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王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
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それを関心の表れと受け取ったのか、キューベルルは満足げに目を細めた。
ニヤリと笑う唇が、下品に歪んで見える。
「そうよ。頭を下げて、セレンティアへ戻って来るのなら、貴女を王女へ戻すよう口添えしてあげてもいいわ」
アシュレイは目を瞠って言葉を失った。
何を馬鹿なことを……と思ったが、キューベルルは本気で言っているらしい。
「……恐れ入ります、込み入った話になるようでしたら、場所を移されたほうがよろしいかと」
不穏な空気を察して、リックがアシュレイとキューベルルの間に割って入る。
「そうね。今日はお祝いの席だもの。お継母様、ちょっと外に出ましょう」
「まあ、何ですの。其方、目上の者の話に割って入るとは、無礼であろう。それに外に出ろとは何事なの」
しかし、リックの介入がキューベルルの気に障ったらしい。アシュレイの腕を摑むと、扇でリックの頬を打擲した。
「リック!」
その刹那、アシュレイは考えるより先に身体が動いていた。
腕を振りほどいてキューベルルを突き飛ばすと、リックの元へ駆け寄った。
「大丈夫!? ごめんなさい……継母が」
「ええ、問題ありません。これは、失礼を」
リックは頬に手をやりつつ、キューベルルに頭を下げた。
「リックは悪くないわ。お継母様、私にならともかく、異国の殿方に手を上げるなんてあんまりです。リックに謝ってください」
「何を世迷いごとを。親し気に男の名を呼ぶなど、どこまで恥知らずなの。その上わたくしに謝罪しろですって?」
火に油を注ぐ結果になり得るとわかっていても、我慢できない。
「私のことなら構いません。アシュレイ様、どうか」
リックは気を遣って申し出るが、退きたくない。
リックは共に勝利を勝ち取った戦友だ。しかし、即位式の祝宴を揉め事で汚したくもない……。
「どうなさいましたか。私の侍従が何か失礼を?」
わなわなと震えるキューベルルと、どう収拾をつけるべきか迷い始めたアシュレイが対峙していると、幸か不幸かギルフォードが現れる。
対立する面子に不穏な空気を感じたのか、会場の耳目は集まりつつあった。
ギルフォードは目敏く部下の騒動を察知したらしい。
アシュレイとリックは揃って頭を下げる。
「申し訳ございません。全て私の不徳の致すところです」
「伯爵様……! ご無沙汰しております」
キューベルルは口元を扇で隠して、目を吊り上げる。
「貴方がこの者の主人ですの? いったいどのような躾をしておられるの?」
「私はベラミ領伯を仰せつかっているギルフォード・ベラミと申します。私の部下が何かご迷惑をお掛けしたのでしょうか?」
ギルフォードは変わらずの、穏やかな口調で尋ねた。
「そうよ。この者が立場も弁えず、私に指図したのです。ですから、身の程を教えて差し上げようとしただけですわ」
キューベルルは鼻息荒く言い放つ。
「それは大変失礼いたしました。ところで、貴女様は……」
「こちらはセレンティア国王妃、キューベルル様であらせられます」
アシュレイは間に入るようにして進み出た。
ギルフォードもアシュレイにとっての大恩人だから、キューベルルの理不尽に巻き込みたくない。
強い思いが働いた。
ニヤリと笑う唇が、下品に歪んで見える。
「そうよ。頭を下げて、セレンティアへ戻って来るのなら、貴女を王女へ戻すよう口添えしてあげてもいいわ」
アシュレイは目を瞠って言葉を失った。
何を馬鹿なことを……と思ったが、キューベルルは本気で言っているらしい。
「……恐れ入ります、込み入った話になるようでしたら、場所を移されたほうがよろしいかと」
不穏な空気を察して、リックがアシュレイとキューベルルの間に割って入る。
「そうね。今日はお祝いの席だもの。お継母様、ちょっと外に出ましょう」
「まあ、何ですの。其方、目上の者の話に割って入るとは、無礼であろう。それに外に出ろとは何事なの」
しかし、リックの介入がキューベルルの気に障ったらしい。アシュレイの腕を摑むと、扇でリックの頬を打擲した。
「リック!」
その刹那、アシュレイは考えるより先に身体が動いていた。
腕を振りほどいてキューベルルを突き飛ばすと、リックの元へ駆け寄った。
「大丈夫!? ごめんなさい……継母が」
「ええ、問題ありません。これは、失礼を」
リックは頬に手をやりつつ、キューベルルに頭を下げた。
「リックは悪くないわ。お継母様、私にならともかく、異国の殿方に手を上げるなんてあんまりです。リックに謝ってください」
「何を世迷いごとを。親し気に男の名を呼ぶなど、どこまで恥知らずなの。その上わたくしに謝罪しろですって?」
火に油を注ぐ結果になり得るとわかっていても、我慢できない。
「私のことなら構いません。アシュレイ様、どうか」
リックは気を遣って申し出るが、退きたくない。
リックは共に勝利を勝ち取った戦友だ。しかし、即位式の祝宴を揉め事で汚したくもない……。
「どうなさいましたか。私の侍従が何か失礼を?」
わなわなと震えるキューベルルと、どう収拾をつけるべきか迷い始めたアシュレイが対峙していると、幸か不幸かギルフォードが現れる。
対立する面子に不穏な空気を感じたのか、会場の耳目は集まりつつあった。
ギルフォードは目敏く部下の騒動を察知したらしい。
アシュレイとリックは揃って頭を下げる。
「申し訳ございません。全て私の不徳の致すところです」
「伯爵様……! ご無沙汰しております」
キューベルルは口元を扇で隠して、目を吊り上げる。
「貴方がこの者の主人ですの? いったいどのような躾をしておられるの?」
「私はベラミ領伯を仰せつかっているギルフォード・ベラミと申します。私の部下が何かご迷惑をお掛けしたのでしょうか?」
ギルフォードは変わらずの、穏やかな口調で尋ねた。
「そうよ。この者が立場も弁えず、私に指図したのです。ですから、身の程を教えて差し上げようとしただけですわ」
キューベルルは鼻息荒く言い放つ。
「それは大変失礼いたしました。ところで、貴女様は……」
「こちらはセレンティア国王妃、キューベルル様であらせられます」
アシュレイは間に入るようにして進み出た。
ギルフォードもアシュレイにとっての大恩人だから、キューベルルの理不尽に巻き込みたくない。
強い思いが働いた。
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