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予感
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だが、外傷など、意識するから痛みを感じるのだ。
まだ、帰り道も残っている。
見ぬ振りをして、歩き通そう。
染みついて、生を跨いでも剥がれなかった精神論を抱え、アシュレイは足を縮こめた。
靴に戻そうとする足を、アルダは押し留める。
「今軟膏を貰って来た。塗ってやる」
「えっ!?」
逆らう間もなく膏薬を塗られた。
靴下のように布を巻いて固定し、再度靴に収める。
なるほど、痛みは大分和らいだ。
「このザマで強がるんだから、大したものだ」
「ありがとう……」
上からの物言いにムッとするものの、かなりマシになったので関心の意味も含めて礼を言う。
「歩けるなら、まだ、人通りもまばらだ。少しだけなら、見て回るか?」
「いいの?」
アシュレイは驚きに目を丸くしてアルダを見た。
「少しだけな。どんなものか、多少目を慣らしておくのも必要だろ。ただしあまり、キョロキョロするなよ」
アルダはフードの上からポンポンと頭を撫でて、アシュレイの手を引いた。
中心部へと足を踏み入れると、またも驚きで立ち竦んだ。
(すごい……)
白レンガの建物が通りを埋め尽くすように並んでいて、色鮮やかな植物が店先に植えられている。
中心部では既に朝市は展開していた。
威勢の良い声と、売り手と買い手がやりとりする喧騒。
どこからともなく漂う焼き立てのパンの香り。
広場には人々が集結しつつある。集う人の目はいずれもこれから始まる1日への期待に満ちていた。
「素敵な街ね……これで、まばらなの?」
「そうだ。首都と違って、他に集まるところもない。もっと賑やかになる」
(へえ……)
アシュレイはぐるりと周囲を見回す。
目抜き通りの中心地にある広場には、噴水がある。
そこから十字に道が分かれていて、それぞれの方角から様々な香りが漂ってくる。
「あ、あれ何?」
一際、芳しい匂いに誘われて、食欲をそそる匂いを放つ屋台を指差すと、アルダは指差しで答えてくれる。
「あれはソーセージだ。スパイスを効かせたものが主流だな」
「へえ、美味しそうな匂い」
「北部にはないのか?」
「ええ。セレンティアにはないわね。スパイスって? チョリソーみたいな感じ?」
「ちょりそ? 何だそれは」
「ごめん、勘違いしちゃった……気にしないで。あっ、あれは?」
ふと蘇った記憶が、常識のように口から飛び出し、訂正する。
この世界は以前の世界と似通っている部分もあるが、同一ではない。
前世の記憶はあるものの、アシュレイとして過ごす以上はこちらの世界が今の現実だ。
まだ、帰り道も残っている。
見ぬ振りをして、歩き通そう。
染みついて、生を跨いでも剥がれなかった精神論を抱え、アシュレイは足を縮こめた。
靴に戻そうとする足を、アルダは押し留める。
「今軟膏を貰って来た。塗ってやる」
「えっ!?」
逆らう間もなく膏薬を塗られた。
靴下のように布を巻いて固定し、再度靴に収める。
なるほど、痛みは大分和らいだ。
「このザマで強がるんだから、大したものだ」
「ありがとう……」
上からの物言いにムッとするものの、かなりマシになったので関心の意味も含めて礼を言う。
「歩けるなら、まだ、人通りもまばらだ。少しだけなら、見て回るか?」
「いいの?」
アシュレイは驚きに目を丸くしてアルダを見た。
「少しだけな。どんなものか、多少目を慣らしておくのも必要だろ。ただしあまり、キョロキョロするなよ」
アルダはフードの上からポンポンと頭を撫でて、アシュレイの手を引いた。
中心部へと足を踏み入れると、またも驚きで立ち竦んだ。
(すごい……)
白レンガの建物が通りを埋め尽くすように並んでいて、色鮮やかな植物が店先に植えられている。
中心部では既に朝市は展開していた。
威勢の良い声と、売り手と買い手がやりとりする喧騒。
どこからともなく漂う焼き立てのパンの香り。
広場には人々が集結しつつある。集う人の目はいずれもこれから始まる1日への期待に満ちていた。
「素敵な街ね……これで、まばらなの?」
「そうだ。首都と違って、他に集まるところもない。もっと賑やかになる」
(へえ……)
アシュレイはぐるりと周囲を見回す。
目抜き通りの中心地にある広場には、噴水がある。
そこから十字に道が分かれていて、それぞれの方角から様々な香りが漂ってくる。
「あ、あれ何?」
一際、芳しい匂いに誘われて、食欲をそそる匂いを放つ屋台を指差すと、アルダは指差しで答えてくれる。
「あれはソーセージだ。スパイスを効かせたものが主流だな」
「へえ、美味しそうな匂い」
「北部にはないのか?」
「ええ。セレンティアにはないわね。スパイスって? チョリソーみたいな感じ?」
「ちょりそ? 何だそれは」
「ごめん、勘違いしちゃった……気にしないで。あっ、あれは?」
ふと蘇った記憶が、常識のように口から飛び出し、訂正する。
この世界は以前の世界と似通っている部分もあるが、同一ではない。
前世の記憶はあるものの、アシュレイとして過ごす以上はこちらの世界が今の現実だ。
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