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1.私が公爵令嬢になるまで
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突然ですが、私には今の自分とは違う人生を歩んでいた時の記憶があります。
それはとても一言で言い表せられる記憶の長さではないのだけど、頑張って簡単に言うなら『日本という国で女子大学生として生活していた』時の記憶、かな。
父と母と兄という4人家族の元に生まれてから女子大学生として生きてきた20年余りの記憶を持ったまま私は所謂『転生』というものをしたようで、今度は日本なんていう国は存在しないいわゆる異世界に生まれ変わったみたいなのです。
前世の記憶の最後は曖昧ではっきりとは覚えていません。
だけど、兄が必死に私の名前を呼んでいたことだけは薄っすらと覚えています。
おそらくだけどあの時前世の私は死んでしまったのでしょう、生まれ変わるってことはそういうことですよね?
そして今の私の説明もしたほうがいいですよね。
今の私は6歳の女の子として孤児院で生活しています。
孤児院は教会も兼ねていて、私は赤ちゃんの状態で教会の玄関の前に捨てられていたそうです。
それを見つけた神父様はそれはとてもとてもビックリした、と話してくれました。
孤児院中が大騒ぎになったみたいなのですが、なんでそんなに?と思いますよね、私も初めて聞いた時そう思いました。
そこで判明した衝撃的な事実なんですけど、何やらこの私が転生した世界は男女比率が20:1らしくて…つまり女性がとても産まれにくい世界みたいなのです。
そんな世界ですから、女性はそれは大事に大事に宝物のように育てられます。
なのにその女性となる女の赤ちゃんが捨てられていただなんて一大事なのです。
当然のごとく私がお世話になっている孤児院にも女の子は私一人で、後は男の子ばかりです。
更にもう一つの衝撃的事実を話さなければなりません。
この世界の男女比率だけでも私には驚きの事実だったんですけど、なんと美醜の概念も逆転してるみたいで…それも男性だけです。
つまりですね、前世の記憶のある私が素敵だな、とかかっこいいなと思うビジュアルの男性は醜くて、ちょっとあまり深くはお近づきにはなりたくないなと思うような男性が絶世の美男子だそうです。
女性への美的感覚は前世と同じなのになんで男性だけ…って思いますよね、男女比といい美醜感覚といいもう当初私は頭の中がおかしくなりそうでした。
それでも体は幼くても中身は20歳、今はその事実をちゃんと受け止めています。
それに神父様や孤児院の子達にとても感謝しているのです。
実は私は1歩も教会の外に出たことがありません。
他の子達が教会の外でお手伝い等していても私はずっと教会奥の部屋の中で過ごしています。
まだ6歳の私に出来るのは皆に迷惑がかからないようにおとなしくしていることだけで、何の役にもたってません、むしろ迷惑をかけていると思います。
私はあまり世間に詳しくないのですが、女の子が孤児院にいると知れられることが良くないことだということは神父様や皆の態度から分かります。
女性が貴重なこの世界では女の子を欲しがる人が後を絶たないのです。
孤児院に幼い女の子がいるなんてことがバレたらきっと沢山の人が押し寄せてきて、ぜひ養子に迎えたいと言われたりとかお金にものを言わせて私を連れ帰ろうとする人が後を絶たないのでしょう。
そんな私の意志を無視したことにならないように神父様は私を教会の奥から出さないのだと思います。
私は皆の優しさで生活出来ているのです、例えこの教会から1歩も外に出られないとしても私は感謝の気持ちでいっぱいでした。
ずっとここにいたいと思ってました、でも隠し事はやっぱり永遠には出来ない事なのです、それが今のこの状態なのでしょう。
私は現状に溜息が出そうになるのをグッと堪えました、私の横には神父様が座っていて机を挟んだ目の前にはこの世界では美男子なのであろうお顔で身なりの整った貴族っぽい男性が座っています、椅子が壊れないか心配になる体格です。
「初めまして、お嬢さん。私はエドワード・キャベンディッシュという。」
神父様に呼ばれてこの部屋に入った時からずっと見られていることは分かっていましたが、ゆっくりと神父様に近づいて横に座った途端に声をかけられました。
私はどうしていいのか分からず思わず横にいる神父様の顔を見上げてしまいましたが、神父様はいつもと同じ優しく微笑みながら私に名前を名乗るように促します。
「は、初めまして。フィリスといいます。」
「フィリスちゃんか、いい名前だね。神父様が名付けて下さったのかい?」
わたしがはい、と頷きながら言うと目の前の男性はそうか、と言ってニコリと笑いました。
そして再度私の名前を呼ぶと、今日この教会に来た要件を話し出したんですが、まぁ殆どが予想通りでした。
「フィリスちゃん、私は君を私の家の養子として迎えたいと思っているんだがどうだろう。私の家は公爵の位を授かっているから君に決して苦労はかけないと誓えるし、今よりもずっと裕福な暮らしが出来るよ。何より君は女の子だ、女の子は国の宝であって大切に守られるべき存在なんだよ。」
「…私はいまの生活でもとても幸せです」
「そうか…でもフィリスちゃん、君はとても可愛い。これから成長していけばもっと可愛く、そして美しくなっていくだろう。そんな君をこの教会で守っていくのは限界があると思わないかい?現に隠していたはずの君の存在は一部の外部に漏れてしまっている。となると君は勿論この教会も危険に晒される可能性があるんだよ。」
私はハッとしてもう一度神父様の顔を見上げると、少し困ったような顔をした神父様と目が合いました。
私は私のことばかり考えていて神父様やこの教会のことを考えていなかったのです。
私はそんな自分がとても恥ずかしくなりました。
そして一度グッと目を瞑るとゆっくりと目を開いて目の前の男性をしっかりと自分の視界に写します。
相変わらず男性は笑顔で私の方を見ていました。
「わかりました、私エドワード・キャベンディッシュ様の養女になります。私神父様達に甘えるばかりで自分のことしか考えてなくて…ごめんなさい。」
私が最後に謝ると、男性は一瞬驚いた顔をしましたが再びニコリと笑いました。
「まさか女性に謝られるとは…君は見かけといい性格といいまるで物語に出てくる女の子みたいだね。それから私のことはこれからはお父様、と呼んでくれると嬉しいよ。」
「はい、エドワードお父様」
素直にお父様と呼ぶと男性はそれはとても嬉しそうに微笑みました。
こうして私はただのフィリスからフィリス・キャベンディッシュ公爵令嬢となったのです。
それはとても一言で言い表せられる記憶の長さではないのだけど、頑張って簡単に言うなら『日本という国で女子大学生として生活していた』時の記憶、かな。
父と母と兄という4人家族の元に生まれてから女子大学生として生きてきた20年余りの記憶を持ったまま私は所謂『転生』というものをしたようで、今度は日本なんていう国は存在しないいわゆる異世界に生まれ変わったみたいなのです。
前世の記憶の最後は曖昧ではっきりとは覚えていません。
だけど、兄が必死に私の名前を呼んでいたことだけは薄っすらと覚えています。
おそらくだけどあの時前世の私は死んでしまったのでしょう、生まれ変わるってことはそういうことですよね?
そして今の私の説明もしたほうがいいですよね。
今の私は6歳の女の子として孤児院で生活しています。
孤児院は教会も兼ねていて、私は赤ちゃんの状態で教会の玄関の前に捨てられていたそうです。
それを見つけた神父様はそれはとてもとてもビックリした、と話してくれました。
孤児院中が大騒ぎになったみたいなのですが、なんでそんなに?と思いますよね、私も初めて聞いた時そう思いました。
そこで判明した衝撃的な事実なんですけど、何やらこの私が転生した世界は男女比率が20:1らしくて…つまり女性がとても産まれにくい世界みたいなのです。
そんな世界ですから、女性はそれは大事に大事に宝物のように育てられます。
なのにその女性となる女の赤ちゃんが捨てられていただなんて一大事なのです。
当然のごとく私がお世話になっている孤児院にも女の子は私一人で、後は男の子ばかりです。
更にもう一つの衝撃的事実を話さなければなりません。
この世界の男女比率だけでも私には驚きの事実だったんですけど、なんと美醜の概念も逆転してるみたいで…それも男性だけです。
つまりですね、前世の記憶のある私が素敵だな、とかかっこいいなと思うビジュアルの男性は醜くて、ちょっとあまり深くはお近づきにはなりたくないなと思うような男性が絶世の美男子だそうです。
女性への美的感覚は前世と同じなのになんで男性だけ…って思いますよね、男女比といい美醜感覚といいもう当初私は頭の中がおかしくなりそうでした。
それでも体は幼くても中身は20歳、今はその事実をちゃんと受け止めています。
それに神父様や孤児院の子達にとても感謝しているのです。
実は私は1歩も教会の外に出たことがありません。
他の子達が教会の外でお手伝い等していても私はずっと教会奥の部屋の中で過ごしています。
まだ6歳の私に出来るのは皆に迷惑がかからないようにおとなしくしていることだけで、何の役にもたってません、むしろ迷惑をかけていると思います。
私はあまり世間に詳しくないのですが、女の子が孤児院にいると知れられることが良くないことだということは神父様や皆の態度から分かります。
女性が貴重なこの世界では女の子を欲しがる人が後を絶たないのです。
孤児院に幼い女の子がいるなんてことがバレたらきっと沢山の人が押し寄せてきて、ぜひ養子に迎えたいと言われたりとかお金にものを言わせて私を連れ帰ろうとする人が後を絶たないのでしょう。
そんな私の意志を無視したことにならないように神父様は私を教会の奥から出さないのだと思います。
私は皆の優しさで生活出来ているのです、例えこの教会から1歩も外に出られないとしても私は感謝の気持ちでいっぱいでした。
ずっとここにいたいと思ってました、でも隠し事はやっぱり永遠には出来ない事なのです、それが今のこの状態なのでしょう。
私は現状に溜息が出そうになるのをグッと堪えました、私の横には神父様が座っていて机を挟んだ目の前にはこの世界では美男子なのであろうお顔で身なりの整った貴族っぽい男性が座っています、椅子が壊れないか心配になる体格です。
「初めまして、お嬢さん。私はエドワード・キャベンディッシュという。」
神父様に呼ばれてこの部屋に入った時からずっと見られていることは分かっていましたが、ゆっくりと神父様に近づいて横に座った途端に声をかけられました。
私はどうしていいのか分からず思わず横にいる神父様の顔を見上げてしまいましたが、神父様はいつもと同じ優しく微笑みながら私に名前を名乗るように促します。
「は、初めまして。フィリスといいます。」
「フィリスちゃんか、いい名前だね。神父様が名付けて下さったのかい?」
わたしがはい、と頷きながら言うと目の前の男性はそうか、と言ってニコリと笑いました。
そして再度私の名前を呼ぶと、今日この教会に来た要件を話し出したんですが、まぁ殆どが予想通りでした。
「フィリスちゃん、私は君を私の家の養子として迎えたいと思っているんだがどうだろう。私の家は公爵の位を授かっているから君に決して苦労はかけないと誓えるし、今よりもずっと裕福な暮らしが出来るよ。何より君は女の子だ、女の子は国の宝であって大切に守られるべき存在なんだよ。」
「…私はいまの生活でもとても幸せです」
「そうか…でもフィリスちゃん、君はとても可愛い。これから成長していけばもっと可愛く、そして美しくなっていくだろう。そんな君をこの教会で守っていくのは限界があると思わないかい?現に隠していたはずの君の存在は一部の外部に漏れてしまっている。となると君は勿論この教会も危険に晒される可能性があるんだよ。」
私はハッとしてもう一度神父様の顔を見上げると、少し困ったような顔をした神父様と目が合いました。
私は私のことばかり考えていて神父様やこの教会のことを考えていなかったのです。
私はそんな自分がとても恥ずかしくなりました。
そして一度グッと目を瞑るとゆっくりと目を開いて目の前の男性をしっかりと自分の視界に写します。
相変わらず男性は笑顔で私の方を見ていました。
「わかりました、私エドワード・キャベンディッシュ様の養女になります。私神父様達に甘えるばかりで自分のことしか考えてなくて…ごめんなさい。」
私が最後に謝ると、男性は一瞬驚いた顔をしましたが再びニコリと笑いました。
「まさか女性に謝られるとは…君は見かけといい性格といいまるで物語に出てくる女の子みたいだね。それから私のことはこれからはお父様、と呼んでくれると嬉しいよ。」
「はい、エドワードお父様」
素直にお父様と呼ぶと男性はそれはとても嬉しそうに微笑みました。
こうして私はただのフィリスからフィリス・キャベンディッシュ公爵令嬢となったのです。
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