、あ、おー……あれ? ではなんで水雪さん包丁もってるんですか……ね?」
「包丁を持ちたい気分だったから」
な、なんだよ……気分って……こえーよ……。
「オーケー、水雪話あおう? 民主主義バンザイだ」
水雪はコクリと頷く。
「私もいろいろ聞きたいことある」
「よ、よし、とりあえず、包丁をしまってくれないか? そこにあると起き上がったら痛いだろ?」
「……大丈夫。痛み感じないようにいっきに9つの急所をつく」
ちょ、おま、それ……九頭龍閃……飛天御剣流だぞ……?
包丁でそんなことしようとするなよ。
「ち、ちがう! そうじゃない、いいから包丁をどけろ」
「……私は先に下降りてるから、早くきてよね? 冷ましたら許さないからね?」
そういって夜音は去っていく。
お前、この状況見て、何も感じないのか?
やっぱりあいつの頭はいかれてる。ダンジョンのことしか考えてないオオバカだ。
「ネゴシエータになるのと、PTを組むのはわかった。でも夜音を泊めるなんて聞いてない」
「や、それは、あいつがまた野宿とか言い出して……」
「……だったら、私もここに泊まる」
「おまんちすぐ隣じゃねーか」
「なに?」
いちいち包丁をちらつかせるな。こえーよ。
あの大人しかった水雪はどこにいったんだ……。
「いやいや、親御さんとかにも話ししないとだし、ね? ほら……いろいろ世間体とか、ね?」
俺はそっと、身体をずらして……包丁から避けるように身体を起こそうとしたが、ん、なんだ身体が動かん。
「いや、なんだ? いたたたた!!」
「真人、どうしたの?」
「あちゃ~……」
響が、手を額に当ててやっぱりかぁと言わんばかりの顔を向けている。
「真人さぁ、私が渡した薬いっきに三つも飲んだでしょ?」
俺の机の上においてあるピルケールを指して言う。
「お、おう……」
「ふつー、一粒ずつ飲むでしょ? あれってさ無理やり魔石の力を解放させて、一時的に力を強くする薬、謂わばドーピング。それを一気に三つも飲んだら、しばらく身体動かせないと思うよ?」
「なっ、おい、それは言っとけ、いたたた……」
首を持ち上げるだけでも全身が悲鳴をあげる。
例えるなら、全身筋肉痛の5倍くらい痛い。
我慢して動くこともできないくらいに痛い。
軽く泣けるぞ。
「はぁ、しょーがない、しばらくお世話してあげるから、大人しく寝ときなさい」
「真人のお世話は私がする」
「ん-……いつもなら雪ちゃんにお願いするんだけど、私の作った薬であーなっちゃたわけだしなー」
「早く、来なさいよ! 冷めるでしょ? 先に食べるわよー!?」
下から夜音の声が聞こえてきた。
なんだ、食べずに待ってたのか。
以外にそういうところはきっちりしてるんだよな。
「ぐぉぉ……腹はめちゃくちゃ空いてるのに、身体がマジで動かん……いてー……」
「しょうがないなー、とりあえず、朝ごはん持ってきてあげる」
響は、そういって部屋を出て行った。
残った水雪は、包丁を俺に向けたまま首を可愛く傾げて聞いてきた。
「お父さんと、お母さんがいいっていったら泊まって真人のお世話していい?」
「お、そりゃ……おー、まぁー……なー?」
だめだ、怖すぎて、これ以上は拒否できん。
あとは頼みました。お父さんお母さん!
きっぱり水雪を教育してください!!
筋肉痛5倍と冷や汗でビショビショなふがいない俺では、これ以上はできませんでした!
「……わかった。学校終わったら、お父さんとお母さんに話してみる」
そう言って、包丁をおろした。
はぁ、こんな調子で、俺達はダンジョン攻略できるのか……。
人生の攻略方法を教えてほしいくらいだぜ。
水雪が、ベッド横のカーテンを開けると、俺の気分とは正反対な雲ひとつ無い眩しいくらいの快晴だ。
俺は空に向かってため息を一つついてから、今日という残された一日を謳歌しようと決めた。
我が家にあつまった自称最強のパーティメンバーと共に生きるために。
~第一章 完~
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