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19話 だから戦闘するなら言ってくれ
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「……で、首尾よくここまでこれたわけだが」
「もちろん先へ進むのよ」
「ま、そうだよなぁ」
俺達は以前と同様、キマイラを倒したところまで来た。
前回の経験があった為、特に苦戦することもなくキマイラを消滅させることができた。
もちろん戦略を考えたのは経験豊富なネゴシエイター様。
「わざわざ投げ飛ばさなくても、あんたの力があればおもいっきり顎を蹴りあげれば、お腹の核を叩けるはずよ」
「どうだろうな。約束はできんが、とりあえずやってみるか」
ご推察の通り、やってみれば本当にあっけなくキマイラは腹を見せ、夜音が叩いて終わり。
まあ、1発では不十分だった為、追撃にもう一発入れなければいけなかったところが、格好がつかなかったのだが結果オーライとしよう。
そこについては夜音も特に口を挟まず、
「やっぱり私の目に狂いはないわね」
とか、言ってたので想定内ではあったのだろう。
そのまま部屋の奥へ進むと、通路があった。
この通路もやはり、洞窟というよりは、人工的な通路にしか見えないもので、どちらかというと神殿とか遺跡とかそういった類のものだろう。
通路としか言い様がない狭い通路はすぐに終わり、片道2車線ほどの広い通路へ出た。
「なんかいるな」
「そうね。さっきのキマイラに比べたら雑魚だけど、気は抜かないようにね」
空気を読んだように、リザードマン? と、狼が現れた。
正式な名称は知らないが、RPGでよく出てくる鎧と盾、片手剣を装備したトカゲだ。
想像できる範疇の敵ではあるが、ゲームと違いリアルにトカゲだったりするので、けっこう気持ち悪い。
目とか口元はトカゲっていうより、ワニとか、むしろ恐竜っぽい。
「なんかこうさ、見た目って大事だよな……」
「何の話?」
「いやさ、あのトカゲとか、ゲームなんかでみるとなんとも思わないけどリアルに見るとここまでグロイのかと」
「ああ、確かに最初はそうかもね。ま、そのうち慣れるわよ」
「慣れる程、来なければいけないのか」
「そうよ。諦めなさい」
「言っとくが、それなりの分前は貰うからな?」
「そんなの当たり前じゃない。正当な報酬は支払うに決まってるでしょ」
まあそうだろうな。
そういうやつだよお前は。
ふと横を見ると、夜音は何かを考えるようにモンスターを見ている。
「……真人」
「なんだ?」
「私はあのトカゲの相手をするから、横にいる狼を何とかしてもらえる?」
「構わんが……狼が俺を狙ってくれるとも限らんだろう?」
「そうね。恐らく私が突っ込んだら全員こっちに来るわ」
「だよな」
「だから、狼はそっちに弾き飛ばす」
「倒せよ!?」
あのモンスターがどれほど強いのか知らないが、先ほどあいつらを雑魚と言ったところを見ると大したことない相手なのは確かだ。
恐らく夜音なら一刀両断するだろう。
同じ一振りなら倒してくれればいいのに。
「あんたが正当な報酬を得られるように仕事を与えてあげてんのよ」
「さいですか。お優しいことですね……」
「まあ、あんたの言いたいこともわからなくもないけどね。ちょっと確かめたいこともあるのよ」
「あん?」
「じゃ、行くわよ」
夜音は言い終わると同時に相手に向かって駆けた。
それに反応した狼が真っ先に夜音に向かう。
狼は大きく跳躍し夜音に牙を剥き、その首筋に突き立てようとするが、
「パスッ!」
ドゴッ
夜音は峰打ちで俺の方へと狼を弾き飛ばした。
器用なやつだ。
「それじゃよろしく」
キマイラの時と言い、おれは動物に縁があるんだろうか。
「お前には悪いが、俺も殺されるわけには行かないんだ。恨むなよ」
狼はすぐにこちらへと狙いを変え、数秒、睨み合った。
距離はおおよそ五メートルといったところか。
俺が動かないのを見ると、狼はこちらへ向かって一気に駆け出した。
躍動感溢れる動きで獲物を仕留めに掛かる獣に、やはり恐怖を感じずに入られないが、俺はまだ動かない。
あと、二メートル、おおよそ狼の射程に入ったところで俺は眼前に迫る狼へと一歩踏み出した。
体をひねり、半身になると、間合いを外された狼の背中に掌底を叩き込み、
「ギャン!」
苦悶の声をあげる狼をそのまま左足で蹴り飛ばす。
狼は壁に打ち付けられ、床に落ちたかと思うと、キマイラのように光の粒子となって消えた。
「まあ確かに、キマイラほどじゃないな」
「でしょ? あんなのばっか出てこられたら流石に厳しいわよ」
すでにリザードマンを葬ったのか、こちらへ向かいながら夜音が俺の呟きに返答した。
「で、あんたは、今、何をしたのかわかってる?」
「狼を素手で倒す高校生がどこに居るんだよって話か? それは知らねえよ」
「まあそれもあるけど、そうじゃないわ。もっと重要な部分があるでしょう」
「あん?」
「あんたは、能力を使わず、素手で、番人を倒したの」
「……ほう?」
「うん」
「どうやって?」
「あのねぇ……そんなの私が聞きたいわよ」
夜音は、はぁ……と大きくため息をついた。
「もちろん先へ進むのよ」
「ま、そうだよなぁ」
俺達は以前と同様、キマイラを倒したところまで来た。
前回の経験があった為、特に苦戦することもなくキマイラを消滅させることができた。
もちろん戦略を考えたのは経験豊富なネゴシエイター様。
「わざわざ投げ飛ばさなくても、あんたの力があればおもいっきり顎を蹴りあげれば、お腹の核を叩けるはずよ」
「どうだろうな。約束はできんが、とりあえずやってみるか」
ご推察の通り、やってみれば本当にあっけなくキマイラは腹を見せ、夜音が叩いて終わり。
まあ、1発では不十分だった為、追撃にもう一発入れなければいけなかったところが、格好がつかなかったのだが結果オーライとしよう。
そこについては夜音も特に口を挟まず、
「やっぱり私の目に狂いはないわね」
とか、言ってたので想定内ではあったのだろう。
そのまま部屋の奥へ進むと、通路があった。
この通路もやはり、洞窟というよりは、人工的な通路にしか見えないもので、どちらかというと神殿とか遺跡とかそういった類のものだろう。
通路としか言い様がない狭い通路はすぐに終わり、片道2車線ほどの広い通路へ出た。
「なんかいるな」
「そうね。さっきのキマイラに比べたら雑魚だけど、気は抜かないようにね」
空気を読んだように、リザードマン? と、狼が現れた。
正式な名称は知らないが、RPGでよく出てくる鎧と盾、片手剣を装備したトカゲだ。
想像できる範疇の敵ではあるが、ゲームと違いリアルにトカゲだったりするので、けっこう気持ち悪い。
目とか口元はトカゲっていうより、ワニとか、むしろ恐竜っぽい。
「なんかこうさ、見た目って大事だよな……」
「何の話?」
「いやさ、あのトカゲとか、ゲームなんかでみるとなんとも思わないけどリアルに見るとここまでグロイのかと」
「ああ、確かに最初はそうかもね。ま、そのうち慣れるわよ」
「慣れる程、来なければいけないのか」
「そうよ。諦めなさい」
「言っとくが、それなりの分前は貰うからな?」
「そんなの当たり前じゃない。正当な報酬は支払うに決まってるでしょ」
まあそうだろうな。
そういうやつだよお前は。
ふと横を見ると、夜音は何かを考えるようにモンスターを見ている。
「……真人」
「なんだ?」
「私はあのトカゲの相手をするから、横にいる狼を何とかしてもらえる?」
「構わんが……狼が俺を狙ってくれるとも限らんだろう?」
「そうね。恐らく私が突っ込んだら全員こっちに来るわ」
「だよな」
「だから、狼はそっちに弾き飛ばす」
「倒せよ!?」
あのモンスターがどれほど強いのか知らないが、先ほどあいつらを雑魚と言ったところを見ると大したことない相手なのは確かだ。
恐らく夜音なら一刀両断するだろう。
同じ一振りなら倒してくれればいいのに。
「あんたが正当な報酬を得られるように仕事を与えてあげてんのよ」
「さいですか。お優しいことですね……」
「まあ、あんたの言いたいこともわからなくもないけどね。ちょっと確かめたいこともあるのよ」
「あん?」
「じゃ、行くわよ」
夜音は言い終わると同時に相手に向かって駆けた。
それに反応した狼が真っ先に夜音に向かう。
狼は大きく跳躍し夜音に牙を剥き、その首筋に突き立てようとするが、
「パスッ!」
ドゴッ
夜音は峰打ちで俺の方へと狼を弾き飛ばした。
器用なやつだ。
「それじゃよろしく」
キマイラの時と言い、おれは動物に縁があるんだろうか。
「お前には悪いが、俺も殺されるわけには行かないんだ。恨むなよ」
狼はすぐにこちらへと狙いを変え、数秒、睨み合った。
距離はおおよそ五メートルといったところか。
俺が動かないのを見ると、狼はこちらへ向かって一気に駆け出した。
躍動感溢れる動きで獲物を仕留めに掛かる獣に、やはり恐怖を感じずに入られないが、俺はまだ動かない。
あと、二メートル、おおよそ狼の射程に入ったところで俺は眼前に迫る狼へと一歩踏み出した。
体をひねり、半身になると、間合いを外された狼の背中に掌底を叩き込み、
「ギャン!」
苦悶の声をあげる狼をそのまま左足で蹴り飛ばす。
狼は壁に打ち付けられ、床に落ちたかと思うと、キマイラのように光の粒子となって消えた。
「まあ確かに、キマイラほどじゃないな」
「でしょ? あんなのばっか出てこられたら流石に厳しいわよ」
すでにリザードマンを葬ったのか、こちらへ向かいながら夜音が俺の呟きに返答した。
「で、あんたは、今、何をしたのかわかってる?」
「狼を素手で倒す高校生がどこに居るんだよって話か? それは知らねえよ」
「まあそれもあるけど、そうじゃないわ。もっと重要な部分があるでしょう」
「あん?」
「あんたは、能力を使わず、素手で、番人を倒したの」
「……ほう?」
「うん」
「どうやって?」
「あのねぇ……そんなの私が聞きたいわよ」
夜音は、はぁ……と大きくため息をついた。
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