将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら

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舞踏会の裏側

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 なら、周囲もある程度容認して、悪事が働かれているということか?

 招待客のハワードにさえ、遠目から正体を見抜かれているのだから。

「あの、こんなに奥まで来たら、いくらなんでも他の方の様子がわかりませんわ」

「驚いたな。見えない方が良いかと配慮してるんだけど……見られたいのかい?」

「見られたいというよりは、様子が知りたいというか……」

 庭園の外辺は、塀まで森林を巡らせている。

 あまり奥まった場所では、庭園内を見渡せない。

 ハワードは怪訝な顔つきになる。

「どういうこと?」

(私を、疑い始めた?)

 オリヴィエはじっと、ハワードを見返して逡巡した。

 今回は、極秘の潜入調査だ。関係者だと知られるわけにはいかない。

 どうするべきか。

 もしもハワードが犯罪組織と深く関わっている証拠でもあれば、このまま彼を有無を言わせず引致できる。

 だが、証拠もない今はルーカスに確認せずに、勝手に尋問するわけにもいかない。

(庭園を見張る、せっかくのチャンスかもしれないけど……一度団長の元へ戻って相談するべきかしら)

 犯罪者は疑い深いものだ。

 一度警戒されてしまえば、姿を隠す可能性もある。

(そうね。婚約者を紹介すると言って、ハワードと団長を引き合わせましょう。それが一番……)

「何をしてるか、知りたいんだろう? わざわざ他人を覗かなくても、僕が、教えてあげるよ」

 よし、とオリヴィエが決意すると同時に、ハワードは一層、ぐっと身を乗り出した。

 肩を抱かれて、ちょっと鬱陶しいな。と感じていたのに、もっと側に寄られて不快感が増す。

 顔の造作が悪くなくても、身体の厚みがそこそこ精悍だろうと、闇雲に男性に触れられるのは抵抗がある。

 こんな茂みの中で身を寄せなくても、どうせ他者からオリヴィエたちは見えないはずだ。

「見ないのに、何をしているかまで分かるんですか?」

「分かるさ。彼らが隠れて何をしているかくらい――」

 ハワードが耳元に唇を寄せて囁いた。

 ぞわっと、背筋に悪寒が走ったかと思うと、同時に腰をぐっと引かれて、お互いの胸が合わさるくらいに接近した。

「ちょっ……」

 そのまま覆い被さられて、オリヴィエは堪らず体勢を崩した。

 尻餅は搗いたものの、背中を支えてくれたようで、そこまでの痛みはない。

 だが。

「ベルモール様、何」

 まるで唇を求めるように顔が寄ったので、避けようと仰け反ったら、叢に転がってしまう。

「そんなに緊張しないで。僕に任せて。でも、緊張しているレティーも可愛いよ」

 下半身に圧し掛かられて、両腕を掴まれる。

 いよいよオリヴィエは、異変を感じ取った。

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