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退魔の輝き

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 イレーネは感情の伴わない棒読みで、リリアを慰める。

(リリアは聖女じゃなかったの!? しかも、2人で共謀していたなんて……!)

 オリヴィエは信じられない気持ちで、一部始終を眺めている。

 無意識のうちに掌で口を押えていた。

 でなければ声を上げてしまいそうだった。

(でも、選定式で不正は許されない。どうやって!?)

 そもそも、選定式には大勢の神官や、聖女候補が詰めかけている。

 全員の目を欺くなんて、可能なのか。

「さあ、ぐずぐずしていないで、行くわよ、リリア。ルーカス王子が殺されたら、あんたの希望が叶わなくなるだけよ」

「それは、嫌! でも、だから、どうやって」

「これを、使うのよ」

 イレーネは、リリアに中身が見えるよう、籠を傾けた。

 オリヴィエからは確認できない。

「それは、さっき聖水って……」

「中身は全然違うけどね。これは、魔獣が嫌う匂い、こっちは逆に好む香りが入っているの」

「そう、なの……?」

「倒すまでは行かなくても、これで充分、退けられる。クレバスに戻るよう仕向けるから、あんたはそれっぽく演技してちょうだい」

「でも、本当にそんな効果が……」

「効果がなきゃ、一緒に行って誘導なんて、できるはずないでしょう。私がそこまでやるんだから、聖女の振りくらいできないとは言わせない」

 リリアも、ここまで来たら従うしかないと判じたのか。

 渋々ながらも足を進めた。

(魔獣を誘導? そんなことが、できるの――?)

 オリヴィエもまた、同じ疑問を抱く。

 仮にできるとして、どうしてイレーネにできるのか?

 疑問に次ぐ疑問ばかりで、頭の中は混乱しっぱなしだ。

 だが、思案する間もなく2人を追えば、魔獣と騎士団の戦場に辿り着く。

 森を抜けると、その先には漠とした草原が広がっている。

 その手前で騎士団は魔獣と攻防していた。

 実際には何らかの駆け引きの結果、この場で格闘しているのだが、一見しただけのオリヴィエにはわからなかった。

 なぎ倒された倒木と騎士団に囲まれ、その生物は凶悪な足踏みをした。

 一足、踏みならすごとに、地に亀裂が走る。

 そのうちには騎士団の足元が危うくなることが、容易に想像できた。

 大きな影を落とすのは、翼を持つ魔物。

 オリヴィエの知る、ドラゴンそのものだった。

 初めて見る姿は想像していたよりも巨大だ。

 10メートルは優にあるのではなかろうか。

 あんなものにどう立ち向かえば良いのか? オリヴィエは木陰からドラゴンを見上げて戦慄した。
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