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陰謀

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「ありがとう。でも、それは買いかぶりすぎ」

 オリヴィエは気恥ずかしくなり、視線を逸らした。

「そんなことないわ!」と力いっぱい否定するリリアに、苦笑いを返すしかできない。

(でも、嬉しい)

 貴族のイメージを体現していると言われ、自分が認められたような気がした。

 それから数分歩くと小路に出る。

 その通りに入ってすぐのところで辻馬車を拾い、街道の名前を告げた。

「スリニック大通りまで、お願いします」

 聖殿と王城は、王都の中心にある。

 そこから放射線状に、各方面へ道が伸びている。

 南の大通りには、聖殿に商品を持ち込む商人や、その護衛や傭兵などが利用する大きな辻馬車が集まりやすい。

 特にスリニック通りは王城へつながる大通りの1つなので、交通量も多く、賑わいも一際だ。

 オリヴィエは、リリアをつれてスリニック通りの商店街を目指した。

 途中でリリアが、声を上げた。

「ここ、知ってるわ! 昨日の帰りに通ったお店、この辺よ」

 2人は嬉々として馬車を降りた。

「すごい、たくさんお店があるのね」

 オリヴィエは、馬車を降りて通りを見渡す。

 軒を連ねる店は大小様々で、それぞれの個性が光っていた。

 どれもこれも可愛らしい佇まいで目移りする。

「ああ! あの看板、素敵だなって思ってたんだ!」

 リリアが指さすのは、白い窓枠に薄いピンクのリボンで彩られた小さなカフェだった。

 看板には筆記体で「ルルーエ」と店名が書かれており、その下にはクリームのたっぷり載った数種のケーキが描かれている。

 薄紅や翡翠色のペールカラーが可愛らしい。どんな味がするのかはとても興味深い。

 あの絵を見て、食べてみたいと印象に残ったのだろう。

「ねえ、入ってみましょうよ」

 リリアはワクワクが抑えられない様子で、オリヴィエの手を引っ張る。

「ええ。あ、でも、ちょっと待って。私、この格好じゃ、ちょっと。せっかくあんなに可愛いお店に入るのに」

「そういえば着替えるって言ってたわね。寮へ寄らなかったけど、どうするの?」

「なるべく手短かに済ませるから、どこかのお店で選ばせて欲しいの」

「ええっ、お洋服を見るの? すごぉい! それなら手短になんて言わず、色んなお店を回ろうよ!」

 オリヴィエの予想とは裏腹に、リリアは大喜びだ。

 そのまま手と手を取って、商店街へ突入して行く。

「オリヴィエさん、何色が好き? このお店には青系の可愛い服が多いみたいよ」

 リリアは点在する服飾店を睨み付けるように物色し、歩きながらもしきりに話しかけてくる。
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