82 / 140
陰謀
6
しおりを挟む
「レヴァンシェル様、私はこれでも14歳なんです。そんなに子供扱いしないでください」
「ところで、イレーネは……? 見当たりませんが」
「イレーネは少々身体が怠いようだから、今日は一日休ませることにした。それなのにこっちは元気が有り余って、困ったものだ。俺から見れば、充分子供だよ、お前たちは」
ルーカスの揶揄いに、リリアは頬を膨らませる。
(イレーネが寝ているのに、リリアだけ……連れて出るの……?)
以前感じた、正体不明の黒っぽい感情が再び頭をもたげる。
正体は不明だが、良くないものだと察知して、オリヴィエは咄嗟に頭を振った。
「どうしたの? オリヴィエさん」
(何を動揺しているの。団長の指示なんだから。それに、昨日あんなことがあったのだもの。少しでも元気づけてあげたいと思うのは当然だわ)
マダムグレアたちが到着すれば、裁判沙汰で忙しくなるのは目に見えている。
だから、余裕がある今なら、少しは楽しむ時間を取ってやれると考えての配慮だろう。
「何でもないの。リリアは何が好きかしら。私は、稽古ばかりであんまり街や流行に疎いから……どこへ連れて行ってあげれば良いでしょうか?」
「そうだな、普通は王都へ観光に来るなら聖殿を訪れるものだが、それなら用が済んでいる。甘いものでも食べてきたらどうだ。女は好きだろう」
「オリヴィエさん! それなら、私行ってみたいお店があるの。昨日、帰り道で見かけて、とっても美味しそうで――」
女は、と、ルーカスの意見はやや暴論気味だったが、リリアは食いついた。
「じゃあ、決まりね。ただ、待たせておいて悪いけど、街へ出る前に一度騎士団の寮へ寄っていいかしら? 街に出る前に着替えたいの」
リリアは同意する。
「これでひと安心だ。オリヴィエ、……ちょっと」
ルーカスは数歩身を引くと、更にリリアと距離を取るように後退しながらオリヴィエに手招きをする。
リリアは秘密の香りに興味を惹かれたが、流石に仕事関係の機密事項かとその場に留まる。
ルーカスはテラスの扉を閉めたところで、こっそりとオリヴィエに皮袋を手渡した。
受け取った手触りで中身が貨幣だと分かる。
「これ……」
「悪いな、急に付き合わせて。必要なものはこれで用立ててくれ」
オリヴィエは自分で買い物をした経験があまりない。
中身がどれほどの価値を持つかわからないものの、手ごたえはずっしりとしている。
随分と沢山の金貨が詰め込まれているのだろうと予想できる。
「もし、着替えるつもりなら、途中の店で買って、着替えろ。それで足りなければ、その袋の紋章を見せれば大抵の店でツケがきく」
「ところで、イレーネは……? 見当たりませんが」
「イレーネは少々身体が怠いようだから、今日は一日休ませることにした。それなのにこっちは元気が有り余って、困ったものだ。俺から見れば、充分子供だよ、お前たちは」
ルーカスの揶揄いに、リリアは頬を膨らませる。
(イレーネが寝ているのに、リリアだけ……連れて出るの……?)
以前感じた、正体不明の黒っぽい感情が再び頭をもたげる。
正体は不明だが、良くないものだと察知して、オリヴィエは咄嗟に頭を振った。
「どうしたの? オリヴィエさん」
(何を動揺しているの。団長の指示なんだから。それに、昨日あんなことがあったのだもの。少しでも元気づけてあげたいと思うのは当然だわ)
マダムグレアたちが到着すれば、裁判沙汰で忙しくなるのは目に見えている。
だから、余裕がある今なら、少しは楽しむ時間を取ってやれると考えての配慮だろう。
「何でもないの。リリアは何が好きかしら。私は、稽古ばかりであんまり街や流行に疎いから……どこへ連れて行ってあげれば良いでしょうか?」
「そうだな、普通は王都へ観光に来るなら聖殿を訪れるものだが、それなら用が済んでいる。甘いものでも食べてきたらどうだ。女は好きだろう」
「オリヴィエさん! それなら、私行ってみたいお店があるの。昨日、帰り道で見かけて、とっても美味しそうで――」
女は、と、ルーカスの意見はやや暴論気味だったが、リリアは食いついた。
「じゃあ、決まりね。ただ、待たせておいて悪いけど、街へ出る前に一度騎士団の寮へ寄っていいかしら? 街に出る前に着替えたいの」
リリアは同意する。
「これでひと安心だ。オリヴィエ、……ちょっと」
ルーカスは数歩身を引くと、更にリリアと距離を取るように後退しながらオリヴィエに手招きをする。
リリアは秘密の香りに興味を惹かれたが、流石に仕事関係の機密事項かとその場に留まる。
ルーカスはテラスの扉を閉めたところで、こっそりとオリヴィエに皮袋を手渡した。
受け取った手触りで中身が貨幣だと分かる。
「これ……」
「悪いな、急に付き合わせて。必要なものはこれで用立ててくれ」
オリヴィエは自分で買い物をした経験があまりない。
中身がどれほどの価値を持つかわからないものの、手ごたえはずっしりとしている。
随分と沢山の金貨が詰め込まれているのだろうと予想できる。
「もし、着替えるつもりなら、途中の店で買って、着替えろ。それで足りなければ、その袋の紋章を見せれば大抵の店でツケがきく」
17
お気に入りに追加
630
あなたにおすすめの小説
【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~
塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます!
2.23完結しました!
ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。
相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。
ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。
幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。
好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。
そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。
それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……?
妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話
切なめ恋愛ファンタジー
身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~
湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。
「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」
夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。
公爵である夫とから啖呵を切られたが。
翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。
地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。
「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。
一度、言った言葉を撤回するのは難しい。
そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。
徐々に距離を詰めていきましょう。
全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。
第二章から口説きまくり。
第四章で完結です。
第五章に番外編を追加しました。
離縁をさせて頂きます、なぜなら私は選ばれたので。
kanon
恋愛
「アリシア、お前はもうこの家に必要ない。ブライト家から追放する」
父からの予想外の言葉に、私は目を瞬かせる。
我が国でも名高いブライト伯爵家のだたっぴろい応接間。
用があると言われて足を踏み入れた途端に、父は私にそう言ったのだ。
困惑する私を楽しむように、姉のモンタナが薄ら笑いを浮かべる。
「あら、聞こえなかったのかしら? お父様は追放と言ったのよ。まさか追放の意味も知らないわけじゃないわよねぇ?」
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
大好きな旦那様が愛人を連れて帰還したので離縁を願い出ました
ネコ
恋愛
戦地に赴いていた侯爵令息の夫・ロウエルが、討伐成功の凱旋と共に“恩人の娘”を実質的な愛人として連れて帰ってきた。彼女の手当てが大事だからと、わたしの存在など空気同然。だが、見て見ぬふりをするのももう終わり。愛していたからこそ尽くしたけれど、報われないのなら仕方ない。では早速、離縁手続きをお願いしましょうか。
「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
初耳なのですが…、本当ですか?
あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た!
でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。
余命六年の幼妻の願い~旦那様は私に興味が無い様なので自由気ままに過ごさせて頂きます。~
流雲青人
恋愛
商人と商品。そんな関係の伯爵家に生まれたアンジェは、十二歳の誕生日を迎えた日に医師から余命六年を言い渡された。
しかし、既に公爵家へと嫁ぐことが決まっていたアンジェは、公爵へは病気の存在を明かさずに嫁ぐ事を余儀なくされる。
けれど、幼いアンジェに公爵が興味を抱く訳もなく…余命だけが過ぎる毎日を過ごしていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる