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聖女の祝福

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「貴方のせいではありません。ただし、今後は悪しき者たちが聖なる場所に足を踏み入れることのないよう、繋がりを徹底して調査する必要があります。その件に関しましては、改めて後日要請に伺います」

 何やら物騒な話題に、オリヴィエは内心ぎょっとしていた。

「勿論でございます。惜しまぬ協力をお約束します」

「ありがとうございます。では、早速ですがよろしいでしょうか?」

「どうぞ、こちらのお嬢様ですね。お進みください」

 2人は、既に段取りができているというように会話を進めている。

 一体これから何が始まるのか……とオリヴィエは不安を覚え始めていた。

「オリヴィエ、聖女像の前へ」

 ルーカスに促されて、オリヴィエは戸惑いながらも、一歩進み出た。

 聖女像はかつての日の如く、祭壇の上で厳かに佇んでいた。

 違いがあるとすれば、頭上に掛かっていた幕が取り払われ、穏やかな微笑みまで見て取れるところだ。

 啓示を請おうと、オリヴィエは聖女像の前に跪いた。

「違う、オリヴィエ。立つんだ。ほら」

 ルーカスは驚いたように声を上げ、オリヴィエを立たせる。

 てっきり祈りを捧げるのだと思っていたので、どうすればよいのか、益々混乱する。

「祈りを捧げるのではないのですか?」

「済まない。説明が足りなかったか。聖女像の衣装に、触れてくれ。あの時の、やり直しだ」

「あの時の……?」

 オリヴィエに何をさせたいのか。2人の意図がすぐには理解できなかった。

 促されるままに手を伸ばした。

 祭壇に厳かに佇む聖女アイリスの像は、等身大のため見上げる位置にある。

 オリヴィエの指先が白磁のローブに触れる――

 直後、光が溢れ出した。

「きゃっ!」

 思わず声を上げて尻餅をつくと、ルーカスが慌てて手を差し伸べてきた。

「オリヴィエ、見ろ!」

 声に促されて見上げると、眩い光は収束しつつあった。

 その手前には、瞳を輝かせたルーカスがいる。

 かつて、泉の前で、妖精の冒険に胸躍らせた時と同じ、無邪気な瞳の。

 そこに映し出されるのはオリヴィエの姿。

 更に目に飛び込んだアイリス像の様子に、オリヴィエは目を瞬いた。

「おお!」

 ネフェルトが感嘆の声を上げる。

 後方の聖女アイリスが身に纏うローブが、白桜色に染まっていた。

(どうして……? ローブの、色が……)

 以前、触れた時には変化がなかった衣の色が、確かに変化していた。

「神官長、これで間違いありませんね?」

 ルーカスが興奮を隠しもせず、声を張り上げた。

「この通り、衣の色が動かぬ証拠です。先の選定式ではすり替えられた女神像に細工がしてありましたが、これは紛れもない本物です」

「やった!! オリヴィエ!」

 ルーカスはオリヴィエを急に掬い上げると、固く抱きしめてきた。
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