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新しい国

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 聖堂に到着するのとほぼ時を同じくして、医師と医療班が到着した。

 聖堂には他にも負傷した兵が運び込まれつつあった。

「殿下はこちらに」

 ギルフォードが案内したのは、聖堂の奥まった場所にある部屋だった。

 教会関係者の告解を聞くための告解室だ。

「先にアシュレイを診せる」

「わかりました。では、殿下の手当ては私が並行して手伝いましょう。多少の心得があります」

「私は平気だ。アシュレイの次で良い」

「何を仰る。立っているのが不思議なほどの負傷です。殿下の身に何かあれば、忽ち国家は混乱に陥ります。どうか、ご理解を」

 有無を言わせぬ口ぶりで、ギルフォードはアルダシールの嘆願を退けた。

 どちらを先に診せるかで争えば、アルダシールは譲らないと踏んだのだろう。

 見越した上で、折衷案を持ち掛けられたのだから、それくらいは受け容れよう。

「……分かった」

 アルダシールは頷くと、アシュレイを静かに敷布の上に下ろした。

 襟元を緩めてやり、自身もまた装備を解く。

 ギルフォードは黙々と手伝ってくれた。

「伯爵ともあろうお方が。変わったお人だ」

「それはお互い様でしょう」

「ははは。確かに」

 軽口を叩いている間に、医師が助手を連れて到着した。

 衝立越しに診察が開始され、ほっと一息ついてから自身の処置に取り掛かる。

 アルダシール自身はどこに負傷があるか自覚している。

 ギルフォードもそうだが、戦線に出た経験がある者なら多かれ少なかれ負傷に対する知識を持っているものだ。

 アルダシールはシャツを脱ぎ、上半身を裸にした。

 そこで、脇腹に焼けるような痛みが走った。

「……ッ!」

「よくもまあ、この傷で動けたものです。横になってください」

「いいえ……壁に寄り掛かりますので、それでご勘弁ください」

 帷子は頭部が通るように穴の開いたベスト型の形状をしている。

 その隙間を突かれていた。

 他にも頸部や腿、脛に複数の裂傷がある。

 どれも致命傷とは程遠いものの、腹の傷はいささかこたえる。

 塞がらない傷口からは、未だ鮮血が滴っていた。

「失礼。止血しますよ」

 ギルフォードはてきぱきとアルダシールを手当てをして、包帯で患部を覆う段階になって医師に声を掛けた。

「傷口だけ、処置を診て頂けますか」

「あ……ああ、そうですね。わかりました」

 医師は、助手に幾つか指示を出すと、アルダシールの元へやって来た。

「処置は、これで問題ありません。後で薬湯を差し上げますが、今は動いてはなりません」

 一通り診察が済み、清潔な包帯で患部を覆うと医師は命じた。
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