シナリオ

さつまいも

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【シナリオ】雨のち晴れ…。

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~登場人物~
山中亮一(35)開発主任
吉田弥生(21)OL
雪原靖(28)山中の部下
横山唯(20)山中の部下

○オフィス街 (朝)
   雨が降っている街並み。
   様々なオフィスが立ち並び、皆足早に傘をさして歩いている。

○谷中ビル全景 (朝)
   谷中ビルの一階がマジックミラーになっていて、”YEA SOFT”と看板が出ている。

○YEA SOFTの中 (朝)
   十畳くらいのスペースにコンピュータや機材がひしめき合っている。
   その隙間に段ボールで日差しを遮るように、山中亮一(35)が寝ている。
   枕元のピカっきーの目覚まし時計が八時半を指し、けたたましい音がなる。
   山中は起き上がり、目覚まし時計を持ち、自分の席に着く。
   山中の背後にマジックミラーになっている窓になっている。

○谷中ビルの前・道路 (朝)
   吉田弥生(21)のパンプスが水溜まりに入り、跳ねる。
   弥生は目の前のマジックミラーになった窓で、水跳ねを確認する。
   スカートのストッキングとスカートの裾が泥跳している。
   弥生は溜息を付く。
弥生「さっいてー」
   マジックミラーにイーダと舌を出し、口を尖らせ、立ち去る。

○YEA SOFTの中 (朝)
   弥生が窓越しにイーダしているのを見、山中は面をくらう。
   弥生が立ち去ると、山中は声を立てて笑う。
雪原靖(28)「何か面白いことありました?」
   振り向き、山中の背後を見ると、雪原が立っている。
   山中は笑いつつ応える。
山中「いやね、今、女の子にイーダされちゃったんだ…」
   雪原は顔をしかめる。
   雪原のその表情を見て、山中はプーっと吹き出す。
   雪原は、更に怪訝な顔をする。
山中「いや、ゴメンゴメン。マジックミラーって向こうからは、鏡の変わりになるらしくってさ…」
雪原「それって、ちょっとロングヘアの、二十歳くらいの背のちっちゃい人じゃないですか?」
山中「そこまでは覚えてないな…」
   雪原は、山中の背後の窓を指す。
雪原「その子って、いつもそこの窓で、洋服とかチェックしてくんですよね」
山中「いつも?」
雪原「明日、またこの時間、見てみるといいですよ」
山中「へぇー」
   山中うなずき窓を見る。窓の外は傘を差しながら、慌ただしく何人もの人が、通り過ぎて行く。

○同 (昼)
   ひたすら二台のパソコンに向かう山中。
   横山唯(20)が山中に、書類を渡す。
   山中は、話しながら判子を押すと、横山にっこり微笑み去る。
   山中は、目覚まし時計を見る。
   時計はパソコンに向かい、また仕事をする。

○同・ビル全景 (夕→夜)
   雨は上がり、ビルに夕日が当たり、周りの景色を反射している。
   その反射がどんどん狭まり、やがて闇に包まれ、空には星が輝いている。

○同・オフィス内 (夜中)
   席の周りは電気が消え、狭いオフィスには山中一人である。
   山中はオフィスを見回し、ピカっきーの目覚まし時計を見る。
   時計は三時を指している。
   山中は立ち上がると、溜息を付き机の上のカップに残っている部分に線がはっきり付いた珈琲を飲み干し、腕を回し、ストレッチした後、八時半に目覚ましをかけ、席に着くと、仕事を始める。
   間もなく突っ伏して寝てしまう。

○同・ビル全景 (夜中→朝)
   一筋の太陽の光が少しずつ広がり、空がどんどん赤らんでくる。

○同・オフィス内 (朝)
   山中の机の上でピカっきーの目覚ましがけたたましくなる。
   山中は、ぼーっと立ち上がり、珈琲を淹れ席に着き飲んでいると、弥生が立ち止まり、洋服と化粧を確認している。
   山中は、くすりと笑う。

○同・オフィス内 (朝)
   昨日と違う服装の弥生が立ち止まり、洋服と化粧を確認
   している。山中は、それを見つめる。

○同・オフィス内 (朝)
   昨日と違う服装の弥生が立ち止まり、洋服と化粧を確認する姿を、見つめる山中。

○同・オフィス内 (朝)
   昨日と違う服装の弥生が立ち止まり、洋服と化粧を確認している。
   山中は、珈琲を飲みながら見つめる。
唯の声「主任、最近早起きですね」
   いきなり声をかけられ慌てる山中は、珈琲をこぼしてシャツを汚す。
   唯がポケットからハンカチを出して、山中のシャツを拭く。
   山中は照れて硬直する。
山中「あ、これからシャワー浴びて着替えるから、気にしないで…」
唯「昨日も泊まりですか?主任、働き過ぎ…」
山中「まあ、主任って云ったって、技術者は僕だけだしね。営業の雪原君とかが、仕事取ってきてくれる分、頑張らないと…」
唯「でも…」
山中「成績を上げれば、本社だって人員を増やしてくれるさ」
   山中は引き出しの中からタオルと、お風呂セット出す。
山中「さ、シャワー浴びて頭はっきりさせて、仕事しないと…」
唯「あ、シャツ洗濯しますから持ってきて下さい!!」
   山中は、微笑む。
唯「それと! 今晩! 夕飯食べに行きましょう。
 たまには、主任、きちんと食事しないといけませんから!」
山中「ああ、そうだね、行こう…」
   山中、部屋の外に消える。

○レストラン「リオランテ」全景 (夜)
   ライトアップされた看板には「レストラン リオランテ」と書かれている。

○同・店内 (夜)
   山中と唯が食事をしている。
唯「会社出たの久しぶりなんじゃないですか? 主任」
山中「あ…、そうかも知れないな。ここずっと納期に追われていたから…」
唯「そのうち倒れますよ…」
山中「ま、何とかなるさ。好きでやってる仕事だしね。ま、それで女房は子供連れて出て行っちゃったんだけどさ」
唯「寂しく無いんですか?」
山中「ま、今は仕事して、子供が残してったピカっきーの目覚ましに起こして貰えれば幸せかな?」
唯「主任、今、好きな人とかっていないんですか?」
   山中、驚き唯の顔を見る。
山中「え?」
   山中は思い出したように笑うが、唯の視線に微笑む。
山中「さぁ…、今は仕事が恋人だよ…」
雪原の声「あ、主任と横山君じゃないか!!」
   背後から聞こえた雪原の声に、山中振り向くと雪原と弥生が立っている。
山中「あ、君は…」
雪原「あ、主任には前に話しましたよね、こちらは吉田弥生さんって言って、うちの会社の近くで働いてるんですよ」
山中「ああ、そうなんだ…」
弥生「あの…」
雪原「こちらが、俺の会社の開発主任で山中さん、こっちが事務の横山さん」
   山中と唯は頭を下げる。弥生は二人に微笑む。

○YEA SOFTの中 (夜中)
   仕事をしている山中。思い出したように振り向き、窓の外を見る。

○同・オフィス内 (朝)
   弥生が立ち止まり、洋服と化粧を確認している。山中は、溜息を付きながら珈琲を飲み見つめる。
山中「これじゃ、パブロフの犬だな…」

○同・オフィス内 (夕)
   山中はモニターに向かうが、なかなか仕事がはかどらない。
   作業中の山中のパソコンがフリーズし、動かなくなる。
   山中は溜息を付き、パソコンの電源を切り、窓の外を見ると、空は曇天。
   雪原と弥生が口論をしながら歩いてくる。
   空からぽつり、ぽつりと雨が降り出す。
   弥生は必死に雪原に何かを訴えるようにすがっている。
   雪原は冷たくも見える態度でその手を払う。
   弥生は泣き出している。
   雪原は何かを怒鳴り、弥生を残し、立ち去る。
   空からは激しい雨が降り始める。
   すれ違う人に不振に見られ弥生は、窓の方を向く。
   しかし、山中が見ていることに気づかない。
   山中、引き出しから傘を取り出し、外に走る。

○同・廊下 (夕)
   山中が走って駆け抜ける。

○谷中ビルの前・道路 (夕)
   山中傘を差して、弥生に差し出す。

(了)
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