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陰謀
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「街を歩くのにも、格式のあるお店に入るのにも、どちらにも着ていけるようなワンピースはありますか」
できればこの女性に見立てて欲しい。
オリヴィエはそんな気持ちを込めて、店員に尋ねた。
「そういうことでしたら……かしこまりました。少々お待ちください」
店員も、オリヴィエの要望を真摯に受け止めてくれたらしい。
「そっか、そう言う風に伝えれば良かったのね」
リリアは少し、照れくさそうに微笑んだ。
「一番可愛いものを選んでくれようとしたんでしょ。ありがとう」
店員が数着を持参して、提示してくれる。
その中から選んだ一枚を試着して、即決した。
それはこの店のテイストにぴったりデザインだ。
愛らしい薄桃色の生地の、襟元と袖口にレースと、裾にフリルのあしらわれたワンピースだった。
しかし、ふんわりと広がるパニエではなくすっきりとしたシルエットのため、幼い印象にもならず、上品に仕上がっている。
そのままの姿でオリヴィエとリリアは店を出た。
お目当てのカフェに入り、クリームたっぷりのスイーツを堪能した。
イレーネの分もお土産用に包んでもらい、足の向くままに商店街を歩く。
気がつけば日が傾きかけていた。
リリアはまだ物足りない様子だったが、通りすがりの店にある時計を見て、察したらしい。
「ありがとう、オリヴィエさん! こんなに楽しい一日は初めてだったわ」
帰りの馬車でもリリアは始終笑顔で、オリヴィエも釣られて笑顔になった。
「私もよ、リリア」
リリアと過ごした一日は、オリヴィエにとって、とても充実した一日だったと言える。
少し気後れする部分もあったが、慣れてくると楽しかった。
天真爛漫なリリアを見ていると、不思議とこちらまで楽しくなる。
リリアが、オリヴィエの手をぎゅっと握りなおした。
「あのね、オリヴィエさん。私、王都に来て良かったわ」
「そう。それはよかったわね。後で会ったら団長にも良くお礼を言うのよ」
「もちろん! レヴァンシェル様が許可してくれたんだもの。レヴァンシェル様って、本当に素敵な男性ね! 格好良くて、憧れちゃう」
リリアはうっとりとした表情で宙を見つめた後、オリヴィエに視線を戻して言った。
不意に、どきっ、と鼓動が跳ねる。
何の根拠もないのに、良くない前兆のような不安に襲われた。
「レヴァンシェル様って、やっぱり貴族なの?」
「え……そうね、貴族みたいなものかしら……」
レヴァンシェルと呼ばせている以上、本当の身分はまだ明かせない。オリヴィエは言葉を濁す。
できればこの女性に見立てて欲しい。
オリヴィエはそんな気持ちを込めて、店員に尋ねた。
「そういうことでしたら……かしこまりました。少々お待ちください」
店員も、オリヴィエの要望を真摯に受け止めてくれたらしい。
「そっか、そう言う風に伝えれば良かったのね」
リリアは少し、照れくさそうに微笑んだ。
「一番可愛いものを選んでくれようとしたんでしょ。ありがとう」
店員が数着を持参して、提示してくれる。
その中から選んだ一枚を試着して、即決した。
それはこの店のテイストにぴったりデザインだ。
愛らしい薄桃色の生地の、襟元と袖口にレースと、裾にフリルのあしらわれたワンピースだった。
しかし、ふんわりと広がるパニエではなくすっきりとしたシルエットのため、幼い印象にもならず、上品に仕上がっている。
そのままの姿でオリヴィエとリリアは店を出た。
お目当てのカフェに入り、クリームたっぷりのスイーツを堪能した。
イレーネの分もお土産用に包んでもらい、足の向くままに商店街を歩く。
気がつけば日が傾きかけていた。
リリアはまだ物足りない様子だったが、通りすがりの店にある時計を見て、察したらしい。
「ありがとう、オリヴィエさん! こんなに楽しい一日は初めてだったわ」
帰りの馬車でもリリアは始終笑顔で、オリヴィエも釣られて笑顔になった。
「私もよ、リリア」
リリアと過ごした一日は、オリヴィエにとって、とても充実した一日だったと言える。
少し気後れする部分もあったが、慣れてくると楽しかった。
天真爛漫なリリアを見ていると、不思議とこちらまで楽しくなる。
リリアが、オリヴィエの手をぎゅっと握りなおした。
「あのね、オリヴィエさん。私、王都に来て良かったわ」
「そう。それはよかったわね。後で会ったら団長にも良くお礼を言うのよ」
「もちろん! レヴァンシェル様が許可してくれたんだもの。レヴァンシェル様って、本当に素敵な男性ね! 格好良くて、憧れちゃう」
リリアはうっとりとした表情で宙を見つめた後、オリヴィエに視線を戻して言った。
不意に、どきっ、と鼓動が跳ねる。
何の根拠もないのに、良くない前兆のような不安に襲われた。
「レヴァンシェル様って、やっぱり貴族なの?」
「え……そうね、貴族みたいなものかしら……」
レヴァンシェルと呼ばせている以上、本当の身分はまだ明かせない。オリヴィエは言葉を濁す。
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